トランプ大統領が「米国のインフラ再建計画」を発表-規制緩和策や連邦政府による支出の使途を提示-

(米国)

ニューヨーク発

2017年06月27日

トランプ大統領は6月8日、「米国のインフラ再建計画」を発表し、州・地方政府や民間部門による投資促進を図る規制緩和策とともに、連邦政府による支出の使途などが示された。また、6月5~9日を「インフラ週間」と位置付け、同計画の発表に加え、航空管制業務の民営化方針の発表、州知事や市長との「インフラ・サミット」の開催、建設許認可までの期間の短縮化に向けた協議などが行われた。

建設許認可プロセスの短縮化も提唱

トランプ大統領は6月8日、老朽化したインフラ再建に向けた「米国のインフラ再建計画」を発表した。米国のインフラについては、これまでも世界経済フォーラムの競争力ランキングにおいて世界12位(2014~2015年)に位置付けられるなど、質の改善の必要性が叫ばれてきたが、計画では「大統領は、単に負債を将来の世代に押し付けるのではなく、この問題の解決に努める」とした。

インフラ投資について、5月26日に発表された2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の予算教書では、今後10年間で連邦政府が累計2,000億ドルを支出する一方で、民間部門や州・地方政府による少なくとも8,000億ドルの投資にインセンティブを付与することで、合わせて累計1兆ドルの投資を実現することが提案された(2017年6月13日記事参照)。今回の計画では、州・地方政府や民間部門による投資促進を図る規制緩和策とともに、この連邦政府による2,000億ドルの支出の使途などが示された。

規制緩和策については、環境規制を含め、現行の規制当局による意思決定プロセスを迅速化し、プロジェクト認可までの期間を平均10年程度から2年程度に8年分を短縮するとした。これにより、州・地方政府や民間部門による投資拡大につなげるとしている。トランプ大統領は「ゴールデンゲートブリッジは4年、フーバーダムは5年で建設されたにもかかわらず、現在の主要プロジェクトの許認可取得には10年かかる」と述べ、許認可プロセスの調整などを行う委員会の設置や、承認プロセスを確認することができるウェブサイトの設置などを提唱した。

連邦政府による2,000億ドルの支出の使途については、(1)州・地方政府が抱える課題への独自対応に対する支援に1,000億ドル、(2)地方の橋、道路、水路などの再建に250億ドル、(3)大胆で新しい変革プロジェクトに150億ドル、などとした。(1)については、州・地方政府がこれまでよりも(連邦政府から)独立したかたちで、各地域に必要な種類・水準のインフラ投資を実現するための取り組みに対する支援に充て、(2)については、多くの米国人が利用しているにもかかわらず非常に不便な地方の橋、道路、水路を再建するための補助金にするとした。(3)については、航空管制業務の民営化など、米国のインフラを変革するプロジェクトに対して、融資と補助金を組み合わせた資金援助を行うとした。これに加え、交通インフラ資金調達革新法(TIFIA)に基づく融資プログラムを拡大し、州・地方政府や民間部門による資金調達を支援することで、地域・国家的な重要プロジェクトの実現につなげるとした。

「インフラ週間」に州知事や市長とのサミットも開催

トランプ大統領は6月5~9日の週を「インフラ週間」と位置付け、再建計画の発表に加え、航空管制業務の民営化方針の発表、州知事や市長との「インフラ・サミット」の開催、許認可プロセスの短縮化に向けた運輸省との協議などを行った。

航空管制業務の民営化方針については、インフラ週間の初日である5日に発表された。再建計画の中でも変革的なプロジェクトの一例として取り上げられているが、米国の航空管制システムを民間の非営利団体(NPO)に移管し、税金ではなく、航空会社などからの手数料によって運営費を賄うことが提案された。これにより、待ち時間の短縮、遅延の大幅な減少、運賃の低下につながることが期待できるとしている。トランプ大統領は、「航空管制に革命をもたらす」計画であり、「より速く、確実に、手頃な価格での移動が実現する」と力説した。

このほか、トランプ大統領は6月7日にはオハイオ川沿いを視察し、内陸水路やダム、港湾施設の整備などについて協議し、再建計画についての演説を行った。8日には、ホワイトハウスに州知事や市長を招待してインフラ・サミットを開催し、意見交換を行った。9日には、運輸省を訪問し、前述の許認可プロセスの短縮化などについて協議した。

イレーン・チャオ運輸長官はインフラ分野に関して、6月7日に開かれた上院公聴会で、9月末までに詳細な法案を発表する予定だ、と述べている(ロイター6月7日)。また、トランプ大統領は同日の演説で、「米国の大規模な再建に向けて、可能であれば、全ての民主党員と共和党員が一緒に参加してくれることを求める」と述べ、党派を超えた協力を求めた。

(権田直)

(米国)

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