日・ウクライナ投資協定が締結−日本からの投資促進に期待−

(日本、ロシア・CIS、ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2015年02月16日

ウクライナの首都キエフで2月5日、日本・ウクライナ間の投資協定が締結された。協定の締結は、日本からの投資の促進につながり、困難な状況に直面するウクライナ経済の改善につながるものと期待されている。両国の国内手続き完了通告を経て、30日後に発効する。

<ウクライナ支援の意義も>
日本政府は2月3日、日・ウクライナ投資協定(投資の促進および保護に関する日本国とウクライナとの間の協定)の署名に関する閣議決定を行い、これに基づき2月5日、キエフにて、日本の角茂樹駐ウクライナ大使とアブロマビチュス・ウクライナ経済発展・貿易相が投資協定に署名した。岸田文雄外相は3日の閣議後の記者会見で、「本協定の締結は、日本企業からの強い要望に応えるとともに、日本からの投資促進によるウクライナ支援の意義も有すると考えている」と述べた。

この協定は、締約国間における投資の保護・促進を図るため、一方の締約国の投資家(企業など)が相手国で投資を行う際の投資活動と投資財産への待遇について定めたもの。経済産業省によると、投資環境の法的安定性を高めるため、以下の規定を盛り込んでいる。

(1)内国民待遇(投資後の段階のみ)
自国投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国の投資家とその投資財産に付与する。

(2)最恵国待遇(投資後の段階は義務規定、投資の許可段階は努力規定)
第三国の投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国投資家とその投資財産に付与する(国際協定などに基づく待遇を除外する規定あり)。

(3)特定措置履行要求の広範な禁止
投資受け入れ国が投資家の投資活動の条件として、現地調達要求、輸出要求、技術移転要求などを課してはならない旨を規定。

(4)締約国による投資家との契約順守義務(「通称:アンブレラ条項」)
例えば、資源開発やインフラ事業などに関連する投資契約が正当な理由なく取り消された場合、協定義務違反として、投資家は国際仲裁機関に付託することができる。

(5)収用時の補償、争乱からの保護、送金の自由といった投資保護規定

(6)締約国と投資家との間の投資紛争解決
投資受け入れ国の協定義務違反により投資家が損害を被った場合に、投資家は相手国との紛争を国際仲裁機関に付託して処理できる。

日・ウクライナ間の投資協定については、2011年1月の両国首脳会談の際に、協定の交渉開始について合意。その後、計3回の交渉を行い、合意に至った。2014年7月の岸田外相のウクライナ訪問の際も、両国外相間で両国の経済関係強化のために投資協定交渉を加速化するとの認識で一致していた。

<汚職撲滅がビジネス環境改善の課題>
外務省の記者発表(2月5日)によると、「人口4,600万人を擁し、ウラン、各種ベースメタル、レアメタル、石炭などの地下資源にも恵まれたウクライナは、日本企業にとって有望な潜在投資先」として、両国間の経済関係が発展することを期待している。

一方、ウクライナ側は、「日本との投資協定締結は日本以外の外国投資家に対してもウクライナの投資環境のポジティブなイメージを与える。投資家にとっては、競争が極めて低い水準にある今が、ウクライナに足場を築く1つのチャンス」(アブロマビチュス経済発展、貿易相)としている(ウクライナ政府ウェブサイト2月5日)。

ウクライナの投資環境改善に関しては、ウクライナがIMFからの融資を受けるに際し、財政・金融の構造改革のほか、国内外の企業がビジネスをしやすい環境づくり、投資環境改善も融資の前提条件に含まれている。特にウクライナの場合、汚職の撲滅が大きな課題とされている。

投資環境の尺度を示す世界銀行・国際金融公社(IFC)のビジネス環境ランキング「Doing Business」でみると、ウクライナは2011年の総合ランキングは対象183ヵ国中152位と低かったが、2012年137位、2013年112位、そして、困難な状況にあっても2014年は96位と順位を徐々に上げている。

協会は今後、両国議会で承認手続きが行われる。その完了通告を経て、30日後に協定が発効する。協定の条文は、経済産業省および外務省のウェブサイトに後日掲載される。

(今津恵保)

(ウクライナ・日本)

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