国立銀行が為替介入を終了、市場は安定して推移-輸出への影響も限定的な見通し-

(チェコ)

プラハ発

2017年04月19日

 チェコ国立銀行(中央銀行)理事会は4月6日、臨時金融政策会議を開催し、為替目標を1ユーロ=27コルナと定めた為替介入体制の終了を決定した。市場はこの決定を予想していたことから、大きな為替変動はみられず、介入終了後も4月13日までの間、26.59~26.71コルナの幅で堅調に推移している。今後の輸出への影響も最小限にとどまると予想されている。

インフレ率2%達成、輸出も増大

国立銀行による為替介入は2013年11月7日、インフレ圧力の増大や、コルナの為替レート引き下げ(コルナ安の維持)による輸出の促進および経済成長の加速を目的として導入された(2013年11月12日記事参照)。今回、為替介入の終了を決定した理由について、同行は「マクロ経済データ、理事会の分析、予測シナリオを精査した結果、前年比2%の物価上昇率を将来的に維持する見込みがついたと判断したため」と説明している。

国立銀行は2012年11月に、政策金利を過去最低の0.05%に引き下げ、実質ゼロ金利としたにもかかわらず、インフレ率の低下は止まらなかった(図参照)。為替介入を開始した2013年第4四半期のインフレ率は1.1%で、その後も低下が続き、2016年半ばまで1%を下回る範囲での動きとなっていた。しかし2016年後半から、原油価格の上昇や好調な内需、そして労働コストの増大などによりインフレ率が上昇に転じ、2016年12月には2013年1月以降で初めて2%に達し、2017年1月に2.2%、2月には2.5%まで上昇した。

また輸出額は、為替介入実施前の2013年第3四半期の7,830億コルナ(約3兆3,669億円、1コルナ=約4.3円)から、2016年第4四半期には1兆140億コルナに拡大した。通年では、2013年2兆8,235億コルナ、2014年3兆1,996億コルナ、2015年3兆4,770億コルナ、2016年3兆9,758億コルナと、順調な伸びを示している。チェコ輸出者連盟は、為替介入期間中のコルナ安がチェコ輸出業者にもたらした利益額は6,870億コルナに及ぶと見積っている。

図 インフレ率と輸出額の推移

一方、為替介入額は、2013年は75億ユーロで、2014年は実績なし、2015年は90億ユーロだったが、2016年には169億ユーロに増大し、2017年に入ってからは1月単月で145億ユーロ、2月も81億ユーロと大規模なものとなってきている。

この状況下、国立銀行理事会は当初、為替介入体制終了の時期は2017年上半期とだけ公表していたが、3月30日の定例会合後には「4月以降いつでも為替介入体制終了の決定がなされる可能性がある」と発表し、介入撤廃が秒読み状態となっていることを示唆した。今回の決定に際して、イジー・ルスノク国立銀行総裁は「これ以上、為替介入体制を維持しても、それに見合うだけの効果は得られないと判断した」と説明している。

4月6日の国立銀行発表直後、コルナは1ユーロ=27コルナから26.76コルナに上昇し、その後いったん27.10コルナに下落した後に再び上昇したが、その幅は限定的で、終値は26.59コルナだった。国立銀行は声明で、「今後はレート変動幅が極端に増大した場合にのみ、単発的に介入を行う可能性がある」と説明している。今後の為替の動きに関しては、国内アナリストは現時点での予測は時期尚早としつつ、長期的には1ユーロ=25.50~26.30コルナの間で動くとみている。

企業は介入終了に準備済み

今回の国立銀行の決定に対して、ボフスラフ・ソボトカ首相は「チェコ経済は、為替介入に長期的に依存すべきではない」と述べ、為替介入体制終了は正しい判断だとした。また、アンドレイ・バビシュ財務相は「為替介入体制終了は、既に予測されていたことで、驚きはない。また国債価格に影響することもないと考えられる」と語った。

一方、通貨コルナ安により輸出増の恩恵を受けていた企業も、為替介入終了に向けた準備をしていたため、そのマイナス影響は最小限にとどめられるものとみている。チェコ輸出者連盟は、当面の輸出額の約80%に対して、為替予約などの措置が取られていると推定している。

チェコ産業連盟のラデック・シュピツァル副会長は「為替介入体制の終了に関しては、企業はその事業計画の中で既に考慮しており、準備は完了していた。ユーロ決済取引の割合も増大している」とした上で、長期的な為替の動きについては「極端な為替変動が起こった場合には再び介入する、との国立銀行の約束を信じるしかない」と述べた。

(中川圭子)

(チェコ)

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