4つあった公式為替レートを2つに集約-中南米の制度改定動向-

(ベネズエラ)

カラカス発

2017年03月06日

 2016年は特筆すべき制度改定がほとんどなかったが、3月に実施された為替管理制度の見直しは数少ない重要な変更だった。近年は2~3月に新たな為替管理制度が施行されるのが慣例で、2017年も新たな制度の発表が見込まれている。

<国会で可決された法案のほとんどに違憲判決>

 2016年は国会が機能不全に陥り、特筆すべき制度改定はほとんど行われなかった。2015年12月の選挙を経て2016年1月に始まった新国会では野党が議席の過半数を占めたが、最高裁判所の判事は与党に近いため、マドゥロ大統領は野党主導で可決された法案を最高裁の違憲審査にかけ、最高裁はその多くを憲法違反とした。国会の年次報告書によると、2016年は15件の法案を可決したが、そのうち14件は最高裁により違憲の判断が下され、法律となったのは刑務所内での携帯電話使用規則法のみだった。

 

 政府は国会で与党が多数を占めていた2015年に、中央銀行法、公共組織金融法、食料補助制度法の改正案など多くの重要法案を駆け込みで成立させた。そのため2016年は、緊急事態令や省庁による行政決定のレベルで現行制度を微修正するにとどまった。

 

<ドルには政府管理外のレートで両替>

 その中で最も日本企業への影響が大きかったのは、3月に施行された為替協定35号による為替管理制度の見直しだ(2016年3月16日記事参照)。それまで1ドル=6.3ボリバルの固定為替レート、12.5ボリバルの変動制のSICAD1レート、52ボリバルの変動制のSICAD2レート、200ボリバルの変動制のSIMADIレートの4つの公式為替レートが存在していた。それが為替協定35号により、1ドル=10ボリバルの固定為替レートと変動制のSIMADIレート(2017年2月21日現在、1ドル=約690ボリバル)の2つの公式為替レートに集約された。ただし、ボリバルをドルに両替する場合、公式為替レートで両替することは困難で、多くの場合は並行レートと呼ばれる政府管理外の為替レートで両替しているのが実態だ。

 

 為替レートの動向は企業経営に大きな影響を及ぼしている。2016年のインフレ率は700%を超えたといわれているが、その一方で、公式為替レートは過大評価されたものとなっているため、大幅なコスト増につながっている。また、現在の政治・経済情勢では、インフレ率と為替レートの予想を立てることが極めて困難で、事業計画も立てられない。2017年2月に入り、ラモン・ロボ経済担当副大統領兼経済財務相は、近々新たな為替管理制度の発表があるだろうとコメントしている。2017年も新たな制度に振り回される年になることは間違いなさそうだ。

 

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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