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並行輸入品対策にはまず税関への商標登録を−モスクワで知財セミナー開催(3)−

(ロシア)

モスクワ事務所

2015年02月25日

ロシアで消費財を販売する多くの日系企業は並行輸入品対策に力を入れている。連載最終回は、並行輸入に関する最近の動向と対策について。弁護士事務所ゴロジスキー・アンド・パートナーズのアントン・メリニコフ弁護士は、並行輸入品対策には、商標の税関への登録が何より重要だという。

<権利者は通知から20日以内に対応義務>
「並行輸入」とは、正式な商標が付いているが、商標権を持つ外国のメーカーまたは輸出者から輸入販売に関する正式な許諾なく行われる輸入のこと。並行輸入には民事責任が発生し、輸入業者だけでなく、販売業者も権利侵害の対象となる。権利者による並行輸入対策はまず、税関に商標を登録することだ。登録されれば保護のレベルが上がり、税関からさまざまな支援を受けることができる。

税関への登録があれば、税関当局は国境で貨物のリリースを差し止める権限を有する。(登録されていなくても)税関職員は職権で差し止めすることができる。

登録された時点から、税関当局は疑わしい貨物の通関手続きを差し止めて、権利者に通知する義務が発生する。差し止め期間は10日で、通知を受けた権利者はさらに10日間の延長期間を含めて最長20日以内に対応する義務がある。まずは税関に対して、本案件を差し止めてほしいか否かを通知し、差し止める場合には、権利者が民事裁判を起こすことが必要となる。提訴に当たっては、苦情申し立て、暫定救済の申請、商品押収の執行令状の取得、執行官への令状の送付などが要求されるため、迅速な対応が求められる。

税関登録には、a.ライセンス契約書または販売契約書、b.対象商品の輸入を許可された輸入業者のリスト、c.真正品・模倣品を見分ける方法などが必要だ。関税同盟の下で統一税関登録簿を作成しようという動きもある。もし統一登録簿が創設されれば、ある国で登録すれば、ほかの加盟国にも登録されることとなり、模倣品対策の効率性が高まる。統一登録簿の創設に向けた法整備が進められている。

<法的手段は民事訴訟のみ有効>
並行輸入に対する法的手段は民事訴訟のみ有効となっている。民事訴訟を起こす場合は、税関で疑わしい商品が差し止められ、権利者への通知が行われた後、権利者が証拠を収集し、訴訟および暫定救済の出願書を作成し、裁判所に提出する流れとなる。権利者が原告、輸入業者は被告、税関当局は第三者となる。裁判所の判決には、商品の持ち込み禁止、商品の廃棄処分、補償金の支払いがある。

並行輸入の適法・違法性は裁判でのみ判断される。2010年以降の民事訴訟では、権利者が勝訴する判決が続いている(表参照)。並行輸入された商品が廃棄されることもある。その場合、輸入者は多額の損失を被ることになるので、同じ行為を繰り返さない教訓ともなる。廃棄に際して執行官が作成する廃棄報告書には、場所と時間、廃棄に関する法的根拠、数量、商品内容、商品価格が記載されている。

最近の並行輸入に関する紛争案件と結果

暫定救済措置としては、輸入された商品の押収、リリース・再輸出の禁止、ほかの事業者への引き渡しの禁止がある。暫定救済措置については、早期の対応が重要となる。商品が流通に回されれば、裁判所の判決を執行できなくなる可能性があるためだ。裁判が終了するまでに権利者は商品押収の必要性の根拠を示して、流通に回された商品を押収する必要がある。根拠収集については、税関に商標登録していれば多くの証拠を得ることができる。

<和解は権利者にもメリット>
並行輸入紛争では和解となる場合が多い。民事訴訟で訴えられた輸入者が、権利者から輸入販売に合意していることの証明書を取得しようとしても事実上不可能だ。また権利者にとっても和解は、立証にかかる負担の軽減や、一定の補償を得られるメリットがある。和解においては、商品の引き渡し、裁判費用の償還、補償金の支払い、商標を使用しない義務などについて合意するのが一般的だ。

賠償と補償については、損害賠償の場合、権利者が実際の損害(逸失利益)を証明する必要があるが、補償金については裁判所の判断で、11万ドル以下、商標が違法に使用された商品価格の2倍、商標権使用価格の2倍、のいずれかで決めることができる。次に補償額をどのように決めるのかが問題となる。ウラジオストクでの裁判では、根拠とされたのは商品が市場で一般的に販売される価格だったが、カリーニングラードやサンクトペテルブルクでの裁判では、当該商品そのものの価格が根拠となった。前者の裁判では、市場価格を元にして価格を決定したが、裁判所が下方修正を行ったため、要求が部分的にしか認められなかった。後者の裁判では、権利者の要求どおり商品価格の2倍が補償額として認められた。輸入者が税関申告価格を自ら提示し、裁判所がこれを認めたためだ。

並行輸入への対抗措置については、まず水際で止めることが重要で、税関への登録が不可欠だ。ロシア国内に流入してしまったものについては、a.証拠を収集すること(インターネット販売の場合は公証人の起用が必要。公証人を通じて商品を購入し、ウェブサイトの所有者を特定することができる)、b. 販売をやめるよう要請する侵害停止要求書(Cease & Desist Letter)を販売者に送付すること、c.民事訴訟を起こし、販売者に対して補償金支払いを要求すること、などがある。自社の流通販売先への協力要請も重要だ。大手チェーンストアの場合、並行輸入品の取り扱いについて通知すれば、評判の低下や補償金支払いのリスクを避けるために取り扱いをやめる可能性があるからだ。

(齋藤寛)

(ロシア)

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