出生証明書の提示義務は解消へ-改正入管法を一部見直し-

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク事務所

2015年12月01日

 南アフリカ共和国政府は10月23日、2014年5月に施行された改正入管法の見直しを行っている内部委員会(IMC)からの提言を受け入れる方針を示した。提言内容には、18歳未満の子供の出入国時における出生証明提示義務の解消が含まれており、今後、南ア政府から、改正入管法を所管する内務省に対して改善指示が出そうだ。

<観光客減らした改正入管法>

 南アのデレック・ハネコム観光相は1023日、政府がIMCからのビザ実務軽減に関する提言を受け入れたと発表した。具体的には、出入国時における出生証明提示義務の解消などだ。この措置が適用されれば、低迷気味の観光産業にはプラスになるとケープタウン観光の最高経営責任者(CEO)のエンバー・ドゥミニー氏はメディアに語った。

 

 2010年以降、同国を訪れる観光客数は毎年4.0%超で増加していたが、南ア統計局によると、20145月に実施された改正入管法(2014年6月19事参照)の影響などにより減少し、2014年には前年比0.8%減の2,0404,000人だった。

 

<改正内容は不十分との指摘も>

 先の改正入管法では、企業内転勤ビザの有効期間が2年から4年に変更されて駐在員の負担は軽減されたが、ビザ申請時に申請者本人の出頭を求められたり、18歳未満の子供を伴って外国に旅行する場合や18歳未満の子供が単独で外国に旅行する場合には、出入国時に子供の出生証明書や子供の旅行に同意を示す宣誓供述書の提示が課されるなどの負担が増えていた。ジェトロが実施した2014年度「在アフリカ進出日系企業実態調査」では、ビザ手続きの煩雑化を挙げる企業が約8割に上っており、また改善を求める声も各国から上がっていた。

 

 IMCの提言に基づき、南ア政府は内務省に対し、以下の対応を求めることになる。

 

1)今後3ヵ月での対応

○生体認証システムを試験的にヨハネスブルク、ダーバン、ケープタウンの空港に導入

3ヵ月~3年間有効のマルチビザ導入の検討

○学校長の確認書による修学旅行の許可

○子供の旅行に関する宣誓供述書の有効期間を6ヵ月に

 

2)今後1年以内の対応

○インド、中国、ロシアなどに対しビザ免除を検討

○アフリカからの旅行者に対して10年間有効のマルチビザ発行を検討

○出生証明書の提示義務の解消

 

 ビザの手続きにかかる負担軽減は、南アの駐在員や旅行者にとっては好ましいには違いないが、見直しは不十分との指摘がある。在南ア日本大使館によると、今回の見直しでは、出生証明書の提示義務は、南アへの入国時のみ不要で、南アからの出国時には必要とされているとのこと。そのため、詳細を現在確認中という。当地エコノミストの中には、上記軽減措置が実施されるまでに時間がかかるため、南アの観光業界が利益を回復するまでにはなお時間がかかるとの厳しい見通しを示しており、内務省による今後の対応に注目が集まっている。

 

(川上康祐)

(南アフリカ共和国)

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