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権利侵害品対策には税関への登録が有効−知財関連機関に聞く(3)−

(ロシア)

モスクワ事務所

2014年11月20日

知的財産権対象物の権利侵害品の流入を水際で食い止めているのは連邦税関局だ。同局は、権利侵害品の実効性ある取り締まりのため税関登録簿を作成している。年々悪質化の一途をたどる模倣品に関しては、人材育成に力を入れ、取り締まり能力を向上させている。インタビューシリーズの3回目は連邦税関局。

<登録の多くは外国の商標>
連邦税関局の対策について、アシュルコフ知的財産製品管理課課長代理、ベロフ同課主任税関検査官、タラソワ・ビジネス協力・海外投資ユニット上級税関検査官に聞いた(9月30日)。

連邦税関局の組織は最上部に中央機構があり、その下に、地方税関、税関支署、税関ポストというかたちになっている。知的財産権分野への関与に関しては、WTO、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)のほか、関税基本法、税関制度に関する国内連邦法、関税同盟の法規を国内法化した法規にのっとっている。保護対象は、商標、著作権などに限られている。

知財保護に向けた方策で、効率が良く、実効性のあるのは税関登録簿への登録だ。現在の登録数は3,396件。大多数は商標で、外国の権利者のものが過半を占めている。商標侵害に対しては、税関当局の権限で取り締まりや差し止めを行っている。権利者が商標侵害を発見した場合には、連邦税関局に対して取り締まりを依頼することもできる。登録手続きが済めば、地方の税関に通知され、取り締まり活動が開始される。

侵害の可能性がある場合、通関の差し止めを行ってから10日以内に、税関が権利者に対して差し止め理由を含めた連絡を入れている。その後、10日以内に権利者が貨物の通関手続きをやめるか、税関に対して訴訟を起こすことができる。登録されていないものに関しても、税関職員には職務上の差し止め権限が付与されている。自らの判断で、7日以内の保留が可能と定められている。

登録の対象範囲拡大について具体的な計画はないが、「2020年までの税関サービスの基本戦略」には保護対象分野の拡大が明記されているため、まずは意匠を対象にしたいと考えている。また基本戦略には、権利者とのやり取りの簡素化、迅速化を目指すオンライン化が明記されている。いつ差し止めが行われたかなどを全てオンラインで確認できるようになるとともに、権利者のアカウントを管理し、連絡を取る方法が検討されている。

<職権での差し止めはあまり機能せず>
模倣品については、2013年に940万個、2014年にはこれまで570万個が摘発されている。差し止めの結果、防ぐことができた損害は2013年が1億4,600万ドル、2014年上半期では3,900万ドルだった。行政法違反については2013年に1,988件の摘発があり、2014年はこれまでに580件の行政訴訟が行われている。うち565件が他社商標の無断使用に関するものだ。

税関職員の職権での差し止めについては、効率良く実施できていない。登録されていないものを差し止めた場合、権利者の反応があまりないためだ。権利者と連絡が取れないことや権利者が見つかったとしてもあまり関心を示さない場合もある。もちろん、権利者が反応を示し、訴訟を起してよいか尋ねてくる場合もあるが、数は少ない。なお、ロシアと関税同盟を構成するカザフスタンの税関にはロシアと同様の職権上の差し止め権限が付与されているが、ベラルーシにはない。今後は、法規の上で統一される予定だ。

権利侵害が見つかった場合の権利者への通知方法としては、差し止めが発生した場合、権利者に対してその事実を伝え、登録されている商標に関して何個の商品がいつ差し止めになったのか、容疑者の社名、連絡先、輸出業者の情報を知らせる。通知内容は連邦法に定められており、通知の際には同様の案件で税関がどのように対応したか、損害賠償額は幾らになったか、という情報も提供することになっている。当該情報は権利者に対して、訴訟の提起を助けるものだ。

税関が摘発しやすくするためには、例えば自動車部品の場合、商品に記載されている番号のどれが有効なのか、部品についている番号の最初の3桁について、真正品と模倣品ではどう違うのかといった情報が役に立つ。

<税関に非協力的な権利者も>
登録簿からの削除の実績はまだない。しかし最近の傾向として、特に自動車部品の模倣品の輸入を行っている業者から、真正品の権利者の削除要求がしばしば寄せられる。裁判も行われている。権利を侵害している業者が、権利者の登録を削除しようという動きをみせているのだ。

税関としては、権利者の対応に不満足な時もある。権利者がオブザーバーにとどまって、積極的に裁判に参加せず、税関が1人で争っている状況が散見されるためだ。権利者が非協力的だったり、通知の結果、貨物のリリース指示が多い場合でも、権利者に対して不利に働くことはない。しかし、権利者があまり積極的でない場合は、権利登録が切れる2年後に税関局が登録の可否を判断する際、権利者側の努力について1件1件の通知への対応状況を詳しく尋ねることとなる。権利者が登録を拒絶することは、理論上はあり得るが、実際にはそのようなケースはない。

<模倣品流入は海上ルートが中心>
模倣品の発生国は中国、東南アジア、ポーランドが多い。日本からの模倣品は聞いたことがない。流入ルートとしては、鉄道の場合は中国東北部との国境であるザバイカリスクで摘発されるケースが多い。海上ルートが模倣品の輸送手段として最も多く、サンクトペテルブルクで摘発されるケースが大部分を占める。ウラジオストクでも、中国や韓国から入る貨物に模倣品が見つかることが多い。黒海に面したオデッサ港経由で、ウクライナからロシアに入るものもある。

ロシア、ベラルーシ、カザフスタンで構成される関税同盟では、域内の税関境界線がないため、中国からの模倣品がキルギス経由でカザフスタンに流れ、カザフスタンからロシアに流入するケースも少なくない。この場合でも摘発に関する法的基盤はある。税関に対しては定期的な監査があり、通関後の貨物についても定期的にモニタリングを行っているため、それが摘発につながることもある。他方、税関が模倣品を仮に通関してしまっても行政責任とはならないと規定されている。従って、並行輸入および模倣品が通過した場合は、権利者が民事訴訟を提起し解決を図ることとなる。模倣品の場合、権利者が勝訴するという傾向が続いている。

近年、模倣品の流入手口は悪質化の一途をたどっている。例えば、ドバイの業者が部品の梱包(こんぽう)を複雑に組み合わせ、税関職員が梱包された部品の山の1つでも抜き打ち検査を行うと梱包が崩れるようにして、税関職員に対し、梱包を崩して破損させたとして責任を取らせるという手口がはびこっている。

<摘発強化に向け人材育成に注力>
権利侵害品の取り締まり強化に向けては、人材育成に力を入れている。地方税関レベルで経験を共有するためのセミナーを毎年実施している。セミナーには、産業別、分野別に権利者の代表を招き、真贋(しんがん)の見分け方を講演してもらっている。また、ロシア国内で発生している問題や、模倣品の巧妙さについても情報交換を行っている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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