トランプ大統領、就任1ヵ月の実績を誇示-閣僚人事の承認では遅れも-

(米国)

ニューヨーク発

2017年02月28日

 トランプ大統領は就任1ヵ月の実績として、雇用の創出、納税者の負担削減、公共の安全回復、米国第一主義の外交などでの取り組みを挙げて、米国民にアピールした。ただし、閣僚人事では、議会承認が必要な15人のうち、承認済みが10人にとどまるなど遅れがみられる。

<TPP離脱やパイプライン計画推進などをアピール>

 トランプ大統領は就任1ヵ月が経過した2月20日、大統領府ウェブサイト上で、これまでの活動を項目ごとに示して実績を誇示した。主要なものをみていくと、トランプ大統領が最も重視している「雇用の創出」については、以下の点を挙げた。

 

○環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの離脱を指示する大統領令に署名

○インテルによる1万人の雇用を創出する70億ドルの投資計画の発表

○キーストーンXLパイプライン計画、ダコタ・アクセス・パイプライン計画を推進するための大統領覚書に署名

○全ての新規のパイプライン建設およびその修繕に国産素材・機材を使用することを指示する大統領覚書に署名

○石炭産業を阻害する規制を停止する決議に署名

○採掘会社やその従業員に負担を課す規制を撤廃する決議に署名

 

 「納税者の負担削減」では、F35戦闘機の購入費用の7億ドルの値下げ、ボーイングの次世代エアフォースワン(大統領専用機)に関わる数百万ドルのコスト削減、を挙げている。「公共の安全回復」では、南部国境の壁の建設、移民法の執行強化、犯罪を減らすためのタスクフォース設置、麻薬カルテルなど国際的な犯罪組織の撲滅など関する大統領令への署名を掲げた。

 

 「米国第一主義の外交」では、イランの弾道ミサイルプログラムに関与した25の企業・個人に対する制裁実施、「イラクとシャームのイスラム国(ISIS)」を壊滅させるための計画策定指示、30人以上の外国首脳との会談ないし電話会議の実施を列挙した。「ヘドロをかき出す(汚職撲滅)」では、全ての政権幹部に対する新たな倫理委員会の設置、(退職後の)5年間のロビー活動禁止、外国政府のためのロビー活動の恒久的禁止、連邦政府職員の新規採用停止、などを挙げている。

 

<新たな労働長官候補にトランプ政権で初のヒスパニック系を指名>

 2月22日現在で、トランプ大統領が署名した大統領令・覚書は合計24本に上る(添付資料参照)。1月27日にテロ対策として署名された、中東・アフリカ7ヵ国(イエメン、イラク、イラン、シリア、スーダン、ソマリア、リビア)の一般国民の入国を制限する大統領令では、空港到着後、旅行者が入国できない事態が発生するなど大きな混乱が生じた(2017年1月30日記事参照)。その後、シアトル連邦地方裁判所が大統領令の差し止めを命じる仮処分を出し、さらにサンフランシスコ連邦控訴裁判所も差し止めを支持する判決を下したことで、現在は7ヵ国からの入国が可能になっている。これに対抗し、トランプ大統領は新たな大統領令を立案中と報じられている。

 

 新政権の実績を積極的にアピールしているトランプ大統領だが、閣僚人事の議会承認では民主党の抵抗により、大きく遅れている。2月28日現在で閣僚15人のうち承認が済んだのは10人にとどまる。閣僚以外で承認が必要な主要ポストでも、通商代表部(USTR)代表候補のロバート・ライトハイザー氏らの承認が終わっていない。

 

 その一方、労働長官に指名されていた大手ハンバーガーチェーン経営者のアンドルー・パズダー氏は、承認の見込みが立たず指名を辞退した。このため、トランプ大統領は2月16日、フロリダ国際大学法科大学院長のアレキサンダー・アコスタ氏を新たに労働長官候補として指名した。議会で承認されれば、トランプ政権では初めてのヒスパニック系閣僚となる。

 

(若松勇)

(米国)

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