2015年に入り計5回の追加関税措置-スマホなども対象の可能性-

(トルコ)

イスタンブール事務所

2015年08月11日

 2015年に入り、トルコ政府が相次いで追加関税措置を実施している。7月までで計5回に上る。対象品目は今後も増える見込みで、スマートフォンやタブレット端末など電子機器も対象とされる可能性が出てきた。追加関税措置の対象が輸入主体の消費財まで拡大されることは、国内販売価格をつり上げることになり、消費者への影響は大きいと予想される。

EUFTA締約国は追加関税の対象外>

 トルコ政府は2015年に入り、追加関税措置を相次いで実施している。その数はこの半年余りで5回に及ぶ(添付資料参照)。以前までは繊維・衣料品や靴(部分品を含む)といったトルコの基幹産業である軽工業が中心で、201112月に繊維・衣料品(部分品を含む)(2012年1月25日記事参照)20148月に靴(部分品を含む、HS64類)に対して2550%の追加関税措置が実施された。

 

 2015年に入ると、トルコが得意とするアパレル産業といった軽工業品目だけでなく、幅広い品目に対して追加関税措置が実施されるようになった。20152月に、卑金属製の工具、道具、刃物など(部分品を含む、HS82)に対し25%の追加関税を課した。さらには、5月に家具・ホームリネン(HS9405)の一部に対して2550%、6月にランプその他の照明器具などと真空掃除機やドライヤーなどの小型家電など(HS85)の一部に対してそれぞれ30%、かばん類(HS4202)に20%の追加関税を課した。

 

 関税同盟を結んでいるEUや自由貿易協定(FTA)締結国〔欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、パレスチナ、モロッコ、イスラエル、韓国、チリ、チュニジア、エジプト、アルバニア、ジョージア、ヨルダン、シリア、セルビア、モンテネグロ、モーリシャス、マレーシア〕は多くの場合、追加関税の対象外とされている。一方、日本や米国に加え、中国も追加関税の対象となっており、さらには一般特恵関税(GSP、トルコ語でGTS)の対象国も課税対象となっている。トルコとFTAや関税同盟を締結していない国・地域のほとんどが追加関税の対象とされているため、日本や中国、ASEAN諸国からトルコへ直接輸出している日系企業への影響は大きいと予想される。

 

<スマホの値上げ予想し駆け込み購入も>

 追加関税措置は、トルコ人に大人気のスマートフォンにも迫る勢いだ。201572日、ニハト・ゼイベクチ経済相は、アンカラで開かれた会見で、スマートフォンやタブレット端末をはじめとした電子機器に対しても数ヵ月以内に追加関税措置を実施すると発表した。ハイテク機器、特にパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどの輸入が、貿易赤字の大きな原因となっているからだという。

 

 現在、多くの電子機器には関税が課されていないものの、付加価値税(VAT18%に加え、特別消費税(SCT25%が課されている。ここに電子機器に対する追加関税が加われば、市場価格はさらにつり上がる。トルコ人はスマートフォンに対する関心が高く、価格が高くて所得に見合わないような価格であっても、ローンを組んで購入しようと考える消費者が後を絶たない。追加関税が課されれば、一般市民への影響は少なくないだろう。既に駆け込み購入も始まっているともいわれている。

 

<トルコ国内の産業界の反応は好意的>

 かばん類の追加課税措置に対して、イスタンブール革製品輸出者団体のムスタファ・シェノジャク会長は地元紙に「追加関税措置はトルコ国内の不平等な競争の削減に寄与し、国内産業の競争力強化と輸出増につながると考えている」と述べた。フットウエア産業協会のヒュセイン・チェティン会長も地元紙に「追加関税措置により、輸入品が高くなるため、トルコの生産者は価格面でメリットがある」と述べ、おおむね好意的だ。

 

 一方、生産における原材料や中間財の輸入依存が高いトルコでは、追加関税により原材料の輸入価格が上がり、生産コストの上昇につながるとして批判の声が上がっていた。トルコブランド連合協会のユルマズ・ユルマズ会頭は「綿織物に対する追加関税は、生産コストを約30%引き上げ、完成品価格を押し上げており、海外ブランドの注文が減っている」と述べている。またイスタンブール既製服衣料品輸出業者組合(IHKIB)のヒクメト・タンベルディ会頭(当時)も、「追加関税は輸出市場におけるトルコの競争力を損なっている」と批判している(「ヒュッリイェト」紙電子版20111223日)。

 

 2011年から2015年前半までに実施された追加関税措置の対象品目は、トルコの基幹産業である軽工業産業をはじめ、幅広い産業が対象となっているようだ。トルコ政府としても政治基盤強化のため、国内産業強化に資する政策を今後さらに打ち出していく可能性も高い。一連の措置のほとんどは、即日発効された。今後の動向に注意が必要だ。

 

(廣田純子)

(トルコ)

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