税務調査では十分な準備が必要-「税務・労務の注目事例セミナー」報告(2)-

(ベトナム)

ハノイ発

2017年02月02日

 ジェトロとベトナム日本商工会(JBAV)が共催した「税務と労務の注目事例セミナー」の後編は、外国契約者税、移転価格税制、および当地日系企業の関心の高い中古機械輸入規制の現状などについて。当局との間で課税の是非の判断が分かれるケースもあり、税務調査の前には十分な準備が必要だ。

<人件費立て替えに課される外国契約者税に留意>

 外国契約者税および移転価格税制について、最近の動向や企業の取るべき対策を会計事務所KPMGベトナム(ハノイ)の谷中靖久ディレクターが次のように解説した。

 

 外国契約者税は、外国法人または個人がベトナム国内法人または個人に対してベトナム国内でサービスを提供し、発生した所得に対して課税される。

 

 典型事例として、親会社が現地法人への出向者に対して立て替えて支払う人件費がある。親会社から出向者へ支払った立て替え分の給料よりも、現地法人から親会社に支払う人件費が多い場合、現地法人は人材派遣サービスを受けていると見なされ、課税の対象となる。逆に少なければ対象外となるが、税務担当官が理解していない場合もあるため、出向契約に現地法人の負担を記載し、給与明細で証明するなど、説明の準備が必要だ。

 

 技術やブランドなどの使用料であるロイヤルティーに対しては、10%の法人税率が課される。近年、日本の親会社が積極的にロイヤルティーを徴収する傾向にあることから、ベトナム当局もロイヤルティーへの課税を強めている。典型的な論点は、拠点立ち上げ時の出張が、導入支援とロイヤルティーのいずれに該当するかというものだ。当局は出張によるサポートは技術移転を伴うのでロイヤルティーだと主張するが、一方で機械の導入や据え付けは技術の使用ではなく導入支援であり、ロイヤルティーには該当しないと考えられる。説明が難しいため、十分に文書を整理しておく必要がある。

 

 移転価格税制については、3年以上連続で赤字の企業、多額のロイヤルティーを払っている企業、利益剰余金が積み上がっている企業などが調査の対象になりやすい。調査に際しては、ベンチマーク分析(同業同機能の会社の平均利益率との比較)の妥当性や、利益率が低い場合は親会社との取引以外の原因と認めるか否かが特に問われる。このため、会計事務所を使うなどして事前に分析し、当局側に説明する必要がある。

 

<中古機械輸入に関する日系企業の現状を紹介>

 当地日系企業が注目している問題として、裾野産業に適用される優遇税制と中古機械輸入についての最新の事例が紹介された。

 

 2016年1月1日から裾野産業に対する優遇制度が実施されており、繊維、電気・電子、自動車部品など6分野について、新規プロジェクト、既存プロジェクトから独立したプロジェクト、および生産性を20%以上向上させる拡張投資を対象に、法人税率(20%)を15年間は10%にし、かつこの期間中に課税所得を計上した年から4年間は免税、さらに9年間は税率が50%減じられることになっている(ただし、拡張投資は4年間の免税と9年間の減税のみ)。申請に際しては、商工省に申請書と内容説明書、投資登録証明書を提出し、認められれば優遇証明を取得できる。優遇措置が適用されるのは優遇証明を受け取った年度からで、今のところ前年度にさかのぼって認められた事例はない。なお、講師の会計監査法人HSKベトナムの阿辻健一会長は「これまでに60件程度の申請があり、うち10件程度が認められたもようだ」と説明した。

 

 7月1日に中古機械の輸入に関する規制が導入され、その影響が懸念されていたが(2015年12月3日記事2016年7月1日記事参照)、物流会社などによると規制導入後に日系企業が中古機械を輸入した事例は少ないという。実際の輸入事例では、製造後10年以下の機械の場合、通関で問題が発生した事例は少ない。また、輸入が難しいのではないかと懸念されている中国製機械であっても、必要書類などがそろえば通関できている。なお、懸案の10年を超える機械の輸入については、まだ日系企業の申請事例はないという(KPMGベトナム谷中氏)。

 

(佐々木端士)

(ベトナム)

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