ニュシ大統領、日本企業の投資を呼び掛け-外交40周年でビジネスフォーラムを東京で開催-

(モザンビーク、日本)

中東アフリカ課、ヨハネスブルク発

2017年04月05日

 モザンビークのフィリッペ・ニュシ大統領が来日した機会を捉え、ジェトロは3月16日に東京で「日・モザンビーク・ビジネスフォーラム」を開催した。ニュシ大統領のほか閣僚3人が、日本の企業や関係機関などから参加した200人以上の聴衆に対し、モザンビークへの投資を呼び掛けた。

ニュシ大統領の日本公式訪問は初めて

フォーラムは両国の外交樹立40周年を記念し、ジェトロ、在日モザンビーク大使館、モザンビーク投資促進センター(CPI)が主催した。ニュシ大統領のほか、オルデミーロ・バロイ外務協力相、レティシア・クレメンス鉱物資源・エネルギー相、ジョゼ・パシェコ農業食糧安全保障相ら3閣僚が出席した。また、大統領に同行して来日したモザンビークの国営・民間企業関係者ら32人も参加した。ニュシ大統領の日本への公式訪問はこれが初めて。

写真 フォーラムの様子(ジェトロ撮影)

フォーラム冒頭で主催者あいさつをしたジェトロの石毛博行理事長は「豊富な資源に恵まれたモザンビークには、日本企業にとってビジネスチャンスが存在する」と述べ、「ジェトロはアフリカで8ヵ所目となる事務所を首都マプトに開設すべく検討中だ」と表明した。

続いて来賓あいさつが行われ、武井俊輔外務大臣政務官は「日本がサブサハラアフリカで初めての2国間投資協定を締結したのはモザンビークで、2014年の発効後、投資活動に関する法的安定性や予見可能性が向上し、進出企業も着実に増えている」と紹介した。井原巧経済産業大臣政務官は「日本企業が有する最先端技術、ビジネス上の実践的なノウハウ、メンテナンス技術などは、モザンビーク経済の基盤整備、技術発展、人材育成に貢献するものと確信している」と強調した。そのほか、日本経済団体連合会の加瀬豊サブサハラ地域委員長(双日会長)、モザンビーク経済団体連合会(CTA)のアゴスティニョ・ブマ副会長が来賓あいさつをした。

基調講演に立ったニュシ大統領は「モザンビークは天然ガス、石炭などの豊富な天然資源、肥沃(ひよく)な土地、2,500キロに及ぶ長い海岸線沿いで獲れるマグロやエビなどの海産物、近隣国市場へアクセスできる物流網などを備え、輸出拠点としての潜在性も高い」とアピールした。また、「日本企業はナカラ回廊開発において高いプレゼンスを示し、地域経済の活性化に寄与しているが、中小企業を含めたより多くの企業の進出を期待している」と述べた。具体的には、「製造技術の移転、農業の近代化、産業人材育成などでモザンビーク企業の有望なビジネスパートナーとなり得る」と期待感を示し、「モザンビークの投資環境改善のために査証発給手続きの簡素化、税制優遇措置の拡充を図っていく」と述べた。

写真 基調講演するニュシ大統領(ジェトロ撮影)

投資環境改善への取り組みをアピール

CPIのローレンソ・サンボ総裁は、同国への対内直接投資額は2014年が25億8,400万ドル、2015年は10億1,100万ドル、2016年は6億6,200万ドルと減少しているものの、世界各国から投資を呼び込んでおり、主要投資国は中国、モーリシャス、南アフリカ共和国、アラブ首長国連邦、英国などだと紹介した。投資の重点分野としては農業、インフラ開発、エネルギー、製造業、観光、石油・ガス産業を挙げた。また、CPIの投資認可を得ることで付与される税制優遇措置にも触れ、例として、モザンビークの関税リスト上で「クラスK」と分類される輸入機材(スペアパーツや付属部品を含む)にかかる関税や付加価値税が免税になるとした。

CTAのブマ副会長は、CTAの加盟団体数は現在128で、その中に含まれる企業は零細・中小を中心に約1万4,000社に上ると説明し、「経済団体と政府が定期的に協議会を開いて、ビジネス環境の改善に向けて取り組んでいるモザンビークは、外国企業が活動しやすいビジネス環境基盤が整っている」と強調した。

欧州三井物産マプト駐在員事務所長の増田孝氏は「モザンビークは戦略的な地政学的優位性を有する」とした上で、同社が手掛ける北部の天然ガス開発、モアティゼ炭鉱およびナカラ鉄道・港湾インフラ事業について紹介し、ガスの上流開発のみならず液化処理や液化天然ガス(LNG)受け入れターミナル整備、ガス火力発電といった下流産業まで含めた一連のガスバリューチェーンの構築に貢献したい、と述べた。

ジェトロ・ヨハネスブルク事務所の高橋史所員は「モザンビーク経済はサブサハラアフリカ諸国の平均を上回る高い成長が見込まれており、重点産業の石炭開発、天然ガス、港湾・回廊開発を中心に日本企業の事業機会は拡大している」と説明した。他方で、ジェトロの進出日系企業実態調査において、モザンビーク進出日系企業の8割以上が法規の未整備や施行の問題、不安定な為替、政治リスクなど、投資環境面でのリスクを感じていると報告した。また、2015年に発覚したモザンビークまぐろ会社(EMATUM)による8億5,000万ドルの隠し債務に続き、2016年4月にはさらに13億5,000万ドルの政府保証債務が非公開だったことを受け、欧州諸国は一般財政支援を停止している(2016年6月13日記事参照)が、そのような中でモザンビーク政府は積極的な財政改革を推進していると紹介した。

閉会あいさつに立ったラジェンドラ・デ・ソウザ・モザンビーク商工副大臣は「昨今の資源価格の低下は資源依存型経済からの脱却を促し、産業多角化の重要性にあらためて気付かせてくれた」と振り返った上で、モザンビークの産業発展にとっては日本政府・企業の協力が不可欠だ、と締めくくった。

なお、同フォーラムの「契約・覚書交換セレモニー」セッションでは、日本・モザンビーク両国企業・政府関係機関の間で今回締結された、火力発電・LNG事業・石油天然ガス分野における人材育成、ガス・炭化水素分野における技術研修を含む4案件について、契約書や覚書(MOU)の交換が行われた。

(高崎早和香、高橋史)

(モザンビーク、日本)

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