日本の中小企業のルピー建て資金調達を支援-日本政策金融公庫がスタンドバイ・クレジット制度を導入-

(インド、日本)

ニューデリー発

2016年12月02日

 日本政策金融公庫(日本公庫)はスタンドバイ・クレジット制度をインドで導入し、日本の中小企業のルピー建て資金調達を支援する。中小企業のインド進出や事業拡大を後押しすると期待される。

<地場大手のインドステイト銀行と提携>

 日本公庫は1111日、地場大手のインドステイト銀行(SBI)と提携し、日本の中小企業向けのスタンドバイ・クレジット制度の取り扱いを開始すると発表した。利用条件を満たす企業(注)に対して日本公庫が債務保証のための信用状を発行、当該企業のインド現地法人はSBIから日本公庫の信用力を勘案した金利でルピー建て融資を受けることができる。

 

 日本公庫はこれまで同制度を中国、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムで展開してきたが、日本企業のインドへの進出、企業活動の拡大を受け、11ヵ国・地域目としてインドを加えた。ジェトロ調査によると、インド進出日系企業に占める中小企業の割合は20%ほどで、他の新興市場国と比べて低い。同制度が中小企業のインド進出を後押しすることが期待される。

 

<為替変動のリスク回避が可能>

 日本公庫によると、取引先の日本企業が持つ在中国、ASEANの現地法人の借り入れ形態で最も多いのは、日本の親会社からの借り入れ(親子ローン)だという。金融緩和が続く日本では諸外国と比べ格段に低い金利での資金調達が可能で、これが日本から日本円で資金調達する傾向を強めている。ただし、日本円での資金調達は同時に為替リスクを伴う。例えば、アジア諸国の通貨の為替変動をみると、1年間で1020%程度の変動も珍しくないため、金利差にのみ着目した資金調達では、為替リスクが顕在化した時に多額の資金返済を強いられる場合もある。このため、スタンドバイ・クレジット制度を活用して地場銀行から現地通貨建てで借り入れれば、為替リスクを回避できるというメリットがある。

 

 インドでは親子ローンは対外商業借(ECB)規制の対象となっており、近年の規制緩和により活用は広がりつつあるものの、企業にとって必ずしも使い勝手の良いものとはなっていない。そのため日系企業は現地の邦銀が実施する現地通貨建て借り入れを利用する場合が多い。地場銀行から借り入れようとすれば、現地法人に高い信用力が求められるが、スタンドバイ・クレジット制度の導入により、インドの日系中小企業の資金調達手段が増えることになる。

 

 同制度の利用に関しては、日本公庫各支店の中小企業事業窓口が対応に当たる。また、日本公庫は多くの企業の同制度活用促進のため、現在59の地域金融機関と業務連携している。

 

(注)詳細は日本公庫ニュースリリースを参照。

 

(古屋礼子、山本直毅)

(インド、日本)

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