政府はリベリア、シエラレオネ、ギニアからの入国を当面禁止−エボラ出血熱の発生防止に向けて対策を強化−
ナイロビ事務所
2014年09月02日
西アフリカでエボラ出血熱が流行している状況を受け、ケニアへの流入を防ぐために政府は航空会社と連携しながら各種対策を進めている。その一環で、エボラ出血熱の感染が確認されているリベリア、シエラレオネへのケニア航空の便を8月19日から運休するとともに、ギニアからの入国も当面禁止し、国際空港や国境付近での検査を強化している。
<空港や国境付近では水際対策を強化>
ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの西アフリカを中心にエボラ出血熱が流行していることを受け、ケニア政府は国内での感染者の発生を防ぐため各種対策を講じている。
保健省が中心となり、警察、空港公社、ケニア医学研究所(KEMRI)、ケニア航空、国際機関などから構成されるタスクフォースを設置した。主な内容は以下のとおり。
(1)医療従事者への情報提供と段階に応じた活動指針の提示
(2)医療従事者への訓練の実施
(3)国民に向けた啓発キャンペーンの実施
(4)中央政府と郡政府の連携
(5)国境での検査強化
空の玄関口ジョモケニヤッタ国際空港(JKIA)では、水際対策としてルワンダ航空やアフリカ中に広く運航しているエチオピア航空の搭乗客に対して、他社便とは別の到着ゲートからの入国、問診票の記入とセンサーによる体温検査を実施している。感染が疑われる乗客は空港内の待機室に収容し、感染者は隔離病棟が設置されているケニヤッタ国立病院もしくはムバガチ病院に搬送・収容する方針。KEMRIでは感染者に対応できるよう訓練が実施されており、他の国内主要都市でも隔離病棟の設置を進めている。これまでにウガンダなどから乗り継ぎでナイロビに到着した複数の乗客に感染の疑いがあったが、KEMRIなどでの検査の結果、陰性と判明した。
ケニア第2の都市モンバサのモイ国際空港でも、エチオピア航空とルワンダ航空などの搭乗客に対してスクリーニングを開始した。
陸路でのケニア入国に際しても、タンザニアに隣接するナマンガやウガンダに接するマラバなど国境の町には検査キットが用意されており、主にトラックの運転手に対して検査を実施している。
<ケニア航空は感染2ヵ国への運航を休止>
ケニア航空はJKIAから感染国3ヵ国を含む西アフリカ10都市に週44便運航している。エチオピア航空、ルワンダ航空などを含めるとJKIAから西アフリカの都市には週76便が運航している。世界保健機関(WHO)は、JKIAがアフリカのハブ空港の1つであることなどから、ケニアがエボラ出血熱の脅威にさらされているとの見解を表明した。
しかし、ケニア航空とケニア政府はエボラ出血熱発生のリスクは低いとして、西アフリカへのフライトを通常どおり続けていた。それに対して、ケニア議会や医師会などは、同航空が国民の生命より自社の利益を優先していると批判し、感染国への運航を休止するようケニア航空に要望していた。このため、ケニア政府はリベリアへの医療調査団の派遣などを踏まえて、ケニア航空のリベリア、シエラレオネ便を8月19日から運休するとともに、両国およびギニアからの入国を当面禁止すると発表した。各方面からの相次ぐ批判と要望を受け、重い腰を上げた格好だ。
しかしケニア消費者連盟(COFEK)は、ケニア航空の全てのエボラ発生国およびガーナ便の運休を求めて高等裁判所に申し立てを行う構えをみせており、今後さらなる減便の可能性も想定される。
<観光業など経済への影響も懸念>
当地のビジネス活動では、日本からケニアへの出張取りやめなどが多少発生しているものの、今のところ大きな影響は出ていない。しかし、大韓航空は8月20日からナイロビ〜仁川の直行便を運休しており、ケニア航空の乗り継ぎ便への影響も懸念される。観光客の減少も危惧されている。感染国以外の東アフリカでも旅行客のキャンセルなどが発生しており、ケニアでは沿岸地域を中心に治安の悪化で打撃を受けていた観光業に追い打ちをかけかねない状況だ(2014年6月4日記事参照)。
また、アフリカ域内の流通が制限されることで、貿易の減少にまで影響を及ぼすのではないかと懸念されている。議会などからはJKIAや国境での検査体制や対策が不十分として、定期的に状況を報告するよう政府に求めており、政府および関係機関の危機管理能力が問われている。
(小松崎宏之)
(ケニア)
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