日本からの植物由来食品輸入の本登録が完了−植物検疫規制には注意が必要−

(ベトナム)

ホーチミン事務所

2013年12月27日

植物由来食品を日本から輸入する際の規制について、両国間の本登録が済み日本からの輸入が引き続き可能になった。ただし、植物検疫規制、特に有害動植物危険度解析(PRA規制)が存在することには注意が必要だ。法令の規定上ではPRA規制対象かどうか判断できない場合に、事前に当局に確認することになる。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<日本からの輸入が引き続き可能に>
ベトナムでは2011年以降、植物由来食品(野菜・果物など)を輸入する際には、食品安全法や農業農村開発省通達13号(13/2011/TT−BNNPNT)に基づく食品安全検査のため、指定された輸出国からでない限り輸入が許可されないことになっている。対象品目の範囲は、野菜・果物・穀物・種子など多岐にわたる(対象品目のHSコードは添付資料参照)。これらに含まれない食品、例えばHSコード17〜21類などはそもそも本規制の対象外であり輸入可能だ。

日本を輸出国とする植物由来食品については、2013年5月末に日本とベトナム当局間で仮登録が終了し、既に日本からの輸入が可能となっていた(2013年7月16日記事参照)。仮登録の有効期限は2013年末までだったが、12月16日に本登録が終了し、日本からの植物由来食品の輸入が引き続き可能となった。

輸入をする際、同通達で規定される手続きは次のとおり。

輸入者は貨物の到着24時間以上前に、輸入地の植物検疫支局に対して食品安全検査の登録を行う。貨物の到着後、書類審査(1営業日内)、場合によってはサンプル検査が行われることがあり、その後に食品安全証明書が発給される。この証明書をもって税関で輸入通関を行う。

<病害虫防止のためのPRA規制には注意>
ただし、上記の食品安全検査による規制上は輸入できるとしても、植物検疫に係る輸入規制もクリアしなければならない。

今回輸入可能になった全品目を含む植物・植物由来食品は、植物検疫規制の対象になっている。植物検疫に関する政府議定02号(02/2007/ND−CP)、2007年農業農村開発省決定35号(35/2007/QD−BNN)、2012年同省通達65号(65/2012/TT−BNNPTNT)に基づいている。対象品目は、決定35号によりHSコードレベルで明示されており、06類から97類に至るまで広範な品目が対象になっている。

手続きとしては、輸入者は貨物の到着24時間以上前に、輸入地の植物検疫支局に登録し、必要書類(検疫申請書、輸出国発行の検疫証明書、船荷証券、パッキングリストなど)を提出して審査を受けた後、検疫証明書を発給される。その検疫証明書をもって税関で輸入通関を行うことになる。

これまで、検疫規制(植物・動物とも)は実際にはほとんど適用されていないといわれてきた。ある企業によると、検疫局に書類を提出し、検査はなく与えられた登録番号をもって輸入通関するのが実態だという。ただし、2012年12月に植物検疫に関する通達65号があらためて発出されており、今後は徐々に適用される可能性がある。

最も影響が大きい植物検疫規制は、生鮮の植物由来食品の輸入時に病害虫防止のために適用される有害動植物危険度解析(PRA:Pest Risk Analysis)だ。農業農村開発省決定02号(48/2007/QD−BNN)・通達39号(39/2012/TT−BNNPTNT)に基づき、初めての「品目」である場合、または初めての「原産国」である場合(つまり、品目あるいは原産国の輸入実績がない場合)は、輸入地の植物検疫支局に申請し、PRAと呼ばれるサンプル検査を受けた上で、植物検疫輸入許可証(Phytosanitary Import Permit、1年間有効)を得て、その上で輸入通関をすることになる。

通達39号に規定されているPRA規制の対象品目は、以下のとおり(病害虫目的の規制であるため、基本的に加工食品は対象とならない)。
・栽培目的で使用される生きた樹木およびその一部
・生鮮果実
・各種の草および草の種
・植物資源に害を与える危険性を持つ有用生物またはその他の生物
・防疫処理を行っていない丸太、用材
・ベトナムでの規制対象となる有害生物が付着している恐れがあるその他の品目

これまでの通達では、PRAにかかる時間が品目によって1〜3年と規定されており、現実的に許容できる期間ではない。また、上記の対象品目の範囲について、HSコードレベルで具体化されているわけではないため、生鮮野菜や加工果実など法令に明記されていない品目がPRA対象になるか否か、判断しづらい。

このため、PRA対象かどうか判断がつかない品目を輸入しようとする場合は、ベトナムの農業農村開発省に対し、輸出国の当局(日本の場合は農林水産省)を通じて確認をすることになる。日本を原産国とする場合、これまでの両国間の確認結果によると、生鮮果実以外の植物由来食品(生鮮野菜、加工野菜、加工果実など)は、おおむねPRA対象外(つまり上記のPRA手続きは不要)と判断されている。対象と判断された品目は以下のとおり。リンゴについてのみ、実際にPRA手続き(分析検査)が進行しており(注)、手続きが終了すれば登録が完了し輸入可能となる。他の対象品目はまだ手続きが開始された実績がない。

○PRAの対象となる品目
イチゴ(生鮮)、ブドウ(生鮮)、柿(生鮮)、リンゴ(生鮮)
○PRA対象外となる品目
レタス(生鮮)、シメジ(生鮮)、製茶(乾燥)、シイタケ(乾燥)、柿チップ(乾燥)

(注)日本の農林水産省ウェブサイト参照。

(近江健司)

(ベトナム)

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