政府、輸入取引の事前宣誓申告を廃止
(アルゼンチン)
サンパウロ事務所
2015年12月24日
政府は12月22日、国内外から強い批判を受けていた輸入制限措置の「輸入取引の事前宣誓申告(DJAI)」制度を廃止し、新たな輸入管理システムを設けた。国際貿易ルールに沿った輸入申告の簡略化を図る。価格の安い輸入品が市場で増加するのではとの懸念に対し、カブレラ生産相は国内の産業や雇用を守っていく方針を明らかにしている。
<輸入の総合モニタリングシステムを新設>
公共歳入連邦管理庁(AFIP)は12月22日、決議第3823/15号で「輸入の総合モニタリングシステム(SIMI)」の開設を発表した。輸入業者は23日以降、AFIPウェブサイトに設けられた同システムで、消費財の輸入取引の申告を行うよう義務付けられた。貿易関連の政府機関が申告内容を審査し、原則として申告が行われてから10日以内に許可するか否かを判断する。しかし、例えば疑義が生じた場合などは確認を行うため、期間の延長も可能となっている。なお、申告後に得られるSIMIの許可番号は180日間有効で、通関手続きを行うためには取得が必須となる。
また、AFIPの発表では、決議第3252/12号に基づいて制定されていたDJAI制度は無効となったが、23日以前に申告された輸入取引などについてはDJAI制度の下で有効とされる。
<WTOパネルが国際ルール違反と認定>
多方面から強い批判を受けたDJAI制度は保護主義政策の一環として、貿易黒字を維持し、外貨の流出を防ぐなどの目的で、2012年1月に前政権が導入した。DJAI制度とは別に、事実上輸入と同規模の輸出を求めた輸出入均衡計画書の提出なども企業に課していたため、輸入許可がスムーズに下りないことに輸入業者は悩まされてきた。これらの輸入制度措置では、審査基準が開示されることはなく、不透明で複雑な手続きにより、日系企業を含む多くの企業の円滑な活動を妨げており、2014年8月には、WTO紛争処理委員会(パネル)が国際貿易ルールに違反すると認定していた(2014年9月17日記事参照)。
こうした輸入制限措置は結果として、国内産業が必要とする原料・部品などが不足する事態も招くなど、国内の企業活動に大きな影響を及ぼしてきた。今回のDJAI制度の廃止で、ビジネスを阻害する要因が1つ取り除かれると期待されており、アルゼンチン商業会議所(CAC)のカルロス・デラベガ会頭も、歓迎の意向を示している。
なお、今回の輸入制限措置の見直しにより、一部業界では価格の安い輸入品の増加を懸念する声も出ているが、カブレラ生産相は、国内の産業や雇用を守っていく方針だと説明し、今後は約1万8,000品目に自動輸入ライセンスを付与するものの、約1,400品目については「輸入許可証」の取得を求める非自動輸入ライセンス制度を導入すると述べており、国内産業の保護に一定の配慮をするものとみられている。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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