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模倣品などの権利侵害、訴訟で罰金や商品の廃棄が可能−ロシア知的財産権セミナー(3)−

(カザフスタン、ロシア、ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2014年08月06日

ロシアでは税関に商標などを登録し、水際で模倣品を取り締まる対策が可能だ。関税同盟でも統一の登録簿が2015年に導入される予定だ。また、権利者による訴訟で解決する方法もあり、侵害者に対して罰金や商品の廃棄を命じる厳しい判決も出ている。ロシア知的財産権セミナー報告の最終回。

<税関への登録簿を基に水際で取り締まり>
在札幌ロシア連邦総領事館のデニス・ペトロパブロフスキー3等書記官(ロシア連邦税関局から出向)は、ロシアにおける税関の水際対策について以下のように講演した。

ロシアの通関規則に関する連邦法には、水際で商品の商標権や著作権などを保護するため権利者からの申請に基づき、a.権利者の情報、b.知的財産対象物に関する情報、c.製品に関する情報、d.税関による輸入差し止め措置の行使を希望する期間、などを登録できる登録簿がある。これらの情報を基に、税関が模倣品の疑いのある商品を水際で摘発する。

登録された情報は、全国の500を超える税関の支署にも伝達されるほか、連邦税関局のウェブサイトでも公表される。

登録数は増加しており、2014年6月2日時点で3,187件に上る。有名ブランドの多くが登録されている。以前は外国ブランドの登録が多かったが、ロシアブランドの登録も増え、全体の6割を占める。日本ブランドは3%程度。品目別では、アルコール飲料、菓子類、スポーツ用品が多いが、ディズニー映画の著作権も登録されている。

<摘発模倣品は2013年に940万点>
税関は、登録簿にある情報や、申告書類、リスク・マネジメント・システム(2014年6月5日記事参照)などを利用して商品の検査を行う。疑義のある商品については、最長10営業日の間、通関を差し止めでき、権利者に商品の写真を送るなどして通知する。権利者の申請に基づき、差し止めをさらに10営業日延長することも可能だ。

登録簿に登録されていなくても、税関で権利者に関する情報があれば、税関職員の職権で差し止めが可能だ。差し止めは7営業日で、権利者の申し立てにより、さらに10営業日延長が可能だ。職権による差し止めは、ロシアとカザフスタンで制度化されているが、ベラルーシにはない。

税関で摘発された模倣品の数は、2013年だけで940万点に上る。2014年第1四半期は280万点だった。税関が摘発した案件数でみると、行政違反件数は2013年で1,188件だった。自動車部品が約4分の1を占める。摘発をかいくぐろうと、商業利用ではなく個人利用目的の商品として不正に輸入申告をするなどの事例もみられる。

<侵害停止要求のレター送付で2〜3割は解決>
続いてゴロジスキー・アンド・パートナーズのウラジミル・ビリューリン・シニアパートナーが、ロシアにおける模倣品および並行輸入品対策について以下のように講演した。

模倣品対策として、a.侵害停止を求める書簡の送付、b.行政訴訟、c.民事訴訟、d.刑事訴訟がある。

この中で最も円満に解決する方法は、権利侵害者に対して侵害停止要求状(C/Dレター)を送ることだ。特に送付先が法人である場合、効力がある。C/Dレターを送ると、20〜30%は侵害行為をやめている。侵害をやめなくても、C/Dレターに応じない事実が、次の対策を取る際に価値を持つ。

警察や税関を通じて行政当局から責任を問うこともできる。権利者が行政当局に対して申し立てを行い、行政当局が侵害者を提訴する。従って権利者に必要な対策費用は少ない。

権利者自らが民事事件として提訴する方法もある。裁判所は通常裁判所と商事裁判所に分かれる。原告または被告の一方が個人の場合、通常裁判所が事案を取り扱う。企業間の係争は、商事裁判所が取り扱う。刑事の場合は被告人が個人となり、商標権侵害の場合の損害の最低基準額は5万ドルとされている。

