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TPP協定活用のためのセミナーを東京で開催

(日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナム)

海外調査計画課

2016年05月24日

 ジェトロは5月17日、東京で環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の特恵関税活用のためのセミナーを開催し、TPP協定の概要や関税、原産地規則について解説した。企業関係者ら約150人が参加した。

TPP協定活用のための支援体制を整える>

 初めに、経済産業省通商政策局の吉澤隆経済連携交渉官が、TPP協定の概要を以下のように解説し、活用促進に向けた活動を紹介した。

 

 TPP協定は20162月に署名が行われ、現在、加盟各国で発効に向けた国内手続きを進めている段階だ。TPP加盟国が世界のGDPに占める割合は4割弱で、日本から加盟11ヵ国への輸出は日本の輸出全体の約3割に当たる。関税分野については、日本は95%を自由化し、輸出を支える工業製品では11ヵ国向け全体で99.9%の品目の関税が撤廃される。即時撤廃率は、品目数ベースで86.9%、貿易額(輸入)ベースでは76.6%。TPP加盟国のうち、日本からの輸出の約半分を占める米国向けでは、自動車部品は8割超が即時撤廃され、家電、産業用機械、化学では輸出額の99%超が即時撤廃される。サービス・投資などの分野でも、投資先国が投資企業に対して技術移転などの要求をすることを禁止するなど、制度の改善が進んだ。さらに、完全累積制度によって、TPP域内を1つの経済圏と見なした域内での分業が効率的になることが期待される。

 

 TPP協定の大筋合意後、日本政府はジェトロなどを通じて日本全国で100回以上の説明会を開催しており、中堅・中小企業のための相談窓口を、ジェトロや経済産業局、中小企業基盤整備機構を含めて全国65ヵ所に設置するとともに、具体的な企業支援のために、「新輸出大国コンソーシアム」を設けて体制を整えている。そのほか、初めて経済連携協定(EPA)を活用する企業を想定した解説書の公開や、必要な情報を入力することで原産地証明書が作成できるウェブサイト上での支援ツールなどを準備している。

 

MFN税率や既存のEPA税率とTPP税率の比較を>

 次に、経済産業省からの委託を受けてジェトロが作成した「TPP特恵関税活用のための解説書」を用いて、ジェトロ海外調査部の秋山士郎課長代理が関税(特恵関税の調べ方や利用方法)を、中畑貴雄課長代理が原産地規則と原産地証明制度について、以下のように解説した。

 

 まず、TPPを活用するに当たり、輸出する品目のHSコードを特定し、関税率を調べる必要がある。TPPにおいてHSコードはHS2012分類が使用されている。関税率を調べる際には、通常適用される税率〔最恵国待遇(MFN)税率〕、TPP税率、米国・カナダ・ニュージーランド以外の既存の2国間EPAがある8ヵ国や日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)の該当国については既存のEPA税率を調べ、比較する。MFN税率は、ジェトロのウェブサイト経由でワールドタリフ(WorldTariffに登録することで日本の居住者は誰でも無料で調べられるが、このデータベースだけでなく、輸出国の当局にも確認が必要だ。また、TPP条文には事前教示制度を各国が採用することが明記されており、書面で税関から回答をもらうことも将来的には可能になる見込みだ。TPP税率を調べるには、個別品目の関税の撤廃・削減方法やスケジュールを定めた譲許表を確認するが、既存のEPAにおける削減の計算方法の定義と混同しないよう注意が必要。例えば、「B11」と記載がある場合、従来のEPAでは12回に分けて税率を削減することを意味する場合があったが、TPPでは11回に分けて削減することを示す。同じHSコードの物品でも削減スケジュールが国によって違う品目があるため、注意が必要だ。これらの税率を比較し、TPP税率が最も低い場合、TPPの利用を検討したい。

 

<完全累積制度で域内の付加価値を無駄なく活用>

 TPPの税率を適用するには、輸入する貨物がTPPの原産品として認められる必要がある。他のEPAと同様、(1)完全生産品、(2)原産材料のみから生産される産品、(3)非原材料を使用し付属書の品目別原産地規則(PSR)を満たす産品、を原産品として認定するという判断基準がある。工業製品の多くに適用される(3)では、関税分類(HSコード)ごとに要件が定められ、3つの基準(関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準)のいずれかが採用、あるいは併用されている。複数の基準が事業者の選択で使える場合、まずは構成原材料の価格情報がなくても判断ができる関税分類変更基準の適用ができるかを調べるのがよい。また、付加価値基準には4つの計算方式があるが、控除方式、積み上げ方式はほとんどの産品について適用できる。控除方式では、利益や労働コストも域内付加価値に含まれるのに対し、積み上げ方式では利益や労働コスト、販売促進経費などは含まれず、純粋に材料(光熱費や潤滑油などの間接材料を含む)の価格で域内付加価値を判断する。そのため、控除方式の方が積み上げ方式より高い閾(いき)値(%)が設定されている。

 

 TPPでは、TPP域内の複数国における付加価値や工程の足し上げを可能にする完全累積制度が採用されており、累積できる国の数も全加盟国12ヵ国と非常に多い。完全累積制度では、非原産品に含まれる原産材料の価格や域内の加工費などを累積できるため、域内でつけた付加価値を無駄なく活用できる。

 

 原産地規則を満たした原産品の輸出入に際し、原産地証明書を作成する必要があるが、TPPでは自己証明制度に一本化される。輸出者、生産者、輸入者が原産地証明書を作成できるが、原則は輸出者が作成する。輸入された産品の原産性に疑いがある場合、輸入国税関が書面や訪問により産品についての情報を求めることができるため、産品の原産性を証明する書類などを原産地証明書の作成時点から少なくとも5年間保存する義務がある。

 

TPPと既存のEPAの使い分けを>

 さらに、秋山課長代理は「発効のタイミングを待たずとも、TPP加盟国とビジネスを始めて相手国での取引価格を定めることで発効時に関税削減コストを取り込むことができるといった事例や、TPPの税率を調べるうちに自社の製品に既存のEPA税率を適用できることが分かったという声もあった」と述べた。中畑課長代理は「TPPが発効しても既存のEPAがなくなるわけではないが、例えば既存のEPAでは原産地規則が厳しいために原産品とならず、特恵関税が利用できなかった産品が、柔軟性の高いTPPの原産地規則では原産品となり、特恵関税が利用できる可能性もある」とし、既存の2国間EPAがある国に対する輸出であってもTPPによる効果が期待できることを紹介した。また、「メキシコのように税関手数料が、TPPを活用することにより低くなる国もあるため、TPPが発効した時点で、既存のEPAとの使い分けを検討してもらいたい」と、TPPの積極的な活用を勧めた。

 

(深谷薫)

(日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナム)

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