工業分野の輸入代替政策が進展-公共調達制限と特別投資契約で製造業投資促進-

(ロシア)

モスクワ発

2016年05月20日

 欧米による経済制裁の継続、ルーブル安、原油価格の下落を受けた非資源産業の育成ニーズを背景に、政府による工業分野での輸入代替政策が進展している。公共調達分野における輸入と外国企業による役務・サービス提供を一部制限するとともに、「特別投資契約」という新たな投資促進措置を導入し、製造業の育成と生産振興に力を入れている。

<輸入品と外国企業の役務・サービス提供を制限>

 政府による輸入代替政策の主な手段の1つは、公共調達における外国製品などの参入制限だ。

 

 公共調達におけるルールは201345日付連邦法第44FZ号「国および地方自治体による物品・役務・サービスの調達における契約体系について」と、2011718日付連邦法第223FZ号「特定形態の法人による物品・役務・サービスの調達について」に規定されている。

 

 政府は輸入代替政策の実施に向け、連邦法第44FZ号に基づき、6分野の外国製品・役務・サービスの公共調達への参入を制限している。a.建設機械(根拠法令:2014714日付連邦政府決定第656号)、b.軽工業品(2014811日付連邦政府決定第791号)、c.国防および安全保障のための設備(20131224日付連邦政府決定第1224号)、d.ソフトウエア(20151116日付連邦政府決定第1236号)、e.医療製品(201525日付連邦政府決定第102号、2015年2月24日記事参照)、f.医薬品(20151130日付連邦政府決定第1289号、2015年12月18日記事参照)で、ロシアも加盟するユーラシア経済連合加盟国の製品などは制限の対象外となる場合がある。

 

 また、タックスヘイブンに登録されたオフショア企業からの調達も禁止した(2015613日付連邦法第227FZ号)。

 

 公共調達で外国製品などを制限できる根拠として、連邦法第44FZ号第143項には、憲法秩序の維持、国防・国家安全保障、国内市場の保護、国家経済の発展、ロシアの生産者の支援のためには、政府の法規に基づき、外国製品、外国法人による役務・サービスの調達が禁止できると規定されている。

 

 また、連邦法第223FZ号第38項によると、政府は、外国の商品、役務、サービスを除いて、ロシア産の商品、ロシア法人による役務遂行、サービス提供を優先すると定めている。この優先権の実施は、商品の国内外差別を禁ずるGATT2部第34項に違反する可能性が指摘されている。

 

<国産化を促進する投資家を優遇>

 もう1つの手段は、20141231日付連邦法第488FZ号「ロシア連邦における工業政策について」に基づいて導入された「特別投資契約」だ。特別投資契約は、企業がロシア政府や地方自治体と生産投資事業について契約を締結することにより、税制などの優遇が受けられるスキームで、概要は以下のとおり。

 

a.連邦政府または連邦構成体と投資家との間で契約を結ぶ。契約期間は10年以内。

b.資産、利益、国有地、国有資産の賃貸などに対する税制優遇が提供されるなど、投資家が連邦・地方レベルの優遇措置の対象となる機会を得る。また、特別投資契約の有効期間中、条件は変更されない。

c.特別投資契約の締結の際には、75,000万ルーブル(約127,500万円、1ルーブル=約1.7円)以上の投資、製造の新規設立・近代化、最適で手ごろな技術の導入、ロシアで類似した製品が生産されていない商品の国産化の促進などが条件となる。

 

 20151229日付連邦政府決定第1470号では、特別投資契約の下で生産された産品はロシア産として認められるとしている。

 

<大型の投資案件が相次ぐ>

 既に幾つかの特別投資契約が締結されている。工業商務省は20151124日、ペルミ地方政府がルィシバ冶金(やきん)(電気亜鉛メッキ鋼板メーカー)、プロトン・ペルミエンジン(エンジン製造)、ソーダ・フロラト(水酸化カリウム、塩素酸カリウム、ケイ酸ナトリウム製造)と特別投資契約を締結したと発表した。20162021年に事業の実施が予定されており、投資総額は400億ルーブル超で、2,000人の雇用を創出するとしている。

 

 また、ウリヤノフスク州政府がウリヤノフスク工作機械工場と、ロストフ州政府がロシア・チェコ合弁工作機械メーカーのMTEコボスビト・マスと、オリョール州政府がガスプロムネフチおよびGMCグループ(ポンプ、コンプレッサー、石油ガス関連機器製造)、クラスノダル地方政府がドイツ農機大手クラースと、それぞれ特別投資契約の締結に向けた覚書を締結している(工業商務省発表20151124日)。

 

 加えて、サンクトペテルブルクにある現代自動車の製造会社による特別投資契約締結についても報じられた。同社は2016年までに1億ドルを投じて、スポーツ用多目的車(SUV)「クレタ」とセダン「ソラリス」の生産に向けたプレス工程および倉庫の拡充を図る(インターファクス通信2015124日)。台湾のアドバンテック(ADVANTECH)がサンクトペテルブルクのビオビトルム(医療・試験機器の輸入卸売り)とともに、同市でのラボ・診断機器の生産を行う。投資額は75,000万ルーブルで、生産ラインの刷新・近代化と研究開発を行うとされている(「ベドモスチ」紙20151221日)。カリーニングラード州で自動車の組み立て生産を行うアフトトルも同州政府および連邦政府と特別投資契約を締結するとみられている(インターファクス通信20151224日)。

 

(ワレリー・エスキン)

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