外国人幹部・専門職就労パスの発給基準、さらに厳格化-基本月給の下限を3,600Sドルへ引き上げ-
(シンガポール)
シンガポール発
2016年08月09日
人材省(MOM)は7月26日、2017年1月1日から、外国人幹部・専門職向け就労許可証「エンプロイメント・パス(EP)」の発給基準である基本月給の下限を、現行の3,300シンガポール・ドル(約25万800円、Sドル、1Sドル=約76円)から3,600Sドルへ引き上げると発表した。今回の引き上げは2016年4月のEPの審査基準の再強化に続くもので、近年、EP審査を厳格化する動きが進んでいる。
<2017年初からの新規申請に新基準を適用>
MOMがEP発給基準である基本月給の下限を引き上げるのは、2014年1月1日以来となる。MOMは、管理・専門職種の外国人にEP(現行、基本月給3,300Sドル以上)、中技能向けにSパス(2,200Sドル以上)、建設労働者や工場労働者など低技能向けにワーク・パミット(WP)と、外国人労働者の技能、学歴、就労経験、賃金に応じて異なる種類の就労許可証を発給している。EPは1社当たり雇用できる人数に上限がなく、SパスやWPと異なり雇用主に外国人雇用税が課されていない。同国で就労する外国人労働者は2015年12月末時点で138万7,300人で、このうちEP保持者は18万7,900人と外国人労働者の13.5%を占める。
今回発表されたEP発給基準の基本月給引き上げは、2017年1月1日以降の新規申請者から適用となる。また、現行の基準と同様、EP申請者で就労経験の長い人には、その経験に応じて新基本月給の下限である3,600Sドルよりも高い給与の支給が必要となる。一方、既存のEP保持者で2017年1月1日から同年6月30日に同パスを更新する場合には、現行のEP発給基準の下限が適用される。2017年7月1日からは、EP更新についても新基準が適用される。
<幹部・専門職向けのEP、審査強化の動き続く>
政府は2010年以降、シンガポール国民の労働生産性向上を促すため、それまでの外国人の積極的な受け入れを抑制策へと転換し、それ以来外国人雇用規制を段階的に強化している。MOMはWPとSパスについて、外国人雇用税を段階的に引き上げ、1社当たり雇用できる人数の上限を引き下げてきた。また、EPとSパスについては、発給基準となる基本月給を段階的に引き上げ、2014年8月からはEP申請時に求人広告の掲載を義務付けた。さらに、リム・スイセイ人材相は2016年4月、EPの審査に当たり、外国人個人の学歴、経験、給与水準を審査するのに加え、EP申請企業の地元人材の登用状況についても審査対象とする方針を発表するなど(2016年4月21日記事参照)、近年EPの審査強化の動きが続いている。
MOMはEPの発給基準である基本月給を引き上げる理由について、「地元労働者の給与上昇に合わせるもので、地元労働力を補完する外国人労働力の質を維持するため」と説明した。同省の統計によると、フルタイムで働くシンガポール国民(外国人永住権者を含む)の月給の中央値は2014年の3,770Sドルから、2015年に3,949Sドルへと上昇している〔社会保障制度である中央積立基金(CPF)の雇用主負担分を含む〕。MOMは今回の発表で、EPを申請する雇用主は、新規申請者が新しい給与基準を満たすかどうか、申請前に同省のウェブサイト上にある「自己審査ツール(SAT)」を確認するよう促している。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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