投資奨励分野と規制分野を公表-ミャンマー投資法の細則(2)-

(ミャンマー)

ヤンゴン発

2017年05月30日

 ミャンマー投資法に関する細則報告の2回目。投資促進業種と制限業種について解説する。

投資奨励の対象は20分野

2016年10月に成立したミャンマー投資法の優遇税制措置については、国内を3つの地域に分類し、進出したゾーンに応じそれぞれ優遇税制の期間が定められる(2017年5月29日記事参照)。同法第43条で「ミャンマー投資委員会は、連邦政府の承認を得て投資奨励分野を告示する」とし、第75条(c)で「法人所得税の免税については、ミャンマー投資委員会が投資促進分野として特定した業種に対してのみ付与される」としていた。投資企業管理局(DICA)は、MIC通達No.13/2017(2017年4月1日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)でこれら投資奨励分野(20分野)を公表した(表1参照)。通達では各項目において国際的に使用されている産業分類コードも併記されており、担当者によって業種区別の判断が異ならないようにした姿勢がうかがえる。

表1 投資奨励分野
No 分野 項目数 内容
1 農業 30 農作物の栽培、生産支援、検査サービス、農作物卸売市場のためのインフラ構築など
2 森林プランテーション 4 プランテーション、チーク・天然ゴムの栽培など
3 畜水産 10 家畜や水産資源の繁殖・生産など
4 製造業 92 食肉・魚などの加工・包装、食用油の生産、加工食品の生産、アパレル・靴の生産、工業製品の生産など
5 工業団地の開発 1
6 新都心の開発 1
7 都市開発活動 5 上下水道、ごみ収集、廉価住宅の建設・賃貸、公共交通機関など
8 道路・橋・鉄道の建設 4 道路、鉄道、滑走路の建設など
9 湾口・河川港・ドライポートの建設 1
10 空港の運営・管理・メンテナンス 1
11 航空機のメンテナンス 1
12 輸送・移送サービス 12 鉄道輸送、航空輸送、コールドチェーン構築など
13 発電・変電・送電 1
14 再生可能エネルギーの生産 2 自然エネルギーによる発電・変電・送電、エンジニアリングサービスなど
15 通信事業 3 光ファイバー網の施設、通信塔の建設、通信サービスなど
16 教育サービス 7 私立学校、職業訓練学校など
17 健康サービス 5 病院・クリニックなど
18 ITサービス 2 ITインフラサービス、ソフトウエア開発
19 ホテル・観光 3 ホテル・リゾート、エコツーリズムなど
20 科学研究・開発事業 7 農業・畜産業の研究・開発、工業開発・エンジニアリング・技術研究など

(注)投資企業管理局(DICA)の分類による。
(出所)MIC通達No.13/2017(2017年4月1日付)

貿易業・小売業は引き続き制限業種に

ミャンマー投資法第42条では投資制限業種についても規定されており、同条(b)項で「外国投資家による実施が許可されない投資活動」、(c)項で「ミャンマー国民またはミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形態でのみ外国投資が認められる投資活動」が定められた(以下、これらを「ネガティブリスト」と呼ぶ)。2017年2月にこれらネガティブリストの素案がDICAから公表され、店舗面積が929平方メートル以上の大規模な小売業は外国会社と内国会社の合弁会社であれば認めることや、卸売業は外国会社にも開放することで検討されていることが明らかになった。最終的に、DICAのMIC通達No.15/2017(2017年4月10日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で公表されたネガティブリストによると、「連邦国家のみが実施する投資活動」「外国投資家による実施が許可されない投資活動」「ミャンマー国民またはミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形態でのみ外国投資が認められる投資活動」「関連省庁からの承認を受けることにより許可される投資活動」で構成されている(表2参照)。

素案段階では外資への規制緩和が検討されていた大規模小売業や卸売業は、最終的には商業省の許可が必要な投資分野に分類され、素案段階と比べ緩和の度合いが後退した。貿易業は、MIC通達No.35/2017(2017年3月30日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の第230条と第231条において、ミャンマー投資法に基づき商品や原材料を輸入する場合、政府の承認を得ずとも輸入可能とされ、輸入ライセンスについて要件を満たしていれば、政府は輸入ライセンスを付与しなければならないと定められているが、ネガティブリストの注記には貿易業は商業省の方針に従って実施されると規定された。

表2 ミャンマー投資法における投資制限分野
項番 分野 関連省庁 項目数 内容
1 連邦国家のみが実施する投資活動 9 武器・兵器の製造、航空サービス、電力システムの管理・検査など
2 外国投資家による実施が許可されない投資活動 12 ミャンマー語を含む固有の言語による定期刊行物の出版・刊行、ツアーガイド、ミニマート・コンビニエンスストアなど
3 ミャンマー国民またはミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形態でのみ外国投資が認められる投資活動 22 農作物の栽培・国内販売および輸出、動物病院、蒸留酒・アルコール・ノンアルコール飲料の製造・販売、居住用のアパートの開発・販売または賃貸など
4 関連省庁からの承認を受けることにより許可される投資活動
項目数:全体で126
内務省 1 麻酔などを使用した薬の製造・販売
情報省 6 メディア放映サービス、ケーブルテレビなど
農業畜産灌漑省 18 獣医薬の製造・販売、商用畜産、農産物の栽培、畜産業および水産業関連の研究サービスなど
運輸通信省 55 登録車両の点検、鉄道の運転、鉄道に関連したドライポートサービス、空港ホテルサービス、空港セキュリティーサービス、空港建設・維持・管理など
天然資源・環境保全省 15 森林エリアなどでのエコツアー、大規模なパルプ生産など
電力エネルギー省 8 30メガワット(MW)超の発電事業など
工業省 1 ワクチンの製造
商業省 2 小売業、卸売業
保健スポーツ省 12 民間病院・医療サービスなど
建設省 8 180フィートを超える橋の建設、100エーカー超の都市開発、1フロアー当たり5万平方メートルの住居用アパートと工業団地内の廉価住宅の建設・販売など

(注1)関連省庁および組織によって管理されている法律において投資の制限が記載されている場合は、その法律に従う。
(注2)銀行・保険、金融サービスはその関連省庁および組織の計画に従う。
(注3)輸出入に関わる投資は、商業省の方針に従って実施される。
(出所)MIC通達No.15/2017(2017年4月10日付)

現地進出の日系企業からは「通達の中には矛盾している箇所もあり、関連省庁が最終的に制限分野をどのように判断し、運用するかが気掛かり」との声も聞かれ、今後の運用を注視する必要がある。

(堀間洋平)

(ミャンマー)

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