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太平洋同盟の閣僚評議会、「準加盟国」に関する指針を採択

(チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)

米州課

2017年06月16日

太平洋同盟の第17回閣僚評議会が6月2日、メキシコ市で開催された。同会合では、「準加盟国(Estado Asociado)に関する指針」が採択され、太平洋同盟と域外国の間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた道筋が明確となった。準加盟国の候補としてオーストラリアやニュージーランドが既に挙げられており、チリ、メキシコ、ペルーにとっては環太平洋パートナーシップの「TPP11」と並行するかたちで、太平洋同盟に準加盟国を加える交渉を開始するとみられる。

全加盟国がハイレベルのFTAを締結した国

太平洋同盟の準加盟国については、チリのビーニャ・デル・マルで3月14日に開催された高級事務レベル会合と閣僚会合でその創設が決まり(2017年3月28日記事参照)、その後、チリ政府が具体的な指針案を作成していた。

第17回閣僚評議会で採択された指針は、7項目で成り立っている。まず、指針1で「準加盟国」の定義を、「全ての正規加盟国が太平洋同盟枠組み協定の目的の追求に資するハイレベルの経済連携・通商協定を締結し、発効させている国」とした。そして、指針2で準加盟国として認定されるためのプロセスとして、正規加盟4ヵ国からの招待、あるいは準加盟国となることを望む域外国からの要請によって始まるとした。

太平洋同盟諸国側からの招待の場合、正規4加盟国が合意の上で太平洋同盟の議長国(1年間の持ち回り、2017年6月末まではチリ)を通じて域外国に声を掛ける(指針3)。逆に域外国からの要請の場合、域外国が議長国に書面で要請し、議長国が加盟国間で審議にかけ、要請を受諾するかどうかを決定し通知する(指針4)。

サービス貿易と投資を含むFTAが必要

招待や要請が承認された場合、太平洋同盟と域外国の間で交渉が開始されるが、最初に太平洋同盟側から経済連携・通商交渉の範囲とスケジュール案が域外国に提示され、域外国の同意を求める。経済連携・通商交渉の範囲については、最低でもモノの貿易、サービス貿易、投資の3分野が含まれなければならない(指針5)。3分野に加え、政府調達や知的財産権保護などその他の分野を含む、より包括的な協定であってもよい。

交渉は太平洋同盟加盟国と域外国(複数の域外国から構成されるブロックでも構わない)との間で行われ、貿易担当閣僚が交渉のトップとなるが、短期間で合意に達することが指針6として盛り込まれている。交渉で合意に至った協定が発効した時に、当該域外国は太平洋同盟の準加盟国と見なされる(指針7)。

あらためて加盟4ヵ国との単一協定締結が必要

米国のように既に全ての正規加盟国とハイレベルのFTAを発効させている国(表1参照)の場合、指針1の要件を既に満たすとも考えられるが、ジェトロがチリ外務省経済関係総局(Direcon)のエレナ・バルプエスタ太平洋同盟担当課長に確認したところ、太平洋同盟の準加盟国になるためには正規加盟4ヵ国との単一協定をあらためて交渉し、締結しなければならない。日本は既にコロンビアを除く3ヵ国とFTAを発効させており、コロンビアとも2国間FTAを交渉中だが、太平洋同盟の準加盟国になるためには、あらためて太平洋同盟4ヵ国との間で単一協定を交渉し、締結する必要がある。

表1 太平洋同盟加盟国と準加盟候補国とのFTA締結状況
相手国 正規加盟国 準加盟候補国
メキシコ コロンビア ペルー チリ カナダ オーストラリア ニュージー
ランド
シンガポール
メキシコ 発効
(95年1月)
発効
(12年2月)
発効
(99年8月)
発効
(94年1月)
TPP署名
(16年2月)
TPP署名
(16年2月)
TPP署名
(16年2月)
コロンビア 発効
(95年1月)
発効
(06年1月)
発効
(09年5月)
発効
(11年8月)
なし なし なし
ペルー 発効
(12年2月)
発効
(06年1月)
発効
(09年3月)
発効
(09年8月)
TPP署名
(16年2月)
TPP署名
(16年2月)
発効
(09年8月)
チリ 発効
(99年8月)
発効
(09年5月)
発効
(09年3月)
発効
(97年7月)
発効
(09年3月)
発効
(06年11月)
発効
(06年11月)