商事裁判での知的財産関係事件については、別途設置された知的財産裁判所が審理に関わる。知的財産裁判所は、知財権侵害事件の場合、第3審として破棄審を担当する。連邦知的財産局(ロスパテント)の決定に対する異議申し立てや、商標不使用による取り消し審判の場合は、第1審として審理し、同裁判所幹部会が第2審として破棄審を担当する。

通常裁判所と商事裁判所には最高機関として、それぞれ最高裁判所、最高商事裁判所が設置されているが、統合される予定だ(注1、2014年2月21日記事参照)。

<権利侵害者には罰金、商品の廃棄も>
行政訴訟において、被告による知的財産権侵害が認められて処分される場合には、罰金が科され、商品が没収される。ロシア極東地域で、税関が「くまのプーさん」に類似したイメージを持つ商品を輸入しようとした企業を訴えた。2014年5月に裁判所は、商標権者が同社に対して輸入を認めた証拠はないとして、1,000ドルの罰金の支払いと商品の廃棄を命じる判決を出した。

権利者による民事裁判でも、商品の廃棄の要求や損害賠償請求が可能だ。民法第1484条では、商標権者の許可した場合を除き、混同が生じる可能性がある場合には、商標登録の対象となる商品または同類商品にある商標に類似した表示などの使用はできないとされている。また、第1515条では、商標または紛らわしい表示が不法に使用されている商品やラベルは模倣品と見なされると規定されている。

民事訴訟では、第1審の審理期間は4ヵ月程度で、(第4審の)最高商事裁まで進んだとしても、合計約24ヵ月程度だ。他国と比べても期間は短い。裁判所の判決で没収・廃棄を命じられた模倣品は、連邦国家資産管理庁に移管され、同庁が廃棄する。しかし同庁には廃棄に関する報告の義務がないため、全ての状況が明らかになっていない。ただし、要請に応じて報告される場合もある。

民法第4部が改正され、10月から特許権の侵害の場合でも、商品の廃棄の要求や損害賠償請求が可能となる。

並行輸入対策に関する最近の代表的事例として、有名ブランドの時計を並行輸入した事業者に対して、商標権者に30万ドルの賠償金を支払うよう命じた判決がある。上訴されたが2014年6月に最高商事裁はこれを棄却し、判決が確定した。賠償額はこれまでで最高額となった。並行輸入に関する係争では、数年前は裁判所によって異なる判決が出ていたが、最近では権利者に有利な判決が出ている(注2)。

並行輸入の是非については、連邦反独占局が並行輸入の自由化を支持しており、民法第1487条に規定されている商標の独占権に関する国内消尽の原則に関わる文言を削除すべきと主張している(注3)。その代わり、権利者が当該商品の現地生産化に取り組む場合、並行輸入品を禁止または制限できるようにする措置を2020年から施行するという案を出している。

しかし反独占局の提案が実現するとは考えていない。ロシアは関税同盟の協定において、域内での商標権の消尽原則を、関税同盟領域の地域消尽とするという国際的な約束を既にしているためだ。

ロシア、ベラルーシ、カザフスタンで構成される関税同盟でも、知的財産権を統一で管理する税関登録簿に関する政府間協定が締結されている。加盟国のうち1国の税関窓口で登録申請をすれば、3ヵ国の水際で権利保護をできるというものだ。統一登録簿の運用は2015年に始まるといわれている。

(注1)裁判所統合に関する憲法改正法は2014年2月7日に施行されており、統合までの移行期間は施行日から180日間とされ、8月6日から統合裁判所が稼働する見込みだ。
(注2)日本では、真正品の並行輸入は商標権侵害にならないと判例などで認められている。
(注3)民法第1487条によると、権利者または権利者の同意を得てロシアに流通のため輸入された商品に関する商標を(国内で)他者が利用しても商標権の侵害に当たらないとされる。つまり、商標権が国内で消尽することになる。反独占局の主張は、ロシアという領域に関する文言を削除し、外国で流通に置かれると権利が消尽する国際消尽の原則にするというもの。

(浅元薫哉)

(ロシア・ベラルーシ・カザフスタン)

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