上海自由貿易試験区でさらに5つの新通関制度−税関関連の企業信用情報が調査可能に−

(中国)

上海事務所

2014年07月11日

上海税関は中国(上海)自由貿易試験区における手続きを簡素化するために、これまで計14の新通関制度を実施しているが、このほどさらに企業協調人制度や税関関連の企業信用情報の公開制度など5つの新通関制度を公布し、実施した。

<税関と企業にそれぞれ連絡担当者>
上海税関は4月22日以降、上海自由貿易試験区での通関手続きを簡素化するために14の新通関制度を公布・実施してきたが(2014年5月7日記事6月25日記事参照)、6月30日〜7月7日にさらに5つの新通関制度を公布し、実施した。概要は以下のとおり。

(1)企業協調人制度(6月30日公布、7月1日実施)
試験区内の対象企業のために「企業協調人(中国語「協調員」)」と呼ぶ連絡担当者を置き、対象企業も税関関連業務を担当する高級管理者から適任者を選んで税関との「連絡人」として任命し、企業協調人と連絡人は税関・企業間の業務協力を担当する。対象企業は通関関連の疑問について、上海税関ウェブサイトの「上海税関企業協調人サービスフォーム」欄で「企業協調人」に問い合わせれば、「企業協調人」は必ず問題の解決に協力し、申請企業の連絡人に結果を知らせなければならない。企業管理類別(注1)B級以上の試験区内企業はこの制度の適用を申請する資格がある。

(2)認定事業者(AEO)制度の相互承認の推進(6月30日公布、7月1日実施)
企業管理類別AA級企業は各国・地域とのAEO制度の相互承認の中国側の認定企業とされている。上海税関は今回、区内のAA級企業が中国と相互承認した相手国・地域でどのような通関便益を付与されるか、相手国・地域のAEO企業は試験区でどのような通関便益を付与されるかを規定した。上海市政府の発表によると、6月30日時点で試験区内のAA級企業は120社ある。

(3)税関登録制度の改革(6月30日公布、7月1日実施)
企業は通関業務を行うために、税関に通関資格認定を申請し、認可された後で通関専門企業(中国語「報関企業」)または二重身分企業(注2)として税関に登録しなければならないが、今回の制度改革により、上海税関は試験区内の企業について通関資格の認定を廃止し、企業が必要書類をそろえれば、直接税関に通関専門企業または二重身分企業として登録できることになった。また、通関専門企業や二重身分企業は一般的に自社が登録した税関で通関手続きを行うしかなく、他地域の税関で通関手続きを行う場合には別に認定申請・登録をしておかなければならないが、今後は、上海税関に登録した試験区内の企業管理類別AA級・A級の通関専門企業や二重身分企業は全国各地の税関で通関手続きを行えるようになった。

(4)税関関連の企業信用情報の公開制度(6月30日公布、7月1日実施)
上海税関は試験区内企業の税関関連の企業信用情報の公開制度を設け、試験区内企業について、上海税関で通関違法記録などの税関関連信用情報を調べられることになった。

(5)企業の自律的な管理制度(7月7日公布、即日実施)
試験区内企業は貨物通関後、自主的に今回の通関業務の合法性を調査し、違法の疑いや特殊な事情が発覚した場合には、税関に報告する制度。自主的に自社の違法行為を報告した場合は、処罰は軽くなる。合法性調査は自ら行っても、ほかの専門機関に依頼してもよい。

(注1)企業管理類別とは、税関総署が通関実績に基づいて企業の評価をAA、A、B、C、Dという5つにランク付けし、ランクが高いほど通関手続きを簡素化する管理制度。
(注2)二重身分企業とは、通関専門企業としての身分および貨物の出荷・入荷企業としての身分を持つ企業。

(文涛)

(中国)

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