ピタンプールに日本企業向け工業団地を整備-マディヤ・プラデシュ州首相訪日で投資セミナー-

(インド)

アジア大洋州課、ニューデリー事務所

2015年10月15日

 マディヤ・プラデシュ州政府、インド工業連盟(CII)などは、同州のシブラジ・シン・チョウハン州首相の訪日に合わせ、「インド・マディヤ・プラデシュ州における投資機会セミナー」を東京と大阪で開催した。州首相は、商都インドール近郊のピタンプールに日本企業向け工業団地を設けると発表した。

<ピタンプールは12ヵ所目の候補地>

 インド中部に位置するマディヤ・プラデシュ(MP)州は、インド大陸の中央に位置し、農業資源や鉱物資源に恵まれている。20159月にインド商工省や世界銀行などが発表した「ビジネス環境改善評価調査報告書」によると、インド29州における同州の改革進捗状況は5位に位置付けられた。これまでの日系企業の同州への進出事例は限定的なものの、(1)チョウハン州首相率いるインド人民党(BJP)が3期連続で政権を担い政治が安定していること、(2)モディ首相肝いりのプロジェクト「メーク・イン・インディア」に呼応した製造業振興策を積極的に打ち出していること、(3)他州に引けを取らない基礎インフラが整っていることなどから、今後は同州への進出を検討する日系企業も増加することが見込まれる。

 

 チョウハン州首相の来日(928日~103日)の機会を捉え、ジェトロはMP州貿易・投資振興公社(MPTRIFAC)と、同州の投資促進活動を支援する覚書を締結した。この協力の一環として、ジェトロは930日に東京、102日に大阪で投資セミナーを共催した。東京および大阪でのセミナーで基調講演に立ったチョウハン州首相は、投資先としてのMP州の魅力を語った。州首相は「歴史的にインドと日本の関係は非常に深い。自分自身も子供の時から『日本は信頼性が高い国』という認識を持っていた」と強調する一方、「わが州は日本企業の間で知名度が低いことも自覚している。実際、われわれが力をつけてきたのはここ10年の話。今や、MP州はインド全体の経済成長を牽引する存在となり、特に農業の成長率は国内最高で2桁を記録するほどだ。今こそ、日系企業の誘致を本格化させるため、投資環境の整備も進めている。その目玉として、ピタンプールに日本企業向け工業団地を整備することにした」と述べた。

 一方、経済産業省は101日にMP州政府との間で、さらなる投資と開発に向けた共同の取り組みに関する覚書に署名、同州の商都インドール近郊のピタンプールを日本企業向け工業団地(JITsJapan Industrial Townships)の候補地として追加することなどを確認した。JITsは、20154月末の宮沢洋一経済産業相(当時)の訪印時に、インドのシタラマン商工相との間で署名した「日印投資促進とインド太平洋経済統合に向けたアクションアジェンダ」の中で、11の候補地が決定されていた。今回、ピタンプール工業団地が12ヵ所目のJITs候補地となった。

 

<州政府は魅力的なインセンティブを盛り込む>

 ピタンプールは、同州の商都インドールから車で30分の距離に立地。ピタンプールには、ブリヂストン(乗用車タイヤ)やパナソニック(乾電池)、さらにボルボ・アイシャー(トラック、エンジン)、マン(トラック)など外資系企業に加え、地場のフォース・モーターズ、マヒンドラ&マヒンドラ(ともに商用車)、ルピンやピラマル(ともに製薬)など900企業が工場を構えている。近隣には、アジア最大の自動車試験場が整備され、インド重工業省の外郭団体が整備する試験コースや研究開発施設などが、201612月に本格稼働する予定だ。

 

 州政府が整備するJITsの総面積は500エーカー(1エーカー=約4,047平方メートル)。このうち、道路や商業用地、住宅用地などを除いた300エーカーが、工業用地として分譲される見通しだ。土地価格は1平方メートル当たり400ルピー(約720円、1ルピー=約1.8円)で、他州の工業団地と比べて極めて安価だ。さらに州政府は、(110年間の付加価値税(VAT)および中央売上税(CST)の100%還付、(27年間の入境税の免税、(3)土地開発コストの50%補助、などを柱とした、同工業団地限定の特別インセンティブを用意する。また、同工業団地への具体的な入居申し込み受付や分譲開始の時期については後日、州政府が案内することになっている。

 ピタンプール工業団地に関する問い合わせ先は下記のとおり。

○ジェトロ・ニューデリー事務所(TEL:+911141683006、メール:INDjetro.go.jp

MP州貿易振興公社(MPTRIFAC)(TEL:+917552559978、メール:facilitation@mptrifac.org

 

西澤知史、古屋礼子

(インド)

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