フランチャイズビジネスに外資規制はなし-中南米フランチャイズ業界の動向-

(メキシコ)

メキシコ発

2016年11月02日

 メキシコのフランチャイズビジネスは伸びているが、まだ過渡期にある。フランチャイズに対する外資規制は特にないが、法的な枠組みは産業財産権法に規定されており、契約に定めるべき項目もある程度示されている。マージンやコミッションなどの相場観については、業界団体のウェブサイトで確認可能なブランドもある。

10年以上継続のブランドは半分以下>

 メキシコでのフランチャイズビジネスについて、アランダイ・イ・アソシアドスのコンサルタント、セサル・アランダイ氏は「経済状況の悪い時の方がフランチャイズ業界は成長することが多い。背景には、経済の逆境下では新ビジネスを立ち上げるというよりも、安全なスキームを望むことがある。(フランチャイズの性質が持つ)確立されたビジネススキームが与える安心感が、不況下で起業する人に最良のオプションを提供している」と述べている(「フォーブス・メキシコ」電子版819日)。

 

 他方で、成熟したビジネススキームには程遠い、との指摘もある。コンサルタント会社インテルフランキシアスの代表ホルヘ・バレンシア氏によると、10年以上継続しているブランドは全体の48%にとどまり、22%は79年、21%は46年、9%は3年以下で、5年もたっていないブランドが30%近くあるという。10年以上経ることを「確立されたブランド」と呼ぶならば、半分以下ということになる。また、58%のブランドは10店舗以下であり、幾つかのブランドの成功をもって、メキシコにはフランチャイズビジネスが向いていると結論付けるのは時期尚早だとしている(同)。

 

<法的枠組みは産業財産権法で規定>

 外資法上はフランチャイズビジネスに規制はなく、100%外資であっても可能だ。フランチャイズに関する法的枠組みは1994年から産業財産権法に規定され、数回の改正を経て今日に至る。その目的として同法2VIIでは、「フランチャイズ運営における法的安定性を確立し、全てのフランチャイジーは同一のフランチャイザーから等しく同等の扱いを受けることを保証する」ことを掲げ、142条にフランチャイズの要件、契約書に盛り込むべき基礎的情報などの基本要件が規定されている。

 

 基本要件とは、書面によるブランドの使用ライセンスの付与、財やサービスの統一的な形式による提供、当該ブランドの質や名声、イメージを保つために確立された運営・販売・管理方法を取ること、などだ。

 

 フランチャイザーはフランチャイジーに対し、同法施行細則の定めるところにより、関連契約締結の最短30日前までにフランチャイザーの状態に関する情報(Circular de Oferta de Franquicia、米国でいう「Franchise Disclosure Document」)を提供しなければならない。

 

 フランチャイザーが提供する情報に信頼性が欠如している場合は、フランチャイジーに対し契約の破棄と、不履行により被った損害の支払いを要求する権利を与える。フランチャイジーは契約後1年間はこの権利を行使することができ、その後は契約の破棄のみの権利を持つ。なお、フランチャイズ契約には、書面により以下の要件を含めなければならない。

 

1)フランチャイジーが活動する地域

2)フランチャイジーが活動する施設に関する場所、最小寸法、投資の性質など

3)在庫、マーケティング、広告政策。必要に応じてサプライヤーとの商品供給計画

4)双方が合意した、それぞれが担当する払い戻し、ファイナンス、対価に関する政策、プロセス、期間など

5)マージン、コミッションなどの決定に適用する観点や方法について

6)フランチャイジーのスタッフに対する技術的、運営的研修の性質。同様にフランチャイザーが与える技術支援の方法、形態について

7)監督、情報、パフォーマンス評価の観点、方法、プロセスなど。同様にそれぞれの担当するサービスの質に関するものも含む

8)双方が合意した場合の、サブフランチャイズの条件など

9)フランチャイズ契約の終了の原因となる事項

10)双方の合意に基づき契約の条件を改定ないしは修正することのできる想定について

11)フライチャイジーにはフランチャイザーに資産を譲渡しなければならない義務はないこと(合意がある場合は除く)

12)フランチャイジーにはフランチャイザーに対して自らの株式などを譲渡せねばならない義務はないこと(合意がある場合は除く)

 

 産業財産権法第142Bis 1に基づき、フランチャイザーはフランチャイジーの経営に干渉することができるが、これは契約に規定されるフランチャイズの管理、イメージの基準の順守を保障するためのみに行使できる権利だ。フランチャイジーが吸収、会社分割、ステータス変更、持ち分ないし株式の譲渡などにより形態が変わっても、フランチャイザーはフランチャイズ契約に規定された範囲に従って干渉することが可能だ。

 

 同条Bis 2は、フランチャイジーが契約の有効期間中または契約終了後において、フランチャイザーの所有する知識資産である契約に規定された運営や活動の情報の秘匿性を保持しなければならない、と定めている。

 

 また、同法第143Bis 3に基づき、双方は一方的に契約の終了、撤回をすることはできない(期限付き契約である場合もしくは正当な事由がある場合を除く)。双方が契約を早期に終了させるためには、契約で取り決めた事由とプロセスに基づかなければならない。同規定に違反する場合、契約の早期終了は双方に契約で取り決めた罰則の支払いないしは損害賠償の事由を生じさせる。

 

 なお、フェヘール&フェヘール・コンサルティングのアンヘレス・アビラ氏は、商標登録を後回しにせず、何よりも先に行っておく必要性を強調している。何者かに先行登録されている危険性があるからだという。

 

<フランチャイズ協会のサイトで相場観の確認が可能>

 フランチャイズ契約を結ぶ際のマージンやコミッションなどの相場観について、メキシコフランチャイズ協会(AMF)のウェブサイトでは、加盟している各ブランドのフランチャイジーになる際のコスト面の条件が公開されているものもある。これによると、アルセアグループ(2016年11月1日記事参照)がマスターフランチャイズ権を持つバーガーキングの店舗オーナーになる場合、アルセアグループへの加盟料として55,000ドル、基本店舗仕様への投資額(開業資金)250万ペソ(約1,400万円、1ペソ=約5.6円)、ロイヤルティーとして売上高の5%、それに広告宣伝基金に売上高の5%を拠出する必要がある。

 

(中島伸浩)

(メキシコ)

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