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コロン・フリーゾーンをサービス輸出の拠点に-パナマ運河拡張後の物流増を見込み制度改定-

(パナマ)

米州課

2016年05月25日

 中南米随一の中継貿易拠点、コロン・フリーゾーン(CFZ)の制度が、4月6日付法律第8号により、大幅に改定された。貨物を一時輸入して保管、再輸出する代表的な機能に加え、パナマ運河の拡張後を見据えて、コールセンターやソフトウエア開発などサービス輸出を行うこと、一時輸入された原材料や半完成品を他の経済特区やパナマ国内の企業に加工させて再輸出することも可能になった。

<パナマの優位性生かすCFZ

 CFZは、1948617日付政令法第18号により、パナマ運河のカリブ海側入り口のコロンに設置された自由貿易地域だ。南北アメリカ大陸の中央に位置するパナマの優位性を生かし、経済発展に寄与することを狙って設けられた。アジアで製造された電気・電子機器や医薬品の原材料、衣料品などがCFZに一時輸入され、関税や消費税(ITBMS)を納付することなく保管し、主にベネズエラ、コロンビアなど南米北部、中米・カリブ諸国向けに再輸出されている。

 

 CFZユーザー企業は、一時輸入された貨物を保管、展示、梱包(こんぽう)、開梱、製造、容器詰め、組み立て、精製、純化、混合、加工などの作業を、自社あるいは他社名義で、自社あるいは他社の利益のために行うことができる。CFZでの卸売りも認められている。また、非居住の外国企業であっても貨物を再輸出する目的であればCFZに代理人を設置して貨物の保管、梱包などの作業を行える。

 

<厳しさ増すユーザー企業の環境>

 しかし近年、CFZユーザー企業を取り巻く環境は厳しくなっている。まず、CFZの主要再輸出先国ベネズエラの経済情勢の悪化だ。同国では外貨不足が深刻化しており、輸入者は輸入代金決済用の外貨を確保できない問題に直面している。CFZユーザー企業の中にはベネズエラ向けの売掛金を回収できていない企業も多い。

 

 次に、コロンビアによる縫製品と履物への複合関税の適用だ。関税分類番号(HSコード)でHS6163類の縫製品、HS64類の履物の輸入に際して従価税と従量税の両方を課税するというもの(2016年2月3日記事参照)CFZは、アジアから中南米への縫製品や履物の中継貿易の拠点となっているが、コロンビア政府はアジアからの輸入急増を懸念する国内産業に配慮して同措置を導入した。なお、330日付政令515号で、縫製品と履物への複合関税の適用期限が2016730日まで延長されている。

 

 さらに、パナマの通貨バルボアは米ドルと等価のため、中南米諸国の通貨下落も影響しており、そうした結果、CFZの一時輸入や再輸出額が減少し、撤退する企業が相次ぎ、CFZにおける民間部門労働者数は減少傾向にある(図12参照)。

図1 CFZの貿易額の推移
図2 CFZの労働者数、ユーザー企業数の推移

 中国経済の減速や資源価格の下落により中南米経済が停滞しており、中継貿易地であるCFZもまた苦しんでいる。CFZで取り扱う品目は付加価値の低い製品が多く、また、CFZを中継する貨物に付加価値を与えるということも、中南米経済が好調だったため行われてこなかった。

 

<加工貿易で再輸出が可能に>

 そのため、46日付法律第8号による今回の制度改正は、開通日が626日と発表されているパナマ運河の拡張により貨物量の増加が見込まれるCFZを、貨物の中継だけではなく、サービスや製品の加工など付加価値を生み出す拠点として発展させようという狙いが読み取れる。

 

 改正のポイントは、(1CFZを管理するCFZ庁が負う義務の追加、(2CFZユーザー企業に認められる活動の見直し、(3CFZと域外の貨物の移動に関する制度の見直し、(4CFZにおける一連の行政手続きの見直し、の4点だ。CFZの制度見直しにより、従来の貨物の保管だけではなく、コールセンターなどサービス輸出の拠点をCFZ内に設けたり、CFZ域外で物品を加工し、付加価値を高めて再輸出したりするなど、CFZ活用の選択肢が広がった。

 

 まず、(1)については、CFZ庁に資金洗浄、テロ資金、大量破壊兵器の拡散につながる資金供与を防止し、CFZに立地する企業がこれらに関与することのないよう防止策を講じることを義務付けた。実際、CFZユーザー企業が資金洗浄に関与した疑いをかけられる事案が発生している。最近では55日、米財務省外国資産管理局(OFAC)が、パナマ、コロンビアなど複数の国籍を持つ企業家がパナマを拠点に組織的な資金洗浄を行ったとして、企業家2人と6人の共同経営者および68の関係会社の捜査を行うとともに、資産を凍結すると発表した。68社の中にはCFZの登録企業が含まれており、商業送り状の偽造など貿易取引型の資金洗浄に関与した疑いが持たれている。

