日本産リンゴ生果実の輸入を解禁-ベトナム産マンゴー生果実の対日輸出も-

(ベトナム、日本)

ハノイ事務所、ホーチミン事務所

2015年10月05日

 ベトナムで、日本産リンゴ生果実の輸入が9月17日から解禁された。また、ベトナム産カッチュー種のマンゴー生果実の対日輸出も同時に可能となった。これらについては、9月15日に行われたグエン・フー・チョン共産党書記長と安倍晋三首相との首脳会談でも取り上げられた。

<検疫の実施などが条件>

 ベトナムでは2011年以降、植物由来食品(野菜・果物など)を輸入する際には指定された輸出国からでないと輸入が許可されないことになっている。日本からの輸入については、201312月に日越当局間で本登録が終了、日本からの植物由来食品の輸入が正式に認められていた。しかし、生鮮の植物由来食品の輸入時には、病害虫防止のために適用される有害動植物危険度解析(PRAPest Risk Analysis)の規制をクリアする必要があり、リンゴも対象品目となっていたことから、実質的にはリンゴの生果実を日本から輸入することはできなかった(2013年12月27日記事参照)

 

 今回発表された輸入解禁の条件として、(1)日本の植物防疫所があらかじめ登録した生産園地における、ベトナムが侵入を警戒する病害虫に対する検疫の実施、(2)植物防疫所などによる園地検査、(3)日本の植物防疫所が登録した日本の選果梱包(こんぽう)施設での選果・梱包、(4)日本の植物防疫所による輸出検査、(5)輸出初年のベトナム査察団による現地査察の実施、が求められている。

 

<リンゴの有望な潜在的市場>

 日本の農林水産省によると、2014年の野菜・果実などの輸出額に占めるリンゴの割合は35.5%(86億円)と品目別トップで、果実輸出の主力産品と位置付けている。台湾など中華圏では大きな需要があるが、東南アジア諸国はリンゴの栽培条件である平均気温の上限14度を上回る地域であることから収穫が見込めず、同省が掲げる日本の輸出戦略においても有望な潜在的市場としている。

 

 ベトナムについては、2014年に1人当たりのGDPが約5,000ドルに達しているホーチミン市を中心に富裕層が拡大、それに伴い安心・安全と認識されている日本食品への需要が高まっている。現状、日本からのリンゴ輸出24,000トン(2014年)の約8割が台湾向けとなっているが、日越経済連携協定(EPA)によりリンゴの輸入関税が2019年には0%となるという追い風もあり、ベトナムへの輸出に期待がかかる。

 

 なお、日本産リンゴの対ベトナム輸出に関し、現時点で輸出条件をクリアしているのは青森県産有袋リンゴのみとなっており、輸出を拡大するにはベトナムの基準を満たした生産地の裾野が広がることも重要だ。

 

<ベトナム政府は農産物輸出に注力>

 一方、ベトナム農業農村開発省は、ベトナム産カッチュー種のマンゴー生果実を日本が輸入解禁したと発表した。ベトナムから日本に輸出できるようになった生鮮果実としては、2009年のドラゴンフルーツに次いで2品種目となる。同省によると、カッチュー種はベトナムで生産されるマンゴー全体の7割以上を占めているという。

 

 マンゴーの生果実については、ベトナムでミバエ類の発生がみられることから日本は輸入を認めていなかった。今回の解禁の条件として、(1)蒸熱処理施設において一定時間・温度での消毒実施、(2)適切な梱包およびベトナム側の輸出検査、(3)前記消毒および検査が的確に実施されていることの植物防疫官による確認、などが要求されている。「サイゴン・タイムズ」紙は同省植物保護局担当者のコメントとして、「日本へのマンゴー輸出はベトナムにとって重要な成果だ」と伝えた。一方、蒸熱処理には高価な設備が必要とされるが、当地にはその設備がまだ少ないという課題が残っている。

 

 ベトナム政府は重要産業である農業振興の一環として、農産物の輸出促進に注力しており、2015年に入り米国、フランス、オーストラリアなどにベトナム産生鮮ライチが初めて輸出された。商工省によると、2014年の果実輸出額は15億ドルと5年前の3倍以上に増加し、2015年上半期の輸出額も7億ドルに達している。政府は現在、日本に対して赤肉腫のドラゴンフルーツやライチの生果実の輸入解禁を求めており、交渉の行方が注目される。

 

(竹内直生、栗原善孝)

 

(ベトナム、日本)

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