繊維製品などに対する追加関税が発効

(トルコ)

イスタンブール発

2012年01月25日

2011年9月15日に発表された繊維製品と衣料品に対する輸入追加関税措置が、同年12月14日付官報で発効した。一部の対象品目は9月の段階で発効済みだったが、今回は亜麻織物、不織布、メリヤス編、下着、乳児用衣類、ベッドリネンの輸入関税率が14〜30%上乗せされた。経常赤字対策の一環として政府が実施した輸入繊維製品と衣料品に対する増税は、輸出にも悪影響を及ぼしているとの批判もある。

<経常赤字抑制策の一環>
政府は、11年9月15日付官報28055号(Decision Number:2011/2203)Article5、6で、同年3月24日付官報27884号による繊維製品と衣料品に対する追加関税措置の改訂を公布した。追加課税対象商品は2つのリストに分けられ、リスト1は男性・女性用アパレル製品、紡毛織物、綿織物、合成繊維、リスト2は亜麻織物、不織布、メリヤス編、下着、乳児用衣類、ベッドリネンなど。

課税率は国ごとに4つのグループに分けられ、EU諸国、イスラエル、ヨルダン、モロッコ、シリア、チュニジア、パレスチナ、チリなど自由貿易協定(FTA)発効国は課税対象外。一方、日本は最大の課税対象国・地域となる中国、台湾を含む「その他の国」に分類されている。

「その他の国」のリスト1の税率は、紡毛織物、綿織物、合成繊維などが20%、男性・女性用アパレル製品が30%で、9月15日の公布と同時に発効した。今回はリスト2の亜麻織物、不織布、メリヤス編、下着、乳児用衣類、ベッドリネンについて12月14日付官報28142号(Decision Number:2011/2516)で発効した。追加税率は14〜30%で、基本税率に付加される。おおむね繊維がプラス20%、既製服がプラス30%となった。また、1キロごとに最低・最高税額も決められている。

好調が続くトルコ経済の柔らかな脇腹といわれる経常赤字問題を改善するため、政府は主因の貿易赤字を減らし、輸入を抑える数々の対策をとっている。例えば、11年10月に自動車、アルコール飲料、たばこ、携帯電話に対する特別消費税(SCT、トルコ語ではOTV)を引き上げて自動車などの輸入を抑制し(2011年10月21日記事参照)、また関連してRUSF(Resource Utilisation Support Fund、注)の率を3%から6%に引き上げた。

また現在、中銀は進みすぎたリラ安抑制に転じているが、当初はリラ安誘導によって輸入を抑え、輸出を増加させる動きをみせていた。繊維製品と衣料品に関しても、同年3月末に20〜30%の輸入税増税が公布され、7〜9月の3ヵ月間実施されていた。

<業界の反応は二分>
イスタンブール既製服衣料品輸出業者組合(IHKIB)のヒクメト・タンルベルディ会頭は、海外からの繊維と衣料品に対する増税が産業全体に深刻な影響をもたらしていると批判した。また、政府の不完全な対策は、懸案の経常赤字の低下に寄与してもおらず、保護貿易主義は繊維産業全体の輸出の相当な低下にもつながっていると主張した。

トルコのブランド連合協会によると、衣料品の生産コストの55%を占める綿織物に対する20%の追加税率は、生産コストを約30%引き上げ、完成品価格を押し上げており、海外ブランドの注文が減り始めている。11年の既製服輸出は、1〜8月まで前年同月比で2ケタ上昇が続いており、前年同期比でも19.1%増と好調だった。しかし、9月に前年同月比1.8%減に転じ、10月2.4%減、11月3.2%減と著しい落ち込みがみられる(ITKIB)。業界からは追加税の悪影響は7億ドル相当に達するとの声もある。

一方、一部の生産者側には正反対の反応がみられる。これまで低価格の輸入原料布やそのほかの輸入品の影響で競争力を失い、縮小、閉鎖を余儀なくされていた縫製工場や衣料生産工場が好調に転じ、この分野の就職率が9%増加したという指摘がある。

衣料品大手サンコ・グループ創設者のアブデュルカディル・コヌクオウル氏は、国内市場に廉価商品を持ち込む輸入業者を除けば、再輸出のための原料輸入で問題を抱えている企業はないと述べた。同氏は、このような輸入業者は業界全体のわずか10%にすぎないとし、布と糸の低コストを国内向け完成品に反映できなかった企業が、大きな利益を得ようとして大騒ぎしていると反発している。

(注)RUSFは、輸入時に前払いではなく、輸入者が商品受領後1年未満に輸出者に商品代金を支払う(後払い)場合は、インボイス価格の6%が徴収される。

(中島敏博)

(トルコ)

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