中堅・中小企業の海外安全対策を強化-外務省がネットワーク第1回会合を開催-

(世界、日本)

海外調査計画課

2016年09月30日

 外務省は9月27日、「中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク」の第1回本会合を開催した。本ネットワークは、7月にバングラデシュ・ダッカで発生した襲撃テロ事件を受け、外務省と日本商工会議所との間で立ち上げた「海外安全対策タスクフォース」の議論を踏まえて、海外での中堅・中小企業の安全対策を強化することを目的に立ち上げられた。外務省、経済産業省、中小企業庁のほか、日本商工会議所、ジェトロ、中小企業基盤整備機構、国際協力機構(JICA)など、日本企業の海外展開に関係する15の組織・団体が参加している。

<企業の安全対策に向けた連携を呼び掛け>

 会合の冒頭、小田原潔外務大臣政務官は「テロの脅威がある中、企業の海外展開を後押しするため安全対策面の支援が必要である。本ネットワークでは、安全対策に関する情報に接する機会が限られる中堅・中小企業を支援するため、次の3点の協力を図っていきたい。1点目は海外安全情報の提供、『たびレジ(外務省海外旅行登録)』などの活用促進、2点目は安全に関わるノウハウ、グッドプラクティスの共有、3点目は安全に関わる企業の懸念への対応である」と述べ、参加組織・団体の連携を呼び掛けた。

 

 中堅・中小企業海外安全対策ネットワークでは、中核組織として年1回程度の局長級会合(本会合)のほか、本会合の補佐組織として不定期に課長級会合(幹事役)が開催される。

 

<海外安全対策に関する支援を強化>

 第1回会合において、ジェトロは「中堅・中小企業等の海外安全対策に関わるジェトロの取り組み」を次のように紹介した。

 

 720日に東京のジェトロ本部において、アジアを中心とした最新治安情勢とビジネスリスクを解説する海外安全対策セミナーを開催した。邦人にも被害が及んだバングラデシュ・ダッカの襲撃テロ事件の後ということもあり、セミナーには過去最大級の約470人が参加した(2016年7月29日記事参照)。

 

 地方においては、85日に静岡市で「海外ビジネス危機管理セミナー」、98日には宇都宮市で「海外進出企業のための危機管理セミナー」を地方公共団体、民間企業などと共催し、情報提供を実施した。両会場とも80人弱が参加し、海外安全対策に関する情報ニーズの高さが浮き彫りとなった。今後の取り組みとして、1017日には福岡市で「海外ビジネス危機管理セミナー」1018日には名古屋市で「海外進出企業向け安全対策セミナー」を開催する予定で、さらに129日には大阪でも「海外安全対策セミナー」の開催を調整中だ。

 

 海外見本市への出品支援を手掛けるジェトロでは、海外見本市の出品者マニュアルにおいて「万が一、テロが発生したときの行動」として、見本市会場内外での安全対策に関する情報を提供している。8月にケニアで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の開催前には、併催イベント「ジャパンフェア」の出品者向けに現地諸情勢の提供、外務省海外邦人安全課による「邦人を取り巻く国際環境とケニアの治安情勢および安全対策」の講習、「たびレジ」登録の勧奨を実施した。

 

 また、海外展開を目指す中堅・中小企業を支援する枠組みとして、企業の海外展開に向けた個別支援を提供している新輸出大国コンソーシアム事業においても、国内外で安全対策に関する情報提供を実施する。日本国内において、海外での事業展開に当たり必要となる安全情報を専門家(エキスパート)が提供するほか、情報ニーズが高い国・地域に所在する海外事務所を通じて、現地の安全対策に関してより一層の情報提供を図る予定だ。

 

(塚田学)

(世界、日本)

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