2015年の中朝貿易は前年比14.7%の大幅減
(中国、北朝鮮)
中国北アジア課
2016年05月10日
2015年の中国と北朝鮮の貿易総額は、前年比14.7%減の54億3,000万ドルだった。中朝貿易は2010年以降増加が続いていたが、2014年は微減に転じ63億6,400万ドルとなった。このため2015年の実績が注目されていたが、大幅に減少した。
<中国側の貿易黒字幅は縮小>
貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラス(GTA、元データは中国海関統計)で最近の中朝貿易の推移をみると、2010年に30億ドル台を突破してからは順調に推移し、2013年は総額で65億4,700万ドルに達した(表1参照)。その後、2014年には減少に転じた(2015年3月9日記事参照)。2015年は54億3,000万ドルと、2011年の56億2,900万ドルを下回る水準に逆戻りしている。
2015年の中国から北朝鮮への輸出は前年比16.4%減の29億4,600万ドル、輸入は12.6%減の24億8,400万ドルで、総額では前年の63億6,400万ドルから54億3,000万ドルに急減した。貿易収支は中国側が4億6,200万ドルの黒字だったが、黒字幅は前年の6億8,200万ドルより縮小した。
<中国からの輸出品目はほぼ軒並み減>
中国から北朝鮮への輸出を品目別(HSコード2桁ベース)でみると、電気機器・同部品(85類)が3億3,200万ドルで最も多いが、前年(4億2,000万ドル)比では20.8%減となった(表2参照)。以下、原子炉、ボイラー、機械類・同部品(84類)が18.8%減の2億5,200万ドル、鉄道用を除く輸送機器・同部品(87類)が6.8%減の1億9,600万ドル、プラスチック・同製品(39類)が13.1%減の1億6,800万ドル、糸、織物を含む人造長繊維(54類)が8.8%減の1億5,200万ドルの順になっている。
上位10品目のうち、ほとんどが前年比減を記録する中で、7位の鉄鋼(72類)が2.7%増の1億1,200万ドル、10位の魚、甲殻類(03類)が15.8%増の8,500万ドルとなった。
品目別輸出で注目されるのは、2011年から2013年までは5億ドル台(数量的には約53万~58万トン)で推移していた原油(HSコード:27.09)が2014年に続いて2015年も実績ゼロとなっていることだ。27類の輸出は1億4,700万ドルだが、その8割近くは原油を除く石油および歴青油と、これらの調製品(27.10)が占める。中国からの原油の輸出が止まれば、北朝鮮の国民生活に大きな支障が出てもおかしくないが、そのような情報は伝わってきておらず、貿易統計で捕捉されない何らかの方法で、北朝鮮に原油が供給されているとの見方もある。
<北朝鮮からの鉱物資源輸入の減少続く>
一方、中国の品目別輸入(HSコード2桁ベース)をみると、石炭を中心とする鉱物性燃料など(27類)が前年比7.8%減の10億5,700万ドルだった(表3参照)。次いで、編み物を除く衣類・同付属品(62類)が1.8%増の6億3,300万ドル、鉱石、スラグおよび灰(26類)が39.7%減の2億500万ドル、編み物の衣類・同付属品(61類)が39.6%増の1億6,600万ドル、魚、甲殻類(03類)が24.3%減の1億800万ドルの順になっている。輸入品も多くの品目で前年を下回った中で、金額はまだ小さいものの、木材・同製品(44類)が11.4%増で10位にランクインしたのが目立つ。
2015年の北朝鮮からの輸入の特徴は、前年からみられた傾向ではあるが、鉱物性燃料や鉱石、スラグ、灰などの鉱物資源の輸入が減少し、衣類の輸入が増加していることだ。
鉱物資源の減少が中国の景気減速に伴うものなのか、あるいは政治的要因によるものかは、もう少し見守る必要があるだろう。衣類の輸入が増加していることは、中国から北朝鮮への繊維の委託加工貿易が増加していることの表れとみることもできる。
(根本光幸)
(中国、北朝鮮)
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