 

 (2)については、CFZユーザー企業に認められる活動が見直され、a.CFZ域外の個人、法人へのサービスの提供、b.複数の交通手段を組み合わせたマルチモーダル輸送サービスの提供、c.爆発物など禁止物品を除くあらゆる商品、製品、装置、財の販売、d.国際航空便へのサービスの提供、e.商品、製品、装置などあらゆる財の輸出加工区、石油フリーゾーン、港湾、パナマ・パシフィコ経済特区など他の経済特区の企業への譲渡・移転、f.データ、デジタル情報の送信、中継、交換、記憶、処理、集積センターのサービスの提供、ラジオ、テレビ、音声、映像、データ信号のリンク、イントラネット、インターネット向けデジタルアプリケーションの研究開発、g.最終目的地をパナマ国外とする外国人への小売り、h.電子商取引を通じた国際通信販売、i.CFZ庁役員会が承認するその他の活動、などが追加された。

 

 また、多国籍企業本部制度(SEM)ライセンス取得企業、知識の都市(Ciudad del Saber)認定企業、コールセンターがCFZに立地することを認め、各制度の条件を満たすことでそれぞれの恩典を享受できるとしている。SEM2007年に導入され、立地を問わず、国外のグループ会社向けのサービスや物流などオフショア業務を行う多国籍企業に、労働と税制上の恩典を与える制度だ。知識の都市は1998年に導入され、パナマ運河の太平洋側ミラフローレス閘門(こうもん)近くにある米軍クレイトン基地の跡地に立地する研究開発、情報通信分野など、国内への技術移転に資する企業に同様の恩典を与える制度だ。例えば、SEMや知識の都市の企業は、パナマの労働法が定める外国人労働者を1人雇用した場合に9人のパナマ人を雇用するという義務を負わない。CFZではこの「19の法則」が適用されるが(ただし、外国人社員が管理職の場合は適用されない)、SEM、知識の都市の企業がCFZに立地すれば、CFZユーザー企業であってもこれが適用されず、全ての恩典を使って事業内容を強化することができると考えられる。

 

 (3)については、CFZユーザー企業が組み立て、処理、加工などを目的に原材料や半完成品をCFZのうち商業区カスコ・ビエホと倉庫街フランスフィールドにより構成される「自由貿易区域」外の企業に一時的に移転することを認めた。最大6ヵ月間、輸入税(関税、ITBMS)を保税状態にでき、それと同じ期間、延長することができる。なお、一時的に移転された財がCFZに戻されない場合は、CFZユーザー企業は輸入税を支払わなければならない。

 

 また、CFZの自由貿易区域に持ち込まれた商品や品物を区域外に持ち出すことができる活動を、a.輸出、再輸出、b.トランジット中の訪問者、旅客、搭乗員、CFZ内外の空港や港湾から出発する訪問者、旅客、搭乗員への販売、c.パナマ運河を通航し、外国の港湾を目的地とする船舶、国内の港湾と外国の港湾の間を往来する船舶への販売、d.国内の空港を使用し、外国の空港を目的地とする航空機への販売、e.通関業者を通じて輸入申告を行い、輸入税を納付して行われるCFZ域外への販売または所有物を保持したままの移転、f.他の特別な税制が設けられた区域への輸出、g.貨物の破壊、h.営業活動などCFZユーザー企業による財の使用、i.公的機関や法人格を有する非営利機関への寄贈、と再定義した。

 

 (4)については、まず、CFZの自由貿易区域に立地する企業がCFZにおいて卸売りをする際、2007年法律5号が定める「営業権(Aviso de Operacion)」を取得する必要がなくなった。CFZにおける一連の行政手続きを行うための単一窓口(Ventanilla Unica)を設置する。また、CFZに立地するユーザー企業で、営業権取得の必要がない場合でも、営業権利料として毎年、資本金の0.5%を支払うことを定めた。これまでは資本金の1%相当額だった。営業権利料は最低100バルボア、最高5万バルボアで、これは従来と変わらない。

 

 今回の改定は、CFZで物流業務を外部委託している企業にとって大きな影響はないとみられるが、CFZで可能な活動の範囲が広がったため、今後は物流以外の目的で活用する企業が生まれるかもしれない。

 

(西澤裕介)

(パナマ)

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