国際収支防衛のセーフガードを緩和-追加関税を6月までに段階的に撤廃の予定-
(エクアドル)
米州課
2016年02月12日
政府は1月31日、国際収支防衛のための一時的輸入制限措置(セーフガード)である追加関税措置の適用品目のうち、45%の追加関税が課されている品目について税率を40%に引き下げた。追加関税措置はWTOの国際収支(BOP)委員会でその妥当性について協議されているが、今回の税率削減措置は、政府がBOP委員会に提出した追加関税の段階的撤廃スケジュールに基づくもので、6月までには完全に撤廃される予定だ。
<まず45%の追加関税を40%に引き下げ>
貿易省、農牧漁業省、産業生産省、経済財務省、企画開発庁の代表らからなる貿易委員会(COMEX)は1月21日に2016年決議001号を採択し、2015年3月11日から実施されている国際収支防衛のための追加関税措置の変更を決定し、1月31日に適用した。追加関税は品目別に5%、15%、25%、45%の4種類があるが、今回は45%が適用されている品目の追加関税率を40%に引き下げた。
ドルを通貨として採用しているエクアドルでは、近年のドル高の進行に伴い周辺国(特にコロンビアやペルー)との間で輸出競争力に差が生じており、重要な輸出産品である原油の価格低下も相まって輸出額が大きく減少、国際収支が危機的な状況に陥っている。政府はGATT第12条および第18条Bに基づき、追加関税措置を外貨準備高の著しい減少を予防または阻止するためのセーフガードとして位置付けている。しかし、GATT第15条2項の規定により、同適用を維持するためには当該国がBOP委員会でWTO加盟国と協議し、認められる必要がある(2015年3月20日記事参照)。
<WTOに削減プログラムを通知>
政府は2015年4月7日に、追加関税措置についてBOP委員会に正式に通知し、同年6月29~30日、10月16日にWTO加盟国との間で同措置について協議した。10月までの協議では加盟国間で意見が分かれ、結論には達しなかったが、政府は10月26日付でWTOに通知文書(WT/BOP/G/23)を送付し、追加関税措置の段階的な削減プログラムを明らかにしていた。今回の45%から40%への削減は、同プログラムに基づくものだ。
通知文書によると、今後は4月に追加関税率5%が適用されている品目について追加関税を撤廃し、15%、25%、40%(1月30日までは45%だったもの)については、4月、5月と段階的に削減し、最終的に6月に全ての追加関税が撤廃されることになっている。具体的な品目別の撤廃スケジュールについては、WTOの関連ウェブサイトでダウンロードできる通知文書に記載されている。
<農畜産物などでは適用除外も>
政府は今回の追加関税率の削減に先立ち、追加関税の対象となっていた129品目のうち121品目を除外し、8品目の税率を5%に引き下げた。同措置は2015年12月11日にCOMEXで2015年決議046号として採択され、2015年12月16日から適用されている。
この適用除外・税率軽減措置の目的は、エクアドルの国内生産者や輸出業者が原材料や資本財として用いる品目を追加関税の適用から除外する、あるいは税率を軽減することにより、国内での生産活動や輸出を支援することだ。また、2015年以降ペルー沖で発生しているエルニーニョ現象により打撃を受けている農畜産物も対象となっている。
代表的な品目としては、発電機、農薬散布用の飛行機、真空計、滑車、気象観測台向け機材、製紙原料、化粧品原料・エキス、加工食品原料、農畜産物などがある。具体的な品目については、COMEXのウェブサイトからダウンロードできる。
(中畑貴雄)
(エクアドル)
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