ビレットや棒線など鉄鋼製品にセーフガード発動調査
(ベトナム)
ハノイ発
2016年01月13日
商工省は2015年12月25日付で、一部鉄鋼製品に対してWTOに基づくセーフガード発動を調査する決定(商工省大臣決定14296/QD-BTC号)を下した。主にビレットや棒線などの鉄鋼製品が対象となる。背景としては、これら製品の国内生産が減少し、輸入が増加したことが挙げられる。
商工省は2015年12月25日付で、一部鉄鋼製品に対してWTOに基づくセーフガード発動を調査する決定(商工省大臣決定14296/QD-BTC号)を下した。主にビレットや棒線などの鉄鋼製品が対象となる。背景としては、これら製品の国内生産が減少し、輸入増加したことが挙げられる。
<地場鉄鋼4社が発動を要請>
調査を所管するのは、商工省競争管理局となる。当地でセーフガード発動調査が初めて決定されたのは2009年のフロートガラスで、植物油、うま味調味料と続き、今回で4回目となる。競争管理局ウェブサイトによると、対象品目は主にビレットや棒線などの鉄鋼製品で、HSコード8桁により分類されている。詳細は下記のとおり。
○対象品目(HSコード別)
7207.11.00、7207.19.00、7207.20.29、7207.20.99、7224.90.00、7213.10.00、7213.91.20、7214.20.31、
7214.20.41、7227.90.00、7228.30.10、9811.00.00
セーフガードの発動を要請したのは、ホアファット鉄鋼、サザンスチール、タイグエン鉄鋼、ベトイ鉄鋼の地場4社で、生産量を合わせると、ビレットが国内全体の38.6%、棒線が34.2%を占める。
<中国からの輸入製品が主力>
セーフガードの発動を要請した理由として、輸入量が国内の生産量より多くなっており、地場企業の利益の減少、在庫の増大、雇用などに影響が出ていることがある。4社が商工省に提出した資料によると、ビレットの輸入量は、2012年の46万7,000トンから2015年の年初9ヵ月には150万2,000トンに、棒線も2012年の38万7,000トンから121万5,000トンに、いずれも3倍以上に増えている。
一方、国内生産は減少している。2012年を100とした場合、ビレットの国内生産量は2015年の年初9ヵ月で86に、棒線は9ヵ月で98に落ち込んでいる。
ビレットと棒線の輸入は、安価な中国製が大きな比重を占める。英字紙「ベトナムニュース」電子版によると、2015年は11月末までの鉄鋼製品の輸入量が1,380万トン以上、輸入額が69億7,000万ドルで、そのうち中国からの輸入量が61%、輸入額で55%となっている。ベトナム鉄鋼協会のグエン・バン・スア副会長は「輸入量が増加する一方で、地場企業の稼働率は40~55%に落ち込んでいる」と嘆く。
<暫定セーフガードの適用を要求>
セーフガードに関して、2002年5月25日付国会常務委員会法令第42/2002/PL-UBTVQH10号により、セーフガード発動の調査開始決定の後、利害関係者は30日以内に商工省に対して見解を述べることができると規定されている(第12条)。その後、同省はそれらの情報、証拠、見解について検討し、6ヵ月以内に結論を出す。さらに調査が必要な場合は、2ヵ月延長できる(第18条)。
しかし、4社は商工省に対して、調査の結論が出る前に暫定セーフガードを発動するよう求めている。国民経済上、特に緊急に必要があると認められた際に発動される暫定セーフガードは期限が200日で、関税率の引き上げができる。具体的には、4社はビレットで45%、棒線で33%の関税率に上げるよう要求している 。
(佐藤進)
(ベトナム)
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