中国からの炭素合金鋼板輸入にAD税・相殺関税賦課-今後は企業の申請なしに発動する可能性も-

(米国)

米州課

2017年04月20日

 米国は3月3日、炭素合金鋼板の中国からの輸入に対して、アンチダンピング(AD)税および相殺関税の発動を決定した。オバマ前政権が始めた調査に基づく決定で、近年、米国はこうした貿易救済措置の執行強化を通商課題の1つとしている。トランプ政権も同措置の積極的な利用を主張しており、人事が整い次第、動きが本格化するとの見方が出ている。

<最多の発動対象国は中国>

 WTOによると、過去11年半(1995年1月~2016年6月)における米国のAD税と相殺関税の発動件数は466件に達しており、全世界の国・地域の中でインド(600件)に次ぎ、2番目に多い。3位はEUの347件で、米国が貿易救済措置を多用していることが分かる。

 

 AD税と相殺関税の発動件数を年別にみると、オバマ政権(2009~2015年)は127件に上る(図参照)。平均すると年間18件と、1ヵ月に1件を超えるペースで実施している。ただし、この頻度は過去の政権に比べて少なく、クリントン政権(年平均26件)、ブッシュ政権(21件)のいずれをも下回る。

図 米国によるAD税・相殺関税の発動件数推移(1995年1月~2016年6月)

 AD税と相殺関税の発動対象を国・地域別にみると、中国が最多となっている(表参照)。その数は143件で、2番目の韓国(27件)と比べても、5倍以上の開きがある。これにインド(25件)、台湾、日本(ともに23件)が続き、アジアが主な対象となっている。隣国で北米自由貿易協定(NAFTA)の加盟国であるメキシコは18件、カナダは11件だった。

表 米国のAD税・相殺関税の国・地域別発動実績(1995年1月~2016年6月)

 中国への発動と同時に、他の国・地域が同じ製品で矛先となるケースも少なくない。最近では、2016年7月に中国と日本から輸入される冷延鋼板製品に対して措置が発動されている。冷延鋼板製品は自動車や家電製品に用いられることが多く、米国内の需要は大きい。中国、日本からの同製品に課せられるAD税はそれぞれ265.79%、71.35%で、中国には相殺関税256.44%が上乗せされる。なお、同製品については、同年9月にインド、英国、韓国、ブラジルも発動対象となっている。

 

 業種別では、鉄鋼製品をはじめとする卑金属が最多で249件に上る(添付資料参照)。そのほか、化学(57件)やプラスチック・ゴム(35件)などの業種で頻繁に対抗措置が実施されている。

 

<トランプ政権は貿易救済措置を厳格に実行する方針>

 米国際貿易委員会(ITC)は3月3日、炭素合金鋼板の対中輸入に対して、AD税・相殺関税を賦課する最終的な裁定を下した。2016年4月8日に企業の申請を受けてオバマ前政権下の商務省が同月28日に調査を開始した案件だ。その結果、2017年3月17日以降に中国から輸入される同製品にはAD税として68.27%、相殺関税として251.0%が賦課された。

 

 米国がAD税または相殺関税を発動するか否かは、商務省およびITCが判断する。企業などからの申請もしくは独自の判断に基づいて調査を実施し、損害および他国におけるダンピングの事実や、当該損害とダンピングされた製品との因果関係などを認定すれば、発動が可能となる。調査から最終的な裁定に至るには、早くとも半年以上かかるのが一般的だ。

 

 トランプ政権の通商政策をリードするとみられるウィルバー・ロス商務長官は上院の公聴会で、商務省が企業の申請に基づかない自発的な調査を活発に行う旨の発言をしている。通商代表部(USTR)が3月1日に発表した「2017年通商政策の課題および2016年次報告」でも、AD税、相殺関税、セーフガードなどの通商法を厳格に執行することが明示され、鉄鋼業界などがこの動きを歓迎している(2017年3月8日記事参照)。

 

 通商分野の訴訟を長年担当してきた元USTR次席代表で弁護士のライトハイザー氏はUSTR代表候補に指名されているが、上院の承認を得ていない。承認手続きは4月中旬の議会休会後とされており、通商法の執行が本格化するのは、同氏を含め、政策実施を担う人員の配置が固まってからとの見方が強い(議会専門誌「ザ・ヒル」4月6日)。

 

(藪恭兵)

(米国)

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