2014年の中朝貿易、前年比2.8％減と5年ぶりの減少

＜中国側の貿易黒字幅は縮小＞
貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラス（GTA、元データは中国海関統計）で中朝貿易の推移をみると、2008年に中国から北朝鮮への輸出が20億3,300万ドル、輸入が7億5,400万ドル、総額27億8,700万ドルを記録したものの、2009年には輸出が12億1,000万ドル、輸入が5億100万ドル、総額では17億1,100万ドルと急減した。その後は輸出入とも順調に増加し、2013年は総額65億4,700万ドルと過去最高を記録したが、2014年は輸出入とも前年を下回った（表1参照）。

2014年の中国からの輸出は前年比3.0％減の35億2,300万ドル、輸入は2.5％減の28億4,100万ドルで、総額でも2.8％減の63億6,400万ドルにとどまった。貿易収支は中国側が6億8,200万ドルの黒字だったが、黒字幅は2013年より縮小した。

＜中国からの鉱物性燃料の輸出が急減＞
中国から北朝鮮への輸出を品目別（HSコード2桁ベース）でみると、電気機器・同部品（HS85類）が前年比65.3％増の4億2,000万ドルで最も多く、全体の11.9％を占めている（表2参照）。以下、原子炉、ボイラー、機械類・同部品（84類）が17.9％増の3億1,000万ドル（シェア8.8％）、鉄道用を除く輸送機器・同部品（87類）が12.2％減の2億1,100万ドル（6.0％）、プラスチック・同製品（39類）が36.2％増の1億9,300万ドル（5.5％）、鉱物性燃料など（27類）が74.2％減の1億9,100万ドル（5.4％）の順になっている。

品目別輸出で目立つのは、2013年に7億4,100万ドルと中国の輸出の20.4％を占めていた鉱物性燃料などが1億9,100万ドル（シェア5.4％）に急減していることだ。同品目について詳しくみると、2011年から2013年まで5億1,800万ドル（52万6,000トン）、5億7,800万ドル（52万3,000トン）、5億9,800万ドル（57万8,000トン）輸出されていた原油（HS2709）の記載が2014年は見当たらない。これは統計上では2014年1月から北朝鮮向け原油輸出はゼロのままの状態が続いていることを示している。報道では、中国の北朝鮮向け原油輸出の中断については核開発停止の確約や北朝鮮核問題をめぐる6ヵ国協議への復帰を輸出再開の条件としている、と伝えられている。

しかしながら北朝鮮からは、今のところ、中国の原油輸出がストップしたために国民生活に大きな支障が出ている、との情報は伝わってきてはおらず、貿易以外の何らかの方法で北朝鮮に原油が供給されているとの見方もある。「原油はこれまでと同じぐらいの量が北朝鮮に輸出されているのではないか」と観測する日本の北朝鮮ウオッチャーもいる。

27類の8割（1億5,500万ドル）は石油および歴青油と、これらの調製品（HS2710）が占めている。

＜中国の鉱物資源の輸入が減少＞
一方、中国の品目別輸入（HS2桁ベース）をみると、石炭を中心とする鉱物性燃料などが前年比17.5％減の11億4,600万ドルにとどまったものの、全体の40.3％を占めた（表3参照）。シェアは2013年の47.7％より低下したが、依然として高い。以下、編み物を除く衣類・同付属品（HS62類）が24.6％増の6億2,200万ドル（シェア21.9％）、鉱石、スラグおよび灰（26類）が18.3％減の3億3,900万ドル（11.9％）、魚、甲殻類（03類）が23.1％増の1億4,300万ドル（5.0％）、編み物の衣類・同付属品が35.5％増の1億1,900万ドル（4.2％）で、食用ナッツ、かんきつ類（08類）が前年の3.4倍の1億1,100万ドル（3.9％）と急増している。

2014年の中国の品目別輸入の特徴は、鉱物性燃料や鉱石、スラグ、灰や亜鉛など、いわゆる鉱物資源の輸入が減少していることだ。これが何らかの政治的な影響によるものなのか、中国の成長鈍化の影響なのかは、もう少し様子をみる必要がありそうだ。一方、衣類・同付属品の輸入増については、中朝間の委託加工貿易が活発化しているためとみることもできる。

（根本光幸）

（中国・北朝鮮）