中古機械・設備の輸入規制の実施を停止−当面の影響は回避−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年09月01日

科学技術省は、9月1日に施行の予定だった同省通達「中古機械・設備・生産ラインの輸入に関する通達20/2014/TT−BKHCN号」(以下:通達20号)の効力を停止した。これにより、当面の影響は回避された。

<8月の政府定例会合で決定>
科学技術省は8月29日、大臣決定2279/QD−BKHCNにより、通達20号の効力を9月1日から停止すると発表した。グエン・タン・ズン首相は、8月27〜28日に開催された政府定例会合において、通達20号には実施不可能な規定があり、追加の意見を聴取し検討する必要があるとして、科学技術省から出された通達の実施を停止する提案を了承した。ズン首相は「国民および企業の立場に立って、実施可能性のある規定を検討すべきだ」と述べている。

<通達の公布直後から大きな波紋>
通達20号では、主要な中古機械・設備は、使用期間が5年以内で、新品の80%以上の品質であることが輸入の条件と定められていた(2014年7月30日記事参照)。日系製造業がベトナムへの新規投資を行う場合や、ベトナム国内での生産拡張、他国からの生産移管を行う場合には、日本の本社や他の海外拠点から中古機械・設備を輸入することが一般的だ。また、既に投資証明書を取得しており、中古機械・設備の導入を前提に生産準備あるいは生産開始している企業については、投資計画変更も余儀なくされる。日本製のように性能の優れた機械・設備を導入する場合は、通常10〜15年程度使用したものを持ち込むのが一般的だ。実際、当地進出の日系機械メーカーからは、「当社では中古設備導入を含めた追加投資ライセンスを4月に取得し、準備を進めていた。導入予定の中古設備は大半が10年以上使用しているもので、通達が予定どおり施行された場合には、投資計画を根本的に見直さなければならなくなる」との意見が出された。

このように、同通達が公布された7月15日から、当地進出日系企業のみならず進出を検討している日本国内の企業から、ジェトロやベトナム日本商工会(JBAV)などに問い合わせや事業活動への影響を懸念する声が数多く寄せられていた。こうした声は、ベトナムで操業する他の外資系企業や地場企業からも出ている。2013年にノキアを買収し携帯電話事業を中国からベトナムへ生産移管する計画の米国マイクロソフトが、本通達の適用対象から除外するよう科学技術省などに要請したほか、ベトナム国内の業界団体や中古機械輸入業者なども同省に要望書を提出するなど、先行きを懸念する見方が多かった。

<施行延期に向けベトナム側に働き掛け>
JBAVでは、日本大使館やジェトロなどの政府関係機関と連携し、科学技術省や計画投資省などと再三にわたり交渉を重ねてきた。8月19日には、同通達を公布した科学技術省に対し、本通達の施行の延期と、通達の内容を企業が具体的に確認できるよう窓口の設置を求める文書を送付した。

こうしたベトナム国内での働き掛けに加え、8月18〜23日にベトナム計画投資省の投資誘致ミッションが訪日した際には、日本経済団体連合会、日本商工会議所といった経済団体やジェトロなどから同通達実施に関する日本企業の懸念・要望などをベトナム側に伝えていた。これを受け、同22日に東京で開催された「ベトナム投資促進セミナー(農業関連分野)」(主催:ベトナム計画投資省、共催:ジェトロ、在日ベトナム大使館、三菱東京UFJ銀行)において、グエン・バン・チュン計画投資副大臣が、首相や科学技術相への働き掛けを行うことを示唆していた。

今回の効力停止により、当面の影響は回避されたものの、廃止となったわけではないため、規制が実施される可能性は残されたままだ。今後も引き続き、ベトナム政府の対応を注視していく必要がある。

(竹内直生)

(ベトナム)

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