一部鉄鋼製品に暫定セーフガードを発動
(ベトナム)
ハノイ発
2016年04月12日
ベトナム商工省は、3月7日付で一部鉄鋼製品に対してWTOの規定に基づく暫定セーフガード措置を発動する決定(商工省決定862/QD-BCT号)を下した。同省ウェブサイトによると、対象品目は主にビレットや棒線などの鉄鋼。同省では暫定セーフガード発動の理由として、中国の鉄鋼製品が在庫過剰に伴ってベトナムへ流入していることや人民元切り下げにより販売価格が国産品と比べて安くなったことを挙げている。
<実施期間は3月22日から10月7日まで>
暫定セーフガードの所管は同省競争管理局となる。実施期間は3月22日から10月7日まで。その後、同省はセーフガードを正式に発動するか否かを決定する。対象品目は、ビレットや棒線などの鉄鋼製品が主で、HSコード8桁により分類されている。詳細は下記のとおり。
○対象品目(HSコード別)
(1)7207.11.00、7207.19.00、7207.20.29、7207.20.99、7224.90.00
(2)7213.10.00、7213.91.20、7214.20.31、7214.20.41、7227.90.00、7228.30.10、9811.00.00
暫定セーフガードの関税は、(1)が23.3%、(2)が14.2%となる。同決定に先立ち、ホアファット鉄鋼、サザンスチール、タイグエン鉄鋼、ベトイ鉄鋼の地場4社が商工省に対して行ったセーフガード発動の要請を受け、2015年12月25日に商工省がセーフガード措置発動に関する調査を行っていた(2016年1月13日記事参照)。
ベトナムにおいてセーフガードは、2002年5月25日付の国会常務委員会法令第42/2002/PL-UBTVQH10号が規定され、同法令ではセーフガード発動の調査開始決定の後、利害関係者は30日以内に見解を商工省に対して述べることができる(第12条)。その後、同省はそれらの情報、証拠、見解について検討し、6ヵ月以内に結論を出すことになる(第18条)。さらに調査が必要な場合、2ヵ月延長できる。
しかし、商工省調査の最終結論の前に、国民経済上、特に緊急に必要があると認められた際には暫定セーフガードを適用できる。暫定セーフガードの適用により、最大200日までの間、関税率の引き上げが可能となる(第20条第5項)。
<中国の過剰在庫と人民元切り下げが要因>
商工省の報告書によると、ビレットの輸入量は2013年が34万8,872トン、2014年が59万2,033万トン、2015年が188万5,981トン、棒線は2012年が38万7,448トン、2013年が66万5,679トン、2014年が87万2,119トン、2015年が128万2,090トンと推移し、いずれも2015年に大幅に増加している。一方で、国産ビレットの販売数量は2015年が前年比5~10%増、棒線は15~25%増にとどまっており、輸入に大きく頼っている状況だ。
暫定セーフガード発動の理由として商工省は、中国経済の低迷により中国製の鉄鋼製品の在庫が過剰気味で、それがベトナムに大量に輸出されたことを挙げている。また、2015年8月に行われた人民元の切り下げに伴い、中国製品がベトナム国産品と比べて価格競争力が増してきたという。同省は暫定セーフガードの発動が遅れた場合、国内の鉄鋼産業が重大な損失を被り、回復が困難になるとしている。
(佐藤進)
(ベトナム)
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