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知財裁判での専門家の活用を検討−日本とドイツの有識者招き会合開催−

(ロシア)

モスクワ事務所・デュッセルドルフ事務所

2015年01月19日

技術の多様化と複雑化が進む知的財産権分野の裁判では、特定分野の技術的知識を有した専門家の参画が求められており、どのような専門家が裁判所に採用されるかは当事者、関係者の関心事となっている。設立されて間もないロシア知的財産裁判所は2014年12月1日、技術専門家の活用に関して日本とドイツの経験を学ぶために、初めて両国から有識者を招き、「知財裁判における技術専門家の活用」をテーマとする会合をモスクワで開催した。ロシア知財裁判所長官は外部の技術専門家の活用を検討していることを明らかにした。

<ロシアでは知識持つ裁判官の採用がメーン>
ロシアの裁判所での知財紛争においては近年、技術的知識の要求が高まっており、知財裁判所の設立理由の1つにも、裁判に技術分野の専門知識が求められていたことがある(2014年11月19日記事参照)。この問題の解決方法としては、(1)技術的知識を持った裁判官の採用、(2)裁判所職員の活用、(3)専門的知識を有する外部専門家の活用、の3つがある。

これらのうち、ドイツの連邦特許裁判所は(1)を基本的に採用しており、合議体は法律判事と技術判事で構成され、技術判事には特許庁審査官出身者などが採用されている。日本は(2)で、知財高等裁判所の判事の多くは一般裁判所の判事と同じく法学のバックグラウンドのみを持つ判事であるため、専門委員のほか、判事を補佐する裁判所調査官の役割が極めて大きい。調査官には特許庁審判官出身者と弁理士が採用されている。ロシアは(1)がメーンだが、(2)や(3)の方法にも取り組んでいる。

ロシア知財裁判所のリュドミラ・ノボセロワ長官によると、(1)の外部専門家の活用の場合、専門家の発掘が大変だという。これまでは案件に応じて個人的なネットワークで探してきたが、どの機関にどのような専門家がいるのか分からないため、専門家情報が登録されたデータベースの作成を進めているという。

さまざまな分野の専門家による鑑定を可能にするため、大学や研究機関との契約を進めており、現在、バウマン記念モスクワ国立工科大学と協議を進めているという。他方、専門家にとっては、裁判で専門的知見を述べることを責任が重過ぎると感じ、大きなストレスになることが多い。まず、この認識を改める啓発活動を行っているという。

<専門家には低過ぎる報酬>
専門家採用の際には守秘義務契約を結び、連邦予算で賄う有償の役務依頼をする。1万ルーブル(約1万8,000円、1ルーブル=約1.8円)が上限となっているが、多忙な専門家が裁判で公正な意見を述べるには報酬額が低過ぎるとノボセロワ長官は話す。

専門家による鑑定の導入についてはマイナス面もあり、a.複雑な案件の場合、審理が長期化すること、b.鑑定に疑義が生じた場合は別の裁判の結果に影響を及ぼす可能性があること、c.専門家の判断は影響力が大きく、専門家が決まった時点で裁判が事実上決してしまう恐れがあること、などをノボセロワ長官は指摘。これらの懸念に関しては、専門家による鑑定はあくまでも参考意見であり、裁判官が判決のベースとなる知識を得るプロセスにすぎない、という姿勢を取っているという。

また、裁判所職員としての専門家の採用も行う場合は、裁判官補佐として、国家公務員と同じ待遇となる。15人のスタッフを採用する予定で、現時点で2人を採用済み。ノボセロワ長官は問題として、a.給与や待遇、雇用条件を国家公務員と同じ水準にしなくてはならず、専門的知見を有する外部専門家に見合う給与を出せないこと、b.兼業の禁止など活動に制約があること、c.日中の時間を裁判所業務に充てないといけないこと、d.毎日出勤しないといけないこと、などを挙げた。他方で、国家機関同士の人事交流によって、専門的知識を有する公務員を獲得するという方法も進めているという。その場合、当該公務員の知識が偏っていないか、幅広い分野に対応可能か、という調査が必要となる。

(齋藤寛、田名部拓也)

(ロシア)

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