健康長寿広報展をホーチミンで初開催、関連企業34社が出展

(ベトナム)

ホーチミン事務所

2015年10月06日

 ジェトロは9月11~13日、「健康長寿広報展inベトナム」をホーチミン市で開催した。健康長寿広報展のベトナム開催は初めてで、日系企業34社が健康器具や健康食品などの展示を行い、延べ8,000人の来場者を集めた。次回の同広報展は2016年3月にタイ・バンコクで実施する予定だ。

<若者中心の来場者に多彩なパフォーマンス>

 ベトナムには公的医療保険制度があるものの、その加入率は7割にとどまり、保険適用制限が多いことなどから、重い病状ではない限り病院に行かないケースが多い(2015年6月5日記事参照)。予防医学に対する理解度も、まだ低いのが現状だ。

 

 世界トップクラスの長寿国である日本。産業としても確立している健康長寿分野の企業PRのため、ジェトロはベトナムで初めて健康長寿広報展を開催した。オープニングセレモニーでは、ジェトロ・ホーチミン事務所の安栖宏隆所長が「2014年に日越両政府は、がん・生活習慣病の予防に関する協力を強化することで合意した。多少の時間はかかっても、人々の健康や病気の予防に対する意識やニーズが確実に高まる。これに向け、まずは日本の健康長寿に関する商品・サービスを知ってもらいたい」とあいさつした。在ホーチミン日本総領事館の中嶋敏総領事は「ベトナムでは急速な経済成長により国民の生活レベルが向上し、食生活も豊かになっている一方、肥満や糖尿病など生活習慣病が問題となってきている。日本の長寿には、医療技術だけでなく病気を予防する健康長寿産業の発展が大きく寄与している。この機会に日本の健康長寿産業の製品・サービスの『質の高さ』『きめ細やかさ』を実感してもらいたい」と話した。また、来賓として参加したホーチミン市保健局のグエン・タン・ビン局長は「日本の長寿は、日本食はもちろんのこと健康管理や体づくりに関する商品やサービスによるものと思う。今回のようなイベントはベトナム人にとっても非常にありがたく、この広報展をきっかけにベトナムへ進出する日本企業が増加することを願っている」と語った。

 

 各ブースでは、健康器具、体力測定の体験のほか、日本の医療・サービスの紹介などが行われた。特設ステージでは出展企業による茶のたて方やそばの食べ方実演もあり、また会場提供者である青年文化センターの声掛けによる、よさこいを含む多くのパフォーマンスが実施され、来場者の注目を集めた。来場者は若者が中心で、BtoBよりBtoCの色合いが濃い広報展となった。

 

<具体的なビジネス進める契機に>

 今回の広報展では、3日間合計で商談件数が510件、今後継続してコンタクトを取ると約束した件数は261件に上り、今後具体的なビジネスを進める契機になったといえる。

 

 出展した企業からは「ベトナム人は安いものにこだわるイメージがあったが、デモンストレーションを交えて機能を説明することにより、高単価商品の販売につながると感じた」「ベトナム人の検診サービスに対する関心の高さを実感した」と、当地における日本製品・サービスへのニーズを指摘する声が聞かれた。一方で、「成熟した市場でないため、根気強く事業展開を行う必要性を感じた」など、価格と製品・サービス内容が幅広く受け入れられるためには当地市場に合わせた販売戦略が必要とする意見もあった。

 

<中間層の増加で高まる健康への関心>

 ニールセンの調査では、ベトナムの消費者の73%が生活の質を向上させるためなら支出を拡大しても構わないと答え、回答者の39%は「健康」を関心事に挙げた。また、ユーロモニター・インターナショナルの推計によると、年間可処分所得が5,000ドル超~35,000ドル以下の世帯を中間層と定義した場合、ベトナムの中間層は2015年時点で約35%だが、2020年に約50%、2030年には約70%まで拡大すると見込まれている(図参照)。購買力のある中間層の増加とともに、健康への意識は高まると考えられ、日本の健康長寿産業のベトナムでのビジネスチャンスは今後、広がりそうだ。

 

飯塚元人

(ベトナム)

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