日・ウクライナ投資協定が11月26日に発効-日本からの投資拡大に期待-
(ウクライナ、日本)
欧州ロシアCIS課
2015年11月18日
2015年2月5日に締結された「投資の促進および保護に関する日本国とウクライナとの間の協定」(日・ウクライナ投資協定)が11月26日に発効する。協定は日本のウクライナ支援としての意義を持ち、ウクライナが日本企業の投資に寄せる期待も大きい。
<協定で両国間の投資を保護・促進>
2月5日にウクライナの首都キエフで、日・ウクライナ投資協定が締結された(2015年2月16日記事参照)。その後、同協定はウクライナでは6月3日に最高会議(議会)で批准され、日本では9月11日に衆参両院で承認された。10月27日にキエフで、日本政府から日・ウクライナ投資協定の効力発生のための通告が行われ、ウクライナ政府が受領した。
同投資協定第28条に「この協定は、遅い方の通告が受領された日の後30日目の日に効力を生ずる」と規定されている。これに従い、同協定は2015年11月26日に発効することになった。28条からなる協定全文は、10月30日付官報(号外第247号)に掲載されている。
同協定は、締約国間の投資の保護・促進を図り、投資環境の法的安定性を高めるものであり、締約国の投資家(企業など)が相手国で行う投資活動と投資財産への待遇について定めている。概要は以下の5点に集約できる。
(1)内国民待遇(投資後の段階のみ)(第4条)
自国投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国の投資家とその投資財産に付与する。
(2)最恵国待遇(投資後の段階は義務規定、投資の許可段階は努力規定)(第5条)
第三国の投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国投資家とその投資財産に付与する。
(3)特定措置履行要求の広範な禁止(第8条)
投資受け入れ国が投資活動の条件として、現地調達要求、輸出要求、技術移転要求などを課してはならない旨を規定。
(4)投資保護規定(第13~17条)
投資家の財産が収用・国有化される場合の条件とその際の補償、争乱からの保護、送金の自由の確保、両締約国間の紛争の調停方法について規定。
(5)締約国と投資家との間の投資紛争解決(第18条)
投資受け入れ国の協定義務違反により投資家が損害を被った場合は、協定義務違反として投資家は相手国との紛争を国際仲裁機関に付託して処理できる。
<ウクライナのビジネス環境は改善>
日・ウクライナ投資協定は、投資の促進および保護に関して包括的かつ詳細な事項を規定している。日本の外務省によると、同協定は、日本企業からの強い要望に応えるとともに、日本からの投資促進によるウクライナ支援の意義も有している。協定の発効により、日本とウクライナ間の投資が促進されるとともに、両国間の経済関係が一層緊密になることが期待されている。
2015年6月の安倍晋三首相のウクライナ訪問の際、ポロシェンコ大統領は6月3日にウクライナ最高会議で日・ウクライナ投資協定を批准した旨を紹介し、今後この投資協定を利用して日本の多くの企業がウクライナに進出することを期待していると述べた。
ウクライナの投資環境改善に関しては、ウクライナがIMFから融資を受けるに際し、国内外の企業がビジネスをしやすい環境づくり、投資環境改善の進展状況も融資継続の条件に含まれている。
ビジネス環境の尺度を示す指標として、世界銀行が毎年10月にビジネス環境ランキング「Doing Business」を発表している。これでみると、ウクライナは2011年10月発表のランキングでは183ヵ国中152位だったが、2012年の発表では137位、2013年は112位、2014年は96位(その後、87位に修正)と順位を徐々に上げた。
2015年10月発表の最新のランキングでは、ウクライナは83位だった。順位が上がった要因は「ビジネス開始のしやすさ」の順位が前年の70位から30位に上昇したことだ。世銀は具体的な評価の内容として、付加価値税(VAT)の納税者登録に要する時間を短縮したこと、会社の登記手数料を廃止したこと、などを挙げている。
(今津恵保)
(ウクライナ、日本)
ビジネス短信 ff0874817cfdb1d5