国民投票で反緊縮派が多数、EU側の動向に注目

(ギリシャ、EU、ユーロ圏)

ブリュッセル事務所

2015年07月06日

 ユーロ圏を中心とする国際債権団からの財政緊縮案受け入れの是非を問うギリシャの国民投票が7月5日に実施され、即日開票の結果、「受け入れ反対」が61%を占めた。ユーロ圏内でもEU懐疑派からはこの結果を歓迎する声が出ているが、ギリシャへの金融支援を担ってきた欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は、国民投票直前に「ギリシャはデフォルト状態」と宣告している。7月20日の欧州中央銀行(ECB)に対する大口国債償還期限を控え、ギリシャ政府に警告を発してきたユーロ圏財務相会合(ユーログループ)などEU側の動向に注目が集まる。

<ユーロ圏首脳会議を招集へ、今後の対応を協議>

 今回の国民投票の結果を受け、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は自らのツイッターで、「ギリシャでの国民投票後の状況を論議するため、火曜日(77日)の夕刻にユーロ圏首脳会議を招集する」と発表した。

 

 その後、欧州委員会も「ギリシャでの国民投票の結果に留意し、尊重する。ジャン・クロード・ユンケル委員長は(ギリシャを除く)ユーロ圏18ヵ国の首脳や国際機関(IMFECBなどの債権団)とも今夜および明日(76日)、協議する」とする短い書簡(75日付)を発表した。EU側がどのような姿勢で、首脳会議に臨むかが注目される。

 

EU懐疑派は国民投票の結果を歓迎>

 一方、フランスの極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首は、「受け入れ反対」の優勢が伝えられた段階で、「今回のギリシャでの(緊縮策)反対は民主主義の素晴らしく、偉大な教訓だ」と、自らのツイッターで語った。

 

 また、スペインの急進左派政党「ポデモス」のパブロ・イグレシアス党首も、「今日、ギリシャで民主主義が勝利した」とツイッターで表明した。イグレシアス党首は、EUが求める財政緊縮策に対する反対で、ギリシャのアレクシス・ツィプラス首相に近いとされる。さらに過激なコメントをツイッターで発信したのが、英国のEU離脱を主導する英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首で、「EUの企みは死にかけている。ブリュッセルから仕掛けられた政治・経済的な『いじめ』に直面しながらも、ギリシャの人々が示した勇気を見ると晴れ晴れする」と、EUの緊縮案受け入れ要求を皮肉った。

 

 それぞれ政治的な立場は異なるが、これらの政治勢力はEUやユーロ圏に対して懐疑的な立場という点では一致しており、今回のギリシャの国民投票の結果を受けて、こうした政治勢力の連携の動きも注目されている。

 

<ギリシャ政府は危機感が欠如との批判も>

 IMFは(630日が期限だった)ギリシャの債務未払いについて、「延滞」という表現を用いてきたが、ギリシャに対する金融支援を担ってきたEFSF(2015年7月3日記事参照)は、73日付発表の中で、これを改め、「ギリシャの債務未払いについては、IMF専務理事が理事会に対して通告した段階で、債務不履行(デフォルト)が確定している」と明言し、「債権者として、ギリシャで起こることの帰趨(きすう)を注視しながら、対応を判断する」とした。EFSFのクラウス・レーグリング最高経営責任者(CEO)は「EFSFはギリシャに対する最大の債権者であり、ギリシャがデフォルト入りしたことを憂慮している。今回のデフォルトはギリシャがこれまで全ての債権者に果たすと約束してきた債務についてのコミットメントをほごにするものだ。それと同時に、ギリシャ経済・国民に深刻な結果をもたらすことになる」と警告した。

 

 また、ギリシャの日刊紙「イ・カシメリニ」(電子版75日)は、「349,000万ユーロものECBなどユーロ圏金融システムに対する債務返済期日が720日に迫っている」「これに続く32億ユーロの債務履行期日が820日にも控えている」「(にもかかわらず)政府内部の一部は、(ECBなどユーロ圏金融システムが)ギリシャ国債を買い上げたのはユーロ圏の民間銀行を救済するためで、ギリシャを支援するためではないとの論拠で、これらの債務を『不当債務(Odious debt)』と呼んでいる」と指摘、ギリシャ政府の危機感の欠如を批判した。

 

(前田篤穂)

(ギリシャ、EU、ユーロ圏)

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