(出所)各国貿易担当省ウェブサイト

太平洋同盟は発足当時から開かれた統合体を掲げており、オブザーバー国としての参加や新規加盟を歓迎している。太平洋同盟に加盟するためには、全ての正規加盟国とFTAを発効させる必要がある(枠組み協定第11条)が、オブザーバー国になることを望む場合は、「太平洋同盟オブザーバー国の参加に関する指針」に基づき、議長国にオブザーバー参加を申請し、閣僚評議会が承認することでオブザーバーのステータスを得る。オブザーバーは招待された首脳会合と閣僚会合に参加することが可能だが、議決権はない。

オブザーバー国のうち、少なくとも正規加盟国の半数以上とFTAを締結済みの国は、「加盟国候補オブザーバー国」となることが可能。「加盟国候補オブザーバー国」は、首脳会合と閣僚会合だけでなく、招待された全会合(高級事務レベル会合、作業部会)に参加することが可能だ。ただし、議決権はない。現時点のオブザーバー国のうち、加盟国候補として承認されているのはコスタリカとパナマだけで、コスタリカは全加盟国とFTAを発効させており、正規加盟に向けたプロセスを進めている。なお、今回創設された「準加盟国」のステータスを持つ国は、太平洋同盟のどのレベルの会合まで参加できるのか、現時点では明らかにされていない。

オーストラリアとニュージーランドが準加盟国候補か

今回の第17回閣僚評議会では、新たにオブザーバー国としてスロベニア、リトアニア、クロアチアの参加が承認され、加盟国候補のコスタリカとパナマを含めたオブザーバー国は合計で52ヵ国となった。太平洋同盟の経済統合深化に向けた取り組みは、アジア太平洋地域以外の国の関心も呼んでいる(表2参照)。

表2 太平洋同盟の加盟国・オブザーバー国
ステータス 条件 会合出席 国名 国数
正規加盟国 全加盟国との間で2国間FTAを締結 全会合 チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー 4
加盟国候補
オブザーバー国
全加盟国の半数とFTAを締結 全会合 コスタリカ、パナマ 2
オブザーバー国 閣僚評議会の承認のみ 首脳会合、 閣僚会合のみ カナダ、米国、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ハイチ、ドミニカ共和国、トリニダードトバゴ、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、日本、韓国、中国、タイ、シンガポール、インド、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、トルコ、イスラエル、エジプト、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、英国、デンマーク、ドイツ、ベルギー、オランダ、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイス、オーストリア、ギリシャ、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ジョージア、ウクライナ、スロベニア、リトアニア、クロアチア、モロッコ 50
加盟国・オブザーバー合計 56

(注)オブザーバー国(加盟国候補も含む)が各会合に出席するためには議長国の招待が必要。
(出所)太平洋同盟ウェブサイト、「太平洋同盟オブザーバー国の参加指針」など

準加盟国の有力候補としては、オーストラリアやニュージーランドが具体的関心を抱いている、と報じられている。チリ外務省経済関係総局のパウリーナ・ナサル局長は「複数国が関心を示しているが、オーストラリアとニュージーランドからは正式な要請がある」とし、「(コロンビアの)カリで6月末に開催される太平洋同盟首脳会合において、両国との正式な交渉開始の発表があるだろう」と語っている(「プルソ」紙5月24日)。

太平洋同盟のメキシコ、ペルー、チリの3ヵ国と、準加盟国候補として有力視されているオーストラリア、ニュージーランドの2ヵ国は、いずれもTPPの原署名国だ。チリは既にオーストラリア、ニュージーランドと2国間FTAを締結済みだが、メキシコとペルーにとってはTPPで初めてFTAを締結することになる相手だった。特にメキシコ政府は、極度の対米依存から脱却するためにオーストラリアとのFTAに関心を抱いており、TPP11の交渉を進めつつも、より早期に合意に達するとみられる太平洋同盟の準加盟国交渉を優先させる可能性がある。

なお、ジェトロがメキシコ経済省のセレナ・マグダレノ国際交渉ユニット太平洋同盟担当課長に確認したところ、準加盟国のステータスを創設した狙いの1つには、TPP原署名国を太平洋同盟に招き入れることがあり、その中で日本を招待することも視野に入れているという。メキシコ経済省としては、TPP11、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)の拡大交渉、太平洋同盟の準加盟交渉など、さまざまな方法を用いて日本との経済関係の深化を図っていく方針のようだ。

(中畑貴雄)

(チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)

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