中古設備の輸入に理由書添付も必要に-通達23号が7月1日から施行-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年07月01日

 中古機械・設備・技術ラインの輸入に関する通達23/2015/TT-BKHCN(以下、通達23号)が7月1日から施行された。中古機械などの輸入に際して、理由の添付などが必要となる。ただ、通達23号の内容には基準や鑑定方法、申請書式など不明確な部分が多数残されており、当地進出日系企業や進出を検討中の企業などから懸念の声が上がっている。ベトナム日本商工会(JBAV)は6月17日に本通達を所管する科学技術省との面談を実施したが、同省による日本側の懸念に対する回答は形式的な内容にとどまった。

<科学技術省からの明確な回答なし>

 通達23号(2015年12月3記事参照)によると、中古機械・設備・技術ライン(以下、中古設備)は、外国直接投資(FDI)プロジェクトに関連し一定の要件を満たす場合を除き、原則として製造から10年を超えず、安全・省エネ・環境保護に関するベトナムまたはG7の基準に適合している場合のみ、輸入が認められることとなる。しかし、同通達には不明確な部分が多く、JBAVは日本大使館やジェトロなどと共同で、科学技術省や計画投資省に対して、書式の明示を含む輸入手続きおよび基準、鑑定機関の明確化などに関する要望文書を提出していた。その後、2016617日に科学技術省担当部局との面談を実施し、JBAV側は面談後に公文書による回答を求めたものの、面談の実施を理由に、科学技術省からは要望文書に対して、いまだ明確な回答は得られていない。

 

 面談で得られた科学技術省からの説明の主なポイントは以下のとおり。

 

○「安全・省エネルギー・環境保護に関するG7の基準」(61項)

 規格は多岐にわたるため、具体的な明示はしない。日本の機械または設備であれば、日本の国際規格に合致していることが証明できれば問題はない。

 

○投資登録証明書(IRC)などに添付する「中古設備リスト」の書式(62項)

 前提として、申請すれば自動的に中古設備の輸入を認めることにはならない。中古設備を輸入する企業は、安全・省エネルギー・環境保護に関する技術説明を当局に行う必要がある。IRCに添付する中古設備リストに関して、具体的な書式は発行しない。前記技術説明のほか、中古設備を輸入する理由書を添付する必要がある(注1)。

 

○拡張投資を伴わず(工場増設時など)に中古機械などを輸入する場合

 契約締結日または船荷証券(BL)の日付が71日以降で、61項の条件(注2)に該当する中古設備を輸入する場合、当該設備の製造元による証明書または鑑定機関による鑑定証書を添付する必要がある。鑑定証書など必要書類が整わない場合には、積み戻しとなる場合がある。

 

 また、61項の条件を満たさない中古設備を輸入する場合は、62項に記載のとおり、投資方針、または投資登録証明書に中古設備リストを添付した上で投資登録機関からの承認を得る必要がある。

 

 なお、企業が生産活動を維持するために10年超の中古設備の輸入が認められる特別な場合(13条の例外条項)については、審査に時間を要する可能性が高い。

 

○下位法令の制定について

 通達は公式文書では最下位に位置し、これ以上の細かい規定はない。仮に企業からの問い合わせが多かった場合には、科学技術省のウェブサイトにQAを掲載する。

 

<通達内容の問い合わせは技術鑑定・評価局>

 鑑定証書を発行する鑑定機関(102項)については、623日付で科学術省のウェブサイトにおいて公表されている。同日公表されたリストのうち外国の鑑定機関では、日本海事検協会が唯一認定され、日本での船積み前検査が可能となっている。

 

 なお、他の鑑定機関が登録を希望する場合は、102bに記載のとおり申請すれば、審査の上、登録するとしている。

 

 また、本通達に関する照会先としては、同省ウェサイトで以下のとおり記載されている。

 

【問い合わせ先】

ベトナム科学技術省 技術鑑定・評価局

住所:113 Tran Duy Hung, Cau Giay, Hanoi

電話:+84-(0435560702、+84-(0435560703、+84-(0435560705

Emailvudtg@most.gov.vn

 

<輸入時には時間的余裕を持った対応を>

 科学技術省からは、製造から10年を超えない中古設備を輸入する場合でも適合性が求められる「安全・省エネルギー・環境保護に関するG7各国の規格」の内容について、また、製造から10年を超える中古設備を輸入する場合にIRCなどへの添付が求められる「中古設備リスト」のフォーマットや記載されるべき内容については、いずれも明確化されていない。さらに、後者には中古設備導入の理由書も添付することが求められている。加えて、工場増設時などに製造から10年を超える中古設備を導入する場合には、一部の例外条項による場合を除いてはIRCの更新が必要、との認識が示されている。

 

 通達23号の運用は、科学技術省側の裁量で判断される余地が多分に残されており、制度が安定化するまでにはしばらく時間を要することが予想される。また、実際に輸入窓口となる当地税関も、同省の明確な指示が出るまで慎重な対応を行う可能性がある。当地へ中古設備導入を予定している企業については、事前に輸入者を通じて科学技術省に照会を行うなど、時間的余裕を持った対応が求められる。

 

(注1)輸入理由付記の必要性に関しては、通達23号に記載されていない。科学技術省側から明確な法的根拠に基づく回答は得られず。

(注2)製造から10年を超えていない、かつ、国家技術基準(QCVN)、ベトナム国家基準(TCVN)または安全・省エネルギー・環境保護に関するG7への規格適合。

 

(竹内直生)

(ベトナム)

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