ウラジオストクに工業生産型特区を設置へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2014年09月01日

政府は8月18日、沿海地方のウラジオストクに工業生産型特別経済区の設置を承認した。特区の設置は政府が推進する極東地域発展政策の一環。特区には進出日系企業も入ると見込まれている。

<極東発展政策の1つと位置付け>
ウラジオストクの特区は全国で7番目の工業生産型特区となる。特区敷地内では電力・ガス・水道・物流関係のインフラが整備される。入居企業は、企業利潤税(法人税)、関税、付加価値税、資産税、輸送税、従業員の社会保険料などの減免や、行政手続きのワンストップサービスを受けられる。税などの具体的な減免額は地方政府が決定する。

設置の承認文書である「2014年8月18日付連邦政府決定第822号」によると、特区の整備のため、沿海地方政府の予算から少なくとも3億ルーブル(約8億4,000万円、1ルーブル=約2.8円)、連邦政府予算から2015〜2017年に最大53億6,500万ルーブルが拠出される予定。特区の具体的な対象地域は今後、経済発展省、沿海地方政府、ウラジオストク市政府の合意に基づいて決められる。

メドベージェフ首相は8月18日に行われた4人の副首相との会合で、「(特区設置の)決定は、政府の優先的事項である極東地域発展政策の1つ」と述べた。ユーリ・トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表は、「特区によって3,400人の雇用が創出され、10年間で300億ルーブルの税収増が見込める」と応えた。

沿海地方政府の記者発表(8月21日)によると、特区の主な入居者として挙げられているのは、2012年からマツダ車を組み立てているマツダと地場企業ソレルスの合弁企業マツダ・ソレルス・マニュファクチャリング・ルス、物流会社のパシフィック・ロジスティックスの2社。特区内のインフラ整備は2016年に完了する予定とされている。

<2011年設置の観光特区は廃止の方向>
この一方で、2011年にウラジオストクのルースキー島に設置された観光レクリエーション型特区、2010年にムルマンスク州に設置された港湾型特区を廃止する法案が準備されている。ウラジオストクの観光型特区では、開発予算額も決められず、進捗ははかばかしくなかった(2010年4月13日記事8月31日記事参照)。ムルマンスクの港湾型特区も、地元関係者の間で実現に疑念が生じていた(2013年11月25日記事参照)

極東地域ではこのほかの発展政策として、「優先的発展地域」を設ける動きがある。極東発展省が作成した同地域に関する法案によると、極東連邦管区の指定地域内の事業者に対して、生産目的での輸入にかかる付加価値税の免除、企業利潤税の減税、社会保険料の軽減、通関や土地取引・開発などに係る手続きの簡素化などの優遇措置が提供される。

アレクサンドル・ガルシカ極東発展相は、同法案を可決させた後、2015年から優先的発展地域を稼働させることを目指している(「ゾロトイ・ログ」紙8月12日)。沿海地方では、a.ミハイロフスク自治区(ウスリースク市から20キロ)、b.ナデジンスク自治区(アルチョム市から15キロ)、c.パルチザンスク自治区(ナホトカ市から35キロ)、d.ルースキー島(ウラジオストク市)、e.ザルビノ港(ウラジオストクから80キロ)の5つの地域が優先的発展地域として見込まれている。

(浅元薫哉)

(ロシア)

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