ウラジオストク自由港法を施行、入居は低調

(ロシア)

モスクワ事務所

2015年12月04日

 ウラジオストク自由港法が10月12日に施行された。新会社を設立することが入居申請の条件とされており、申請内容を検討する監督委員会も初会合(10月21日)で、入居事業者として認定されたのは1社にとどまった。

<簡易入国ビザ発行の準備間に合わず>

 1012日にウラジオストク自由港法が施行され、ロシア政府は自由港の入居者の認定基準〔新しい投資プロジェクトでかつ投資額が3年以内に500万ルーブル(約900万円、1ルーブル=約1.8円)以上〕を承認した(20151020日付連邦政府決定第1123号、2015年7月31日記事参照)。

 

 ユーリ・トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表を議長とするウラジオストク自由港に関する監督委員会(自由港の運営管理機関)は第1回会合(1021日)において、入居資格を得られない業種(卸・小売業、金融・保険業)を決定した。入居申請は極東開発公社のウブサイト上で行う必要があり、申請は15日以内に審議されることとなっている。

 

 簡易入国ビザ制度として導入される国境でのビザ発行は、準備が間に合わず、201611日に開始される見込み(地元週刊紙「コンクレント・ルー」1110日)。

 

7プロジェクトのうち入居認定は1社のみ>

 アレクサンドル・ガルシカ極東発展相は1012日、ウラジオストク自由港の潜在的入居事業者として、7つのプロジェクト、投資総額にして600億ルーブルに上る提案があることを明らかにした(沿海地方政府ウェブサイト1012日)。しかし、監督委員会の第1回会合で入居事業者として認められたのは、沿海地方スラビャンカ村での5つ星ホテルと住宅建設(投資予定額50億ルーブル)を提案したロシア太平洋投資(ロシアのトランジットDVグループと中国の中工信集団の合弁会社)1社にとどまった。ロシア太平洋投資の社長は前沿海地方知事のセルゲイ・ダリキン氏。

 

 スンマ・グループによる大ザルビノ港開発プロジェクトの提案は、資金調達に問題があるとされ承認されなかった。ほかにも入居申請があったが、プロジェクトの実施に当たり新会社を設立するものではなかったため、検討の対象外とされた。企業利潤税(法人税)が20%とされる既存の企業活動と、自由港の入居者として5年間法人税が免除されるプロジェクトを区別する課税基準の定義が複雑なためだ。監督委員会は、既存の企業が入居者となる場合の課税基準を定義するため、201611日まで既存企業からの申請受付を中断した。

 

<新会社設立が入居のネックに>

 新会社を設立しなければならないことが入居のネックとなっているという指摘があるが、ウラジオストク海洋漁港の運営会社のように、冷凍倉庫を新設する計画を持ち、既存企業の人員や経費で建設・運営を行う場合は、新会社を設立する必要はないという。

 

 もちろん入居者として認定されるために子会社設立を計画している企業もある。自動車販売大手スモトリグループは、子会社「スモトリ・テクニカルセンター」を設立して、入居申請をするという。同社はトラック生産を計画しており、トラックのシャシーに載せる荷台の生産から始め、最終的にシャシーも生産する。加えて、同社はレースサーキット場「プリムリング」を中心とした観光・レクリエーションの産業クラスターを創設する事業も申請する予定だ(「コンクレント・ルー」紙1110日)。

 

 トルトネフ副首相は「ウラジオストク自由港の入居企業はさまざまな優遇を受けるにもかかわらず、応募に関心を寄せる企業は15社ほどしかなく、非常に少ない。恐らく入居認定獲得の途上で、われわれが見落としている幾つかの障害がある」と述べ、次回会合で入居申請における障害を議論する意欲を示した。次回会合は12月下旬もしくは20161月初旬に予定されている(極東発展省ウェブサイト1115日)。

 

(タギール・フジヤトフ)

(ロシア)

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