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欧州議会、英のEU離脱承認条件を採択-「最長3年の移行期間」に言及-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年04月07日

 欧州議会は4月5日、英国のEU離脱交渉の最終合意を承認する場合の基本条件に関する決議を採択した。決議内容は欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長が明らかにした「交渉ガイドライン」の原案に則したものだが、混乱を避けるために3年を上限に移行期間についての協議に応ずる姿勢も示した。しかし、英国の離脱前の第三国との通商交渉は「違法」としており、議会最大会派の代表は「交渉は厳しいものになる」と述べている。

交渉ガイドラインの原案をおおむね踏襲

欧州議会は4月5日にストラスブールで本会議を開き、516(支持)対133(不支持)(棄権50)の圧倒的多数で、英国のEU離脱交渉の最終合意を承認する場合の基本条件外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに関する決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した。これにより交渉の最終合意については欧州議会の同意が必要となる。

今回の決議は、トゥスク常任議長が3月31日に発表した「離脱交渉ガイドライン」の原案(2017年4月3日記事参照)におおむね沿った内容となっており、「英国に暮らすEU市民」「EU域内で生活する英国人」の双方が公平・公正な待遇を受けられることの優先度と重要性を強調。特に英国と(北アイルランド地域で)国境を接するアイルランド人の権益保全について、北アイルランドの和平プロセスの視点も含めて留意するとしている。

また、現時点で加盟国である英国がEUに対して負う責務、特に債務負担については適切に履行することを求め、過去に合意した債務負担はEU離脱以降も消えることはないとした。そして、「(EUにとって重要な)安全保障協力」と「(英国が求める)EUとの通商関係構築」を「交換条件」とするような協議を否定した上で、あらためてEUの基本理念である「4つの自由(EU域内における人・モノ・資本・サービスの自由)」の不可分性を強調し、英国によるいかなる「いいとこどり」や合意の得やすい分野から順次協議を進める交渉手法についても拒否する姿勢を明確にした。

移行期間について協議に応ずる姿勢も

他方、離脱交渉ガイドラインの原案から踏み込んだ内容も盛り込まれている。具体的には「3年を上限とする移行期間」について言及していることだ。上記のような認識の上で、英国のEU離脱条件についての交渉の「本質的な進展」が確認された場合に限り、混乱を避けるため、相互の権益を暫定的に継続するなど移行期間についての協議に応ずる考えを示した。

このほか決議では、完全なEU離脱が実現するまでは、英国はEU加盟国としての責務を負うとあらためてくぎを刺している。例えば英国に、EU離脱前に第三国との通商交渉に着手しないことを求め、EU加盟国である以上、そうした交渉は違法との考えを示した。また、英国が離脱協議や通商交渉を含めた将来のEUとの関係構築を有利に進めるために、EU加盟国に働き掛けを行わないよう警告している。

議会では超党派で連携模索の動きも

EU離脱の是非も主な争点となっているフランス大統領選挙を控え、欧州議会の決議採択前の審議は、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長やミシェル・バルニエ首席交渉官も交えて、主要会派の激しい論戦となった。

冒頭、欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長は「英国のEU離脱の条件について、欧州議会は最終的な決定権を担う。これがEU・英国の将来の関係を決めることにもなる」「最近のテロ対策も念頭に置けば、(EU離脱以降の英国も含めて)欧州の緊密な連携は不可欠だ」と指摘した。

欧州議会の最大会派「欧州人民党グループ(EPP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のマンフレート・ベーバー代表は「われわれのメッセージは明確で、(英国の債務履行など)離脱交渉を完結した上で、(通商交渉を含めた)将来関係の協議に応じるということだ」と述べ、「今後も英国が良き友人であることを望むが、交渉は厳しい(tough)ものになる」と指摘。離脱交渉における英国政府の「いいとこどり」に対する警戒感をあらわにした上で、「EUを離脱した国が加盟国当時よりも良い待遇になることはない。治安対策では欧州刑事警察機構(ユーロポール)の情報は共有できなくなる。研究開発面ではEU基金で支援される大学間連携プログラムにも入れない」とした。

他方、ナイジェル・ファラージ元党首の下、EU離脱キャンペーンを主導した英国独立党が所属する「自由と直接民主主義の欧州グループ(EFDD)」や、フランス大統領選に立候補しているマリーヌ・ルペン「国民戦線」党首らが所属する「国家と自由の欧州(ENF)」は、英国のEU離脱プロセスの開始を歓迎、EUは英国を罰するような対応をすべきではないとの考えを示した。

ただ、英国と国境を接するアイルランドや英国に多くの労働移民を輩出しているポーランド、バルト3国など、離脱の直接的な影響に直面するEU市民の権利を守るという共通の利害もあることから、超党派で連携を模索する動きも広がり始めている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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