安価な土地と手厚い投資インセンティブが魅力-マディヤ・プラデシュ州のピタンプール工業団地-

(インド)

ニューデリー発

2016年03月28日

 マディヤ・プラデシュ(MP)州が日本企業に分譲するピタンプール工業団地は、土地代が安く、電力など基礎インフラも充実しており、今後の産業集積が見込める。MP州政府は3月9日、日本企業を対象とした投資セミナーと現地視察ツアーを実施し、平松賢司駐インド日本大使、日本企業の代表者ら約40人が参加した。

<需要を上回る電力供給が可能>

 ピタンプール工業団地はMP州の商都インドール近郊にあり、シブラジ・シン・チョウハンMP州首相が訪日した20159月に、日本企業向け工業団地(JITsJapan Industrial Townships、注1)の12番目の案件として紹介された(2015年10月15日記事参照)MP州はインド中央部に位置し、デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)の構成州でもある。日本企業の進出はまだ多くないが、手厚い投資インセンティブなどが魅力だ。

 

 39日にインドール市内で開催された投資セミナーで、チョウハン州首相は「MP州は需要を上回る電力を供給できる。風力、太陽光などの代替エネルギーも安価に併用できる。また土地代が安く、オンラインで土地取得申請が可能だ。州民の気質は温厚だが、治安の維持に力を入れている。日本企業向け投資奨励インセンティブや迅速な許認可を行い、ゴルフ場なども整備し、日本企業受け入れのために努力する」と語った。

 

 続いてMP州のアントニー・デサ首席次官がピタンプール工業団地の概要について、「外資および地場の製造業や製薬業など約900社が集積し、日本企業ではブリヂストンやパナソニックなども入居している。インドール空港から30キロ、インドール市内から車で45分と利便性に優れている。日系資本51%以上の企業を対象に約500エーカー(約2平方キロ)を割り当てる。工業団地はインド最大、アジアでも有数の規模と設備を誇る自動車走行試験・開発研究センター(NATRAX)に隣接している」と説明した。

 

 日系企業に限定した主なインセンティブは、安価な土地代(注2)のほか、州外からの部品や原材料調達にかかる入境税、土地取得印紙税や電力税の免除、10年間の州間接税全額還付などだ。特に電力税については、2016102223日に開催される投資サミット「インベスト・マディヤ・プラデシュ」以降に投資を決定した企業に対しては、25年間の免除を決定している。これらのインセンティブは、他州と比べても好条件で、州政府はさらに投資額に応じたインセンティブも追加するとしている。

 

<「インドのデトロイト」目指すインドール>

 39日午後に、視察団はピタンプール工業団地を訪れた。日系企業に割り当てられる用地は平坦で、造成の時間が節約できるという。その後、工業団地に入居する地場と外資の合弁によるトラック工場を訪問した。工場の責任者は「インドールはインド中央部に位置しており、アグラ・ムンバイハイウエー(国道3号線)の物流の要所であり、トラックを必要とする物流顧客が集積している。土地や電力など基礎インフラが安価で安定しており、コスト削減が輸出競争力につながる。また、1984年の工場立ち上げ、2008年の合弁会社立ち上げ後も労働問題は生じていない」と語った。同社は、ここで作られた製品をインド国内に供給するほか、エンジンなどを合弁パートナーの在外工場に輸出している。在インドールの日系企業で働くインド人責任者は「インドールは20年前から『インドのデトロイト』を目指し、熱心に企業誘致を展開してきた。企業の進出決定の要因は、州政府の投資インセンティブによるところが大きい。また、州民の気質が穏やかで労務問題はほとんど聞かない。ムンバイ港まで国道を走って12時間でアクセスできることもメリット」と語った。

 

(注120154月に宮沢洋一経済産業相(当時)とシタラマン商工相の間で署名された「日印投資促進とインド太平洋経済統合に向けたアクションアジェンダ」において11ヵ所のJITs候補地が決定された。JITsの開発主体、分譲形態はさまざまだが、日本企業のインド進出を後押しする最適な投資環境が整備されることを目指し、候補地が選定されている。MP州案件は12ヵ所目として20159月に認定された。

(注2)ピタンプール工業団地の土地価格は現段階で明示されていないが、他州に比べ安価となる見込み。

 

(大穀宏

(インド)

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