新しいGSP品目別除外リスト、EUが1月から適用-インドの鉄鋼やケニアの花卉などが対象外に-

(EU、インド、インドネシア、ケニア、ウクライナ)

欧州ロシアCIS課、ブリュッセル発

2017年01月16日

 EUは2017年1月1日から、新たなEUの一般特恵関税(GSP)の品目別除外リストを適用した。インドの貴石・貴金属、鉄鋼・同製品、卑金属・同製品などがGSPの対象から除外される。ケニアの花卉(かき)はGSP対象から除外されるが、市場アクセス規則の適用維持により、これまでどおりEUへアクセスできる。期間は2019年12月31日まで。

201711日からの新たな「卒業」リスト>

 GSPとは、途上国向けに関税の減免を認める制度。EUの場合、対象国からの輸入品目により関税が免除、あるいは最低でも3.5ポイント引き下げられる。GSPの対象国である場合でも、その国の特定の製品群(セクション)について競争力があり過ぎる場合は、特定の製品群についてのみ特恵関税から除外することが認められ、「卒業」と呼ばれている。卒業の対象となるかどうかは、特定の製品について、当該国からの輸入額がGSP受益国全体からの輸入額に占める割合を要件として客観的に判断される(2012年12月27日記事参照)。適用除外品目は定期的に更新され、2016年まで適用されていた品目別除外リストは20142016年のもの。20172019年に適用される品目別除外リストは2016年3月9日付のEU官報で公示されていた。

 

 201711日~20191231日の間、適用対象外となる品目は表1のとおり(注1)。2017年から適用除外品目に加わったのは、インドの貴石・貴金属、鉄鋼・同製品、卑金属・同製品、ケニアの生きている植物・花卉、ウクライナの動物性または植物性の油脂・ろう。2016年末までは品目別卒業の対象だったインドとインドネシアの化学品(HS3138のみ)、インドとナイジェリアの原皮は今回のリストから外れ、GSPの適用対象となる。

表1 EUのGSPの国別主要除外(卒業)品目(2017~2019年)

<ケニアはEPA批准で市場アクセス規則適用維持>

 ケニアは20142016年の品目別除外リストが公表された2012年時点では、市場アクセス規則(注2の適用国としてGSPの対象外だった。その後、市場アクセス規則は、EUと締結した経済連携協定(EPA)の批准に向けて必要な措置を取っている国のみに適用されることになり、2014101日以降、ケニアは市場アクセス規則の適用国から外れ、GSPの適用対象国となった(2014年10月16日記事参照)。しかし、20141016日にEU・東アフリカ共同体(EAC)間でEPA交渉が合意に至ったことから、20141225日以降、再び市場アクセス規則の適用国となり、GSPと市場アクセス規則の2つの「特恵」の対象国となっていた(2015年1月16日記事参照)。2016101日までに同EPAを批准しない場合、再び市場アクセス規則の適用国から外れることになっていたが、主要な輸出産業である花卉産業への影響を恐れたケニアは2016920日にEUEAC間のEPAを批准し、市場アクセス規則の適用国の地位を維持した。これにより、ケニアはこれまでどおりEUへアクセスできる。今回のGSPの卒業品目の設定により、HSコード0603120006042040以外の6類の植物・花卉をEUに輸出する場合、GSP適用が除外されるが、市場アクセス規則は適用されるため影響は少ないと見込まれる。

 

<カメルーンやジョージアなどが適用除外に>

 GSPの特恵対象国については、世界銀行の分類やEPAなどの特恵アクセスの享受を基準に毎年1月までに見直しを行っており、11日から除外となる国がある。欧州委員会委任規則2015/1979により、201711日からは、フィジー、イラク、マーシャル諸島、トンガは、1人当たり国民総所得(GNI)が世界銀行の分類で20132015年に中高所得国に分類されているため除外される。また、カメルーンとジョージアはそれぞれEUとの自由貿易協定(FTA)、連合協定が2014年に発効しているため、GSPの特恵対象国から除外される。

 

GSP利用率は輸入額上位5ヵ国で59割>

 EUGSP規則は欧州委員会に対し、2016年以降2年に1度、GSP制度の機能について報告書を公表することを義務付けている。20161月に公表された報告書によると、GSP受益国のうち、2014年におけるGSPを適用した品目の輸入額〔GSPプラス(注3)、EBA(注4)を含まない〕が多い上位5ヵ国は、インド、ベトナム、インドネシア、ウクライナ、スリランカだった(表2参照)。上位3ヵ国でEUGSPを適用した品目の輸入総額の87.8%を占めるものの、利用率はインド89.1%、ベトナム57.9%、インドネシア71.3%と差がある。

表2 EUのGSP受益国上位5ヵ国(2014年)

(注1)各セクションにどのHSコードが含まれるかは規則978/2012付属書V(PDF、30ページ以降)を参照する必要がある。

(注2)EUとのEPAの締結に向けて進展がみられる一部のアフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国に適用される特恵措置。市場アクセス規則では、ほぼ全ての品目が無税となる。GSPと同様、EUの特恵措置だが、GSPよりも一般に関税削減の恩恵が大きい。

(注3)GSPプラス:持続可能な開発や人権保障などに関連する一連の国際条約を批准・準拠している開発途上国・地域に、さらなる特恵措置を付与するもの。GSPプラスの受益国については、GSPの受益国に軽減税率が適用されるセンシティブ品目について、一定の条件を満たせば関税が免除される。2017年から除外対象となったジョージアは、GSPプラスの受益国だった。

(注4)武器以外の全て(EBA):後発開発途上国(LDC)を対象に、武器以外の全ての製品の輸入関税を無税とするほか、輸入割り当ても行わないというもの。

 

(深谷薫、村岡有)

(EU、インド、インドネシア、ケニア、ウクライナ)

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