非自動輸入ライセンス制度を復活-規制緩和懸念に配慮、約1,400品目が対象-

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2016年01月26日

 政府は2015年12月23日、非自動輸入ライセンス制度の復活を発表した。さらにその後、2016年1月8日付官報で品目の追加をした。当該措置の主な対象品目は、自動車部品、タイヤ、電化製品、繊維・衣類品、履物、農業機械など多岐にわたる。マクリ政権は、2015年12月の発足以来、経済開放による成長を志向し、輸入に関する大胆な規制緩和をしてきたが、今回、輸入品の急増を懸念するセクターに対し、一定の配慮を行ったかたちだ。

<新たな輸入システムを通じて申告>

 生産省決議第52015号によると、約1,400品目が非自動輸入ライセンス制度の対象となっている。分野は、自動車、自動車部品、二輪車、タイヤ、機械類、繊維、履物類、電子および電気機械類、農業機械類、玩具、製紙、プラスチック、鉄鋼、木材、家具、化学製品だ。これらの輸入取引は、公共歳入連邦管理庁(AFIP)のウェブサイトに新たに設けられた「輸入の総合モニタリングシステム(SIMI)」を通じて行う(2015年12月24日記事参照)SIMIでは、輸入業者または申告者のCUIT(納税登録単一番号)、HSコード、FOB価格、商品の単位と数量、商品の状態、輸入先国、原産国などが求められる。さらに、非自動輸入ライセンスの取得には、同システム内にある申告フォームに輸入業者の連絡先や製品の技術基準証明書、輸出業者情報などの入力が必要となる(品目によって入力項目は異なる)。非自動輸入ライセンスの対象となる品目や、SIMIで申告すべきデータの詳細については、大蔵・財務省ウェブイト(スペイン語)で閲覧できる。

 

 なお、同決議では、非自動輸入ライセンス対象品目以外の全ての消費財の輸入に対しても、SIMIを通じた自動輸入ライセンスの申請を義務付けている。承認後に得られるライセンスの有効期限は、非自動輸入ライセンス、自動輸入ライセンスともに90日間と定められている。ちなみにSIMIについて、通関業者や貿易専門家らは、貿易取引における全ての情報が網羅され、通商情報を把握するために有益なシステムになる、と評価している。

 

<国際ルールに沿い国内雇用守る措置と説明>

 アルゼンチンでは、20131月に非自動輸入ライセンス制度が廃止された。当時の対象品目数は約600品目だったが、今回その品目数が約1,400品目に拡大されたことに驚きの声が上がった。しかし、フランシスコ・カブレラ生産相は、導入の経緯を産業と労働者の雇用を守ることに加えて、投資誘致および貿易取引の発展を促すためだ、と説明している。輸入制限措置の事前宣誓申告(DJAI)制度を廃止したことで、安価な輸入品の流入を懸念する一部国内産業界の声に耳を傾けたものだ。国内の輸入業者らは、DJAIが廃止されたことで大きな障壁が改善されたとし、また非自動輸入ライセンスは国際ルールにも沿っているとみており保護主義的な政策とは受け止められていないようだ。

 

 政府の取り組みに対し、繊維・衣類関連団体、履物類産業会議所、玩具産業会議所などを中心に、関連企業団体も好意的な反応を示している。アルゼンチン工業連盟(UIA)では、産業および雇用を保護する方針を歓迎するが、品目によっては今後、国際貿易ルールに沿った措置、例えば植物検疫措置などを取り入れる必要があると、指摘している。政府は、引き続き国内業界団体などと対話を続けていく方針を明らかにしている。

 

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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