中銀、コルナ売り為替介入を実施−輸出拡大を期待し2014年成長率を上方修正−

(チェコ)

プラハ事務所

2013年11月12日

国立銀行(中央銀行)は11月7日、0.05%の政策金利を据え置くとともに、為替介入の開始を決定、外貨市場で大量のコルナ売りを実施した。これによるインフレ圧力の増大、コルナの為替レート引き下げによる輸出の促進、経済成長の加速を期待している。

<政策金利は0.05%に据え置き>
国立銀行は2012年11月に、政策金利を0.2ポイント引き下げて過去最低の0.05%に改定し、実質0%金利としたにもかかわらず、その後もインフレ圧力の兆しは表れていない。消費者物価上昇率は、2013年に入って電話や電力料金、食品価格の下落などにより低下傾向にあり、2013年10月には国立銀行のインフレ目標値2%を大幅に下回る前年同月比0.9%にまで下がっている(図参照)。

消費者物価上昇率の推移(前年同月比)

今回の措置について国立銀行のミロスラフ・スィンゲル総裁は、現状ではインフレ率が2014年第1四半期にはほぼ0%に落ち込む可能性があるとして、これを阻止するために為替介入に踏み切ったと説明している。コルナ売りの効果により2014年第4四半期にインフレ率は2.2%に上昇、2015年第1四半期には3.0%に達すると予想している。

<コルナ売りで為替安定を目指す>
国立銀行は為替介入に当たって、為替目標を1ユーロ=27コルナと定めている。11月7日の介入を受けてコルナは対ユーロで、前日の25.785コルナから26.964コルナまで急落、目標値にほぼ到達した。スィンゲル総裁は、長期的にこの水準を保つよう、必要があれば今後何度でも介入を繰り返すと述べている。

コルナの下落は輸出を促進し、チェコ企業の国際競争力を高める効果を持つ半面、輸入価格の高騰による内需低下を招く可能性も否定できない。これに対してスィンゲル総裁は「チェコ経済は輸出を基盤としている。輸出企業の利益が増大すれば、失業率が低下し、賃金も目減りしない。経済の伸びを消費者が実感すれば、将来的に価格上昇が予想される商品の購買をためらうこともなくなり、結果的に内需も伸びる」と指摘している。国立銀行は輸出の拡大を期待して、2014年の実質GDP成長率を1.5%から2.1%に上方修正した。

<輸出業者は為替介入を歓迎>
イジー・ルスノク首相は今回の為替介入を歓迎し、「チェコ経済の回復につながるものと信じている」と述べている。またチェコ輸出事業者連盟のイジー・グルント会長も「これにより、チェコの輸出は6ヵ月以内にコルナ建てで2〜3%増大することが予想される」と、介入支持を表明した。

一方、チェコ産業連盟のアナリスト、ボフスラフ・チージェック氏は「外需が増大傾向にある現在、為替介入は輸出業者にとって歓迎すべきこと。また、為替変動に悩まされていた貿易事業者にとっては、為替が1ユーロ=27コルナ程度で安定するとある程度予想できることにより、少なくとも短期的に変動対策を講じる必要がなくなる」とプラス面を指摘した。他方、同連盟の調査で、国内企業の全輸出高の約33%に当たる取引に対して、なんらかの為替ヘッジがなされていることが明らかになっている。このため、今回の為替介入の効果が限定的なものになる可能性も同氏は示唆し、「輸入依存度の高い部門、あるいは輸入燃料を大量に必要とする部門においては否定的な反応が予測される」とも指摘している。

(中川圭子)

(チェコ)

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