保健省、包装食品の栄養成分や原材料表示規定を改正

(カナダ)

トロント発

2017年02月01日

 保健省は2016年12月14日、食品医薬品規則を一部改正し、包装食品の栄養成分および原材料の表示方法を変更した。消費者が健康的な食品を選択しやすくするためで、業界の新しいラベル表示の切り替えに5年間の移行期間が設けられている。「添加糖類」の表示に関しては、米国に後れを取っているとの指摘もある。

<「健康的な食戦略」の一環>

 保健省は2016年12月14日、食品医薬品規則を一部改正し、カナダで販売される包装食品の栄養成分および原材料表示方法を変更した。ジェーン・フィルポット保健相が10月24日に発表した「健康的な食戦略」の一環で、消費者が健康的な食品を選択しやすくする狙いがある。同戦略では、連邦政府が(1)加工食品の塩分削減、(2)人工的に生成されたトランス脂肪酸の除去、(3)消費者への糖分や着色料に関する情報の明示、(4)子供にとって不健康な食品や飲料のマーケティングに対する制限、の4つの方針を打ち出しており、今回の改正もそれにのっとったものだ。

 

 新しいラベル表示への切り替えには、2021年12月14日まで5年間の移行期間が設けられており、移行期間中は新旧いずれの表示方法も可能だ。

 

<1日の摂取量に占める割合を明記>

 変更の具体的内容は以下のとおり。

 

(1)栄養成分表示表

○食品の1回当たり摂取量の記載方法を、保健省が各食品について設定する参照量(reference amount)を基に規定することで、異なる会社の同じ商品の栄養成分情報の比較を容易にする。

○カロリー表示を大きくして太字を用いるなど、消費者に分かりやすい記載とする。

○これまで不要だった糖分の1日の摂取量に占める割合(% Daily Value)を記載する。

○最新の科学データに基づき、各栄養成分の1日の摂取量に占める割合を新たに算出する。

○ミネラル成分については、カリウムの記載を義務化するとともに、カリウム、カルシウム、鉄分について1日の摂取量に占める割合に加え、1回の摂取量も記載する。ただし、これまで記載が必要だったビタミンAおよびビタミンCは、カナダ人の大半が十分に摂取できているという判断から、表示義務の対象から除外する。

○ラベルに脚注として、各栄養成分の1日の摂取量に占める割合について「5%以下は少量、15%以上は多量」という表記を追加する。

写真 改正前後の表示方法の違い(栄養成分表示表の新サンプル)

(2)原材料リスト

○「糖類(糖蜜、黒糖、砂糖)」というように、糖類原材料をまとめて「糖類」と表示する。

○着色料の表記をこれまでの「赤」から「アルラレッド」というように通称に変更する。

○原材料表記に使用する色や文字を読みやすくする。

写真 原材料リストの新サンプル

<添加糖類の表示義務化は立ち消えに>

 今回の改正で糖分の表記については、栄養成分表示での糖分の1日の摂取量に占める割合の記載に加え、原材料リストでも糖類の一括記載が導入されることになった。しかし、変更導入前に検討されていた糖類のうち、「添加糖類」(食品加工の際に人工的に加えられる糖類の総称)の量の表示義務はない。公衆衛生と保健制度が専門のオンタリオ州立ウォータールー大学のデイビッド・ハモンド教授は「消費者は糖類情報の追加を歓迎するだろうが、添加糖類の1日の摂取量に占める割合については記載する機会を逃した」と指摘する(CBCニュース20161214日)。

 

 米国では食品医薬品局(FDA)が14日に栄養成分表示改正に関する指針案を公開し(2017年1月19日記事参照)、糖分量の下に添加糖類の量も表示する案を検討している。

 

 カナダでも、連邦政府の表示変更に関する公聴期間の記録によると、添加糖類の表示は消費者や健康分野の有識者から広く支持を得ていた。しかし、食品業界ロビイストは、人体は天然由来糖分と添加糖分の違いを認識しないので、添加糖類の表示には科学的根拠がないと表示に反対し、義務化が立ち消えになった。

 

(飯田洋子)

(カナダ)

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