2015年の南北交易は過去最高を記録-2016年は開城工業団地の閉鎖で激減か-

(韓国、北朝鮮)

中国北アジア課

2016年04月28日

 2015年の韓国と北朝鮮の南北交易は、過去最高だった2014年の合計額23億4,300万ドルを15.9%上回る27億1,400万ドル(搬入14億5,200万ドル、搬出12億6,200万ドル)を記録し、過去最高額を更新した。しかし2016年は、2月に韓国側が北朝鮮による4回目の核実験とミサイル発射実験に対する制裁として、交易の大部分を占める開城工業団地の閉鎖を決めたことで、交易額が微々たるものになることが予想される。

2015年は前年比15.9%増の271,400万ドル>

 1989年に始まった南北交易は、2005年に10億ドルの大台を超えてからは順調に推移し、2012年には197,100万ドルと20億ドルの大台にあと一歩というところまで迫った(表1参照)。2013年は交易の大部分を占める開城工業団地において北朝鮮側の労働者引き揚げにより、4月初旬から9月半ばまで5ヵ月余り操業が中断したことで、前年比42.4%減の113,600万ドルに急減したが、2014年は開城工業団地の操業が正常化したことから、前年比2倍強の234,300万ドルを記録した(2014年3月24日記事2015年8月27日記事参照)。

 

 韓国統一部の月刊「南北交流動向」(201512月号)に記載された2015年の南北交易をみると、2015年は開城工業団地の操業が一段と活発化したことで、搬入(注)が前年比20.4%増の145,200万ドル、搬出が11.1%増の126,200万ドル、合計では15.9%増の271,400万ドルになった。

表1 南北交易の推移

 2015年の南北交易を品目別にみると、まず搬入では、前年1位だった繊維類が52,400万ドル、2位だった電子・電気製品が58,800万ドルとなり、順位が入れ替わった(表2参照)。以下、3位の生活用品、4位の機械類、5位の化学工業製品の順位に変動はない。搬出は、1位の電子・電気製品が48,300万ドル、2位の繊維類が39,100万ドル、3位の生活用品が11,200万ドルで、ここまでは前年と順位に変動はない。ただし、4位の化学工業製品(8,100万ドル)、5位の機械類(7,700万ドル)は、前年と順位が入れ替わった。

表2 南北交易の品目別搬出入

<南北交易の99.6%が開城工業団地関連>

 「南北交流動向」では、品目別南北交易とは別に、類型別南北交易も発表している。これは、南北交易を商業的取引と非商業的取引に分けて表示したものだ(表3参照)。20103月の韓国海軍哨戒艦「天安号」沈没事件を受けて、同年524日に、南北交流は開城工業団地関連の商業的取引と北朝鮮に対する人道支援などの非商業的取引を除いて原則禁止という措置が取られて以降は、開城工業団地の交易がほぼ全てといっても過言ではない状況が続いている。2014年は南北交易全体の99.8%に当たる233,800万ドル、2015年は99.6%に当たる27400万ドルが開城工業団地関連の取引になっている。

表3 類型別の南北交易

 なお、「南北交流動向」は現在、20162月号まで発行されている。1月号では、20161月の南北交易は前年同月比14.9%増の26,700万ドルと記載されている。一方、2月号では、開城工業団地の閉鎖を受けて20162月の南北交易は67.0%減の6,500万ドルに急減したと記載している。

 

(注)韓国と北朝鮮の貿易は、国家間の取引ではなく、民族内部の取引であるとの位置付けから、韓国では「南北貿易」とせず「南北交易」と呼んでおり、韓国から北朝鮮への輸出は「搬出」、北朝鮮から韓国への輸入は「搬入」という用語を用いている。

 

(根本光幸)

(韓国、北朝鮮)

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