憲法評議会がビスフェノールAの全面的禁止を「違憲」と判断-製造・輸出が可能に、輸入・国内販売は引き続き禁止-
(フランス)
パリ事務所
2015年09月30日
憲法評議会は9月17日、化学物質のビスフェノールAを含む食品容器の使用を全面的に禁止する法律を「違憲」と判断した。決定を受け、9月19日以降、フランスにおけるビスフェノールAを含む食品容器の製造および輸出が可能となった。他方、同容器のフランスへの輸入および市場投入の禁止については「合憲」と判断。ビスフェノールAを含む食品容器の輸入・国内販売は引き続き禁止とされた。
<プラスチック製造業者団体が国務院に提訴>
ビスフェノールAは、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料として使用され、プラスチック容器や缶のコーティングに含まれていることがある。フランス政府は、2015年1月1日付で食品に直接接触するビスフェノールAを含んだ全ての食品の包装、容器、調理器具の製造、輸入、輸出、有償・無償による全ての市場投入を禁止した(2014年12月25日記事参照)。
今回の憲法評議会の決定は、欧州のプラスチック製造業者団体プラスチックス・ヨーロッパが、ビスフェノールAを含む食品容器の全面禁止措置の廃止を求めて、行政訴訟の最高裁判所に相当する国務院に提訴、国務院が6月17日、憲法評議会に合憲性の判断を付託したことによる。プラスチックス・ヨーロッパは「ビスフェノールAを含む食品容器の全面禁止措置は企業活動の自由と権利を認める憲法に抵触する」と主張していた。
憲法評議会は9月17日、輸入・国内販売の禁止について「健康を保護することを考えると、企業活動の自由に対する侵害は過度なものとはいえない」として、全面的禁止の解除を求めるプラスチックス・ヨーロッパの主張を退けた。
他方、製造・輸出の禁止については、「他の多くの国でビスフェノールAを含む食品容器が認可されている。フランスにおける製造・輸出の禁止が他国での販売に影響を及ぼすわけではなく、健康を守るという目的と整合性がない」「ビスフェノールAを含む食品容器の製造・輸出の禁止は企業への影響が大きい」として「違憲」と判断、製造・輸出を許可した。
<EU法に対するフランスの禁止措置の合法性判断が必要に>
ビスフェノールAの食品容器の使用規制に対し、フランスとEUでは考えを異にする。フランス政府は妊婦や胎児に対する健康リスクを考慮し、哺乳瓶へのビスフェノールAを禁止する法律を2010年に制定、2012年12月には、2015年1月から全ての食品容器・包装に対し禁止措置を拡大するよう同法を改正した。
他方、欧州食品安全機関(EFSA)は2015年1月21日、「ビスフェノールAの現在の暴露(exposure)レベルは、耐容一日摂取量を下回るもので消費者への健康のリスクはない」と結論付けている。
その後、この結論を受けた対応を欧州委員会がしていないことから、プラスチックス・ヨーロッパは他の食品・包装関連業界団体とともに2015年6月、「フランスにおけるビスフェノールAを含む食品容器の輸入・国内販売の禁止は、EU域内における自由流通およびEUが定めた食品に接触するプラスチックに関する規制に違反する」として、欧州委に訴えた。これを受け、EUは事前調査に着手した。
国務院は、今回の憲法評議会の決定により改正された法律を再度審議し、EU法との適合性について判断を下す必要がある。プラスチックス・ヨーロッパのミッシェル・ルブリ西欧担当理事は「憲法評議会の決定は第一歩にすぎない。国務院あるいは欧州委の決定によって、フランスの例外措置に対し決定的に終止符を打つべきだ」と述べた。国務院または欧州委が、禁止措置はEU法に適合しないと判断すれば、同措置は廃止に持ち込まれる可能性もある。国務院および欧州委での審議の結果が待たれる。
(奥山直子)
(フランス)